科学技術振興機構
さきがけ
RNAと生体機能
戦略的創造研究推進事業 個人型研究 さきがけ
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研究総括から
写真 「RNAと生体機能」研究総括:
 野本 明男
((財)微生物化学研究会 微生物化学研究所
 所長)

研究領域の概要

 本研究領域は、「医療応用等に資するRNA分子活用技術(RNAテクノロジー)の確立」を戦略目標とするもので、RNA分子の多様な機能を明らかにしRNAの生命体維持に関する基本原理についての理解を深めると同時に、RNA分子の医療応用等に関して、個人の独創的な発想に基づく革新的な技術シーズの創出を目指します。
 具体的には、生命現象を支え制御するRNAの新たな機能を探索する研究、および既知のRNA機能の活用を目指した研究が対象です。後者の研究には、機能性RNAのデザインや機能向上を目指す技術、機能性RNAにより細胞機能を制御する技術、1分子レベルで特異的RNAを検出する技術、RNAを標的組織・細胞に送達するドラッグ・デリバリー・システム技術などに関するものが含まれ、先端医療技術等への機能性RNA分子の新たな活用技術の開発へとつながることが期待される研究が対象となります。

選考・研究領域運営にあたっての方針

 RNAをゲノムとして持つウイルスの存在が古くから知られていたにもかかわらず、RNAは、遺伝情報を持つDNAから蛋白質が発現する際に働く仲介分子であるとの考え方が、長年主流となっていました。しかしながら、近年になり、リボザイム、miRNA、RNAの分子擬態、その他多くの機能性noncoding(nc)RNAの発見により、RNAは蛋白質と同等の機能を持つ分子でもあると認識されるようになってきました。今やRNAは、遺伝情報発現や代謝の制御に働く必須の分子であると同時に、 発生、分化、疾患発症などの高次複合形質の動態にも深く関与していることが明らかです。
 ポストゲノム時代における生命科学研究において、RNA研究はプロテオームと並ぶ最重要課題として位置付けられています。まだまだ重要な未知のRNA機能が数多く存在すると思われ、その探索研究は生命現象を理解するために非常に重要です。またRNA研究の原点はRNAゲノムにあると考えられますので、この方面の研究も大いに活性化するべきと考えています。
 一方、既知の機能性RNAは、生命体における本来の機能の理解が未だ不十分ながら、既知機能のみを抽出して利用する方向に急速に進展し始め、非常に有望な医療応用等に資する技術となる可能性を示しています。本研究領域では、生命現象におけるRNAの新たな機能を探索する研究を対象とすると共に、明らかとなっている機能性RNAを活用し、医療応用等を含めたRNAテクノロジーに関する研究を対象とします。
 我が国のRNA研究の歴史は長く、多数のRNA分子発見の実績があるのみでなく、優れた核酸化学の実力を持つ人材が豊富です。未知の機能を持つ複数のRNAが発見されることが見込まれる現在、本研究領域から、生命現象解明に重要な新しい機能性RNAの発見がなされ、さらにRNA分子の機能を先端医療技術等へ活用する革新的な技術創成の可能性を持つ数多くの研究成果が出ることを期待しています。

平成20年度の採択を終えて

 ポストゲノム時代における生命科学研究において、RNA研究はプロテオームと並ぶ最重要課題として位置付けられています。まだまだ重要な未知のRNA機能が数多く存在すると思われ、その探索研究は生命現象を理解するために非常に重要です。またRNA研究の原点はRNAゲノムにあると考えられますので、この方面の研究も大いに活性化するべきと考えています。一方、既知の機能性RNAは、生命体における本来の機能の理解が未だ不十分ながら、既知機能のみを抽出して利用する方向に急速に進展し始め、非常に有望な医療応用などに資する技術となる可能性を示しています。本研究領域では、生命活動におけるRNAの新たな機能を探索する研究、および機能が明らかとなっているRNAを活用し医療応用などを含めたRNAテクノロジーに関する研究を対象としました。
 RNAを取り巻く研究に限定した本研究領域ですが、計84件と多数の応募があり、RNA研究に対する関心の高さが示されました。これらの研究提案を11名の領域アドバイザーとともに書類選考を行い、とくに内容の優れた研究提案20件を面接対象として選考しました。面接選考においては、申請者の研究の主体性、研究のねらい、研究計画の妥当性、将来性などを中心に審査しました。研究構想が本研究領域の趣旨に合っていること、高い独創性と新規性に富むことを重視したのは言うまでもありません。選考の結果、本年度の採択課題数は、9件となりました。長い歴史を持つRNA研究の新展開には、これまでの伝統的研究を大切に生かしつつ、新しい視点を大胆に取り込むことが必要です。我国発の新たな研究領域の開拓を目指す基礎研究および独創的な発想に基づく技術展開という視点からみて、面接選考の対象とならなかった研究提案の中にも、優れたものが多数ありました。
 本領域の募集は今年度で終了しますが、急速に展開しているRNA研究領域において将来を担う研究者の方々が、新たなRNA研究の流れを創製し、世界的な競争に参加してくれることを願っています。

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