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コラム—低炭素社会の実現と学校教育

低炭素教育で求める子どもの学びと授業の規準

低炭素社会戦略センター (LCS) 特任研究員  寺木 秀一


2011年8月11日 教育新聞掲載

低炭素教育でめざす子どもの姿とは、我慢をしたり豊かさを損なうことなく、生活水準を向上させながら、夢と希望をもって明るく楽しく生きる姿です。

子ども達は今、各教科や総合的な学習の時間を通じて、以下に挙げる課題を学んでいます。

  • 化石燃料に過度に依存することなく、再生可能エネルギーの有効活用、省エネルギー生活への転換、分散型エネルギーの利用、地方の自立をうながす社会の実現
  • 日本の先進的な科学技術による、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの活用や発電の高効率化、送電ロスの削減、スマートグリッドの推進、蓄電池の改良など省エネと新しいエネルギーの概念と活用
  • 家屋の断熱性を高めるグリーンカーテン、窓が多く庇の長い日本型の家屋、打ち水、よしずなどの日本の伝統的な低炭素社会の知恵に学ぶ節電・節水などによる電力消費量の削減による電力危機の回避

低炭素教育を進める授業規準例

低炭素教育をすすめるために、各教科で行うべき具体的な指導目標とねらいについて、以下の通り提案します。

小学校社会の「電気の確保」(3、4学年)の単元では、電力需要の増加に対して、主に火力、原子力、水力の発電所から送り出される電気で安定供給が図られていることを学びます。また、火力発電所や原子力発電所では環境に配慮しており、安全性の確保にも努めていることを扱い、低炭素社会での電気エネルギー施策について学ぶようにします。

小学校理科の「電気の利用」(6学年)の単元では、エネルギー資源の有効利用という観点から電気の効率的な利用に関心を向けるようにします。例えば、手回し発電機や蓄電器を用いて発光ダイオードと豆電球の点灯時間を比較し、発光ダイオードが豆電球より長く点灯することから、今日の電力危機における家庭の照明機器選択のヒントを得ます。また、「人と自然」(6学年)では、人間を含めた生物が生きるためには水や空気、食べ物、太陽のエネルギーなどが必要なことを理解させ、自然を愛する心情を育て、自然環境と人間との共生の手立てを考えながら、低炭素社会の実現を目指す自然観をもつようにします。

小学校家庭の「住まいの工夫」(5、6学年)の単元では、年間を通して快適な生活を送るための暑さ・寒さへの対処法や、それらと通風・換気とのかかわり、適切な採光の必要性などについて考えます。こうして、自然を生かして住むことの大切さを理解し、より快適に住むために工夫できるようにします。そして、生活スタイルを変えて、低炭素社会の実現を図ることを学ぶようにします。

中学校社会では、環境汚染や自然破壊が地域や国家の問題であるとともに、地球規模の問題となっていること。資源・エネルギーが不足してきていることから、一層の省資源・エネルギー及びリサイクルなどの必要とされていること。さらに、新しい資源・エネルギーの開発やその利用が必要であることを学ぶようにします。

中学校理科では、科学技術の発展が人間生活を豊かで便利にしてきたこと。エネルギー問題や環境問題などを解決するためにも科学技術が重要であること。科学技術の発展と人間生活とが密接な関わりをもっていることの認識を深めさせます。

中学校技術・家庭では、技術が環境問題の原因と解決に深く関わっていること。技術の進展が資源やエネルギーの有効利用、自然環境の保全に貢献していることについて、具体的な活動を通じて学ぶようにします。

以上のように、各学年で一つの単元を指導できれば、低炭素教育として、必要かつ十分な内容といえるでしょう。

参考・引用:小・中学校学習指導要領解説編 各教科 (2008)文部科学省
この記事は教育新聞に掲載されました。