低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2020-PP-14

電気自動車を活用した負荷周波数制御の通信遅延補償のための制御方式の提案

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  • SDGs9
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概要

 再生可能電源の出力は気象条件によって変動するため、系統への大量連系により系統電力における周波数の安定性に深刻な懸念が生じている。電気自動車(以下、EVと記述する)は、その蓄電池の応答性の速さから、周波数制御、とりわけ負荷周波数制御(以下、LFCと記述する)の領域において有力な解決策の一つと考えられている。

 しかしながら、LFC調整市場に参加するEVアグリゲータ(以下、EVAと記述する)は、公共の通信インフラ利用に起因する通信遅延の影響を受ける恐れがある。本提案書では、EVの負荷調整力の向上を目的として、EVAが通信遅延を補償するための方策の設計を行う。具体的には、定周波数制御(FFC)方式が適用されている電力系統において、過去のデータ履歴から、系統におけるLFC制御指令と周波数偏差の関係を推計した上で、リアルタイムの周波数偏差を用いてEVを直接制御する制御方式を提案する。本方式は低コストで実現可能であり、また、本方式によってEVAの周波数制御市場における競争力を高めることが期待できる。本方式における性能の向上余地についてはSimulink のAGC30モデルの動的シミュレーションを用いて検討し、パフォーマンススコアに基づいて評価を行った。シミュレーションによると、提案の制御方式を導入することでEVAのパフォーマンススコアは有意に向上し、同時に周波数変動をも低減できることが明らかとなった。本分析の結果より、EVAによる負荷周波数制御は有望であり、日本において周波数調整市場が開設される2024年以降に採用される可能性があることが示唆された。
 なお、本提案書は、著者らの英文論文[1]の内容を元にして、低炭素社会の実現につながる政策への含意、さらには政策提案につなげたものである。

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