さきがけ研究21の目的は、将来の人類社会が必要とするであろう技術を育む時代にさきがけた科学を芽生えさせるために、研究者個人による独創的で自由な基礎研究を柔軟なシステムにより推進することです。
わが国における基礎研究の充実や国際対応が求められていることから、新技術事業団(現科学技術振興事業団)において、昭和56年以降新しい科学と技術の流れを作る創造科学技術推進事業、研究の国際交流を発展させる国際共同研究事業の推進など、基礎的研究の推進に努めてまいりました。さらに新しい分野を拓く創造的な基礎研究の役割に注目して、個人の発想を尊重して自由に基礎研究を行うために、独創的個人研究育成事業(さきがけ研究21)を平成3年度より発足させました。

さきがけ研究21では、研究者の発想と研究資質が重視され、その研究意欲、興味おもむきを尊重した個人型研究が対象となります。システムとしては、研究領域を定めて、その中で研究課題を広く募集、選定し、支援する方式をとっています。
 生物は、内的あるいは外的要因を認識して、フレキシブルに形づくりを営み、また部分的欠損を自ら修復しようとします。このように生物に固有の能力に注目し、遺伝子、分子、細胞等生物の構成要素の機能に基礎を求め、生物の形づくりと形の修復を制御している細胞内や細胞間の認識、情報伝達、各種調節因子の機能的カスケードなどについて研究するものです。
 単に個体発生や再生のみならず、細胞そのものの構造形成をはじめ、生体防御系・内分泌系、神経系などによる生体の恒常性維持機構、さらには個体集団の形成等に関する研究を含みます。
応募される方は下記の各項を充分御留意ください
1)研究者
1 個人:次世代の科学・技術の発展を担う可能性がある研究提案、結果として人材の発掘と育成という本事業の趣旨に基づき、より若い研究者を優先する。自らがさきがけの研究に専念することの困難な教授またはそれに準ずる研究者で既にグループリーダーの立場にある者は原則的に除く。
2 独立性(主体性):あくまで個人研究であること。同格の他の研究者との共同研究、研究グループの一員としての分担課題研究またはそれに類する課題は除く。ただし、自らが主体的に他の研究者と交流連携・協力することは評価されて良い。
3 研究費の重複:本事業団の諸事業および各省庁のプロジェクト研究等の主要メンバーは除外する。
4 積極性(活力):少なくとも3年間高い活力を維持し、積極的かつ意欲的に研究を推進する恒常性の持ち主であること。
2)研究課題および内容
1 「認識と形成」領域が標榜している方針に沿った、感覚に富む課題であり、かつ内容を持つ研究を優先する。あくまで、生物の形成(形づくり)に力点を置き、単にシグナル伝達、細胞相互認識、因子・遺伝子等々を扱う研究は求めない。細胞レベル、個体レベル、個体群レベルのいずれのレベルでも”形成と形の修復”といった問題が強く意識されている研究を優先する。
2 時代を先駆ける独創性豊かな基礎研究であること。従来の研究の延長線上に有り重要な課題であっても、国際的に見て既に盛んに手掛けられている新規性に欠けるものは上位にランク付けないこととする。
3 研究計画と方法論に高く評価すべき妥当性と新規性(新奇性)があること。
4 単に製造法の開発・改善、病因の解明と治療法の開発など短期的な目標研究は除外する。
3)研究計画等
1 研究の進め方が理論的であり、個人研究として期間内に充分こなし得る適切な研究であること。
2 計画を具体的に実施していくための、必要不可欠な研究技術が伴っていること。
3 計画の実施を基礎付ける準備が整っており、研究環境に無理がないこと。