ヒト胚の形態発生に関する三次元データベース

代表研究者: 塩田 浩平 (京都大学大学院医学研究科 教授)

①目的

本研究開発では、ヒトの発生と先天異常のゲノムワイドな解析を行うためのインフラとして、ヒトの形態形成過程の詳細な三次元画像データベースを構築し、将来、ヒト胚組織における各種遺伝子の発現データをマッピングするための形態学的なリソースとする。器官形成過程の胚における遺伝子群の時間的・空間的発現パターンを解析することによって、個別の分子生物学的解析やコンピュータ解析のみでは得られない新たな遺伝子機能や遺伝子群の相互作用の発見につながると期待される。  本研究は、米国の "Visible Human Project" に匹敵するもので、世界に類例がないヒト胚標本コレクションを用いることから、わが国独自の知的財産を形成するという意義も大きい。構築された形態データベースはWeb上で公開し、国際的な利用に供する予定である。

②研究概要

1)各発生段階のヒト胚のMR断層画像および連続組織標本のデータベース構築
 京都大学のヒト胚標本を材料としてMR顕微鏡で順次断層撮像を行い、器官形成期から出生までの各発生段階の胚・胎児のMR画像を蓄積してデータベース化する。各妊娠週ごとに数百例の胎児標本をデータベースに入力し、発生段階ごとの標準モデルを作成するとともに、個体差についても解析する。
2)胎児の画像データを用いた形態発生の三次元モデル化
 上記で得られたMR断層画像、連続切片像から、各発生段階の胎児の外形および主要臓器の三次元立体画像を構築する。また、膨大な三次元、四次元データを高速かつ的確に検索し解析するための効率的な格納・検索・抽出・表示方法を開発をする。

③研究概要図

塩田浩平ヒト胚の形態発生に関する三次元データベース

④成果

(1)本研究は2005年にスタートし、現在までに1200例の標本のMR撮像が完了した。これまでに、80~120μmの解像度を達成している。
(2)上記MR画像のほか、各症例のマクロ写真、書誌データ(妊娠歴、標本観察データなど)、および約500例のヒト胚連続組織切片のデジタル画像データを加えてデータベース化する作業を行っている。2008年度中に代表的なデータを公開する予定である。
(3)MR画像をもとに、コンピュータグラフィクスの技術を用い、各発生段階のすぐれた三次元モデル画像を作成したこれは、既に医学教育、臨床における患者教育等に活用されている。

【関連リンク】

先天異常標本解析センター[外部リンク]
Webpage of 3D MR Microscopic Images of Kyoto Collection of Human Embryos[外部リンク]