ダイナミクスを考慮した膜蛋白質の構造モデリング法の開発

代表研究者: 水口 賢司 ((独)医薬基盤研究所 バイオインフォマティクスプロジェクト プロジェクトリーダー)

①目的

細胞膜上に埋め込まれた蛋白質(膜蛋白質)は、外界との物質のやり取りや情報伝達、エネルギー合成等の重要な役割を担っており、多くの薬物は膜蛋白質を作用標的としています。近年、実験的手法(X線結晶構造解析)によって、膜蛋白質の立体構造が次々に決定されるようになりました。しかし、膜蛋白質の立体構造解析は依然として困難な実験であり、多くの膜蛋白質について、より詳細な分子機能を解明するための妨げになっています。本研究では、生命情報科学(バイオインフォマティクス)の手法と物理化学に基づく分子シミュレーションの最新技術を融合し、膜蛋白質の立体構造を高精度で予測するモデリング法を開発します。

②研究概要

バイオインフォマティクスの手法による構造予測では、構造を知りたい膜蛋白質(標的)と類似の構造を取ると思われる蛋白質で、既に実験的に立体構造が決定されたものをまずデータベースから検索します。その手法を改良し、立体構造が既知の蛋白質の特にどの部分が標的とよく似ていて生体膜中で固い構造をとっているか、またどの部分が柔らかくて動的構造変化を起こしやすいかの予測ができるようにします。一方、分子シミュレーション技術を改良し、細胞膜中での大きな構造変化を追跡できるようにします。これらの技術を組み合わせて、蛋白質膜透過装置であるSec複合体の構造モデリングを行ない、生化学実験によってモデリングの結果を検証します。

③研究概要図

水口賢司ダイナミクスを考慮した膜蛋白質の構造モデリング法の開発

④成果

現在までに行ったバイオインフォマティクス解析から、蛋白質の構成要素である20種類のアミノ酸それぞれが、膜蛋白質の立体構造中でどのような環境に多くあらわれ、立体構造安定化にどのような寄与をしているかについて、水溶性蛋白質と異なる独自の仕組みが明らかになりました。また、ニューラルネットワークと呼ばれる方法論を用いて、膜蛋白質のどの部分が脂質側に露出しているか、あるいは蛋白質内部に埋もれているかを予測する方法の開発に着手しました。さらに、様々な脂質分子によって構成される脂質二重膜、および、ロドプシン、SecA、SecYの具体的なシステムについて、分子動力学シミュレーションを開始しました。