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光の創成操作と展開
研究者紹介

phase12006.10〜2010.3 2007.10〜2011.3 
芦田 昌明 石川 顕一 井戸 哲也 大村 英樹 尾松 孝茂
桂川 眞幸 久保 敦  熊倉 光孝 長谷 宗明 菱川 明栄
 
     
 個人プロフィール

【 学歴 】

1997年筑波大学自然学類卒業。
2003年筑波大学大学院博士課程物理学研究科修了。博士 ( 理学 ) 。

【 研究歴 】

1999−2003年物質・材料研究機構外来研究員。
2003年ピッツバーグ大学博士研究員(物理・天文学科)、山田科学振興財団長期派遣研究員。
2005年より科学技術振興機構さきがけ研究員、
2008年より、筑波大学大学院数理物質科学研究科助教、現在に至る。

−主たる研究内容−
固体表面・金属ナノ構造における電子励起・化学反応ダイナミクス、時間分解二光子光電子分光
−趣味−
趣味はテニス、読書、舞台芸術鑑賞。
 研究内容紹介

 表面プラズモンポラリトン(SPP)の励起が引き起こす特異な光学現象は、Wood異常回折の発見から今や100年余が経過したように長い歴史を有する研究主題ですが、1998年にEbbesenらにより報告された微小孔配列金属膜の異常光透過を嚆矢として、近年急速に研究の盛りあがりを見せています。その背景には、光の回折限界(~1mm)を下回る微小サイズの光学素子実現への期待があります。金属/誘電体界面に局在するSPPの性質を利用することで、光学素子の小型化が可能です。光ファイバー等で伝達された信号はまずこの様な素子の入口でSPPに変換され、次に高集積化されたSPP回路内で処理され、再び光に変換されて取り出されます。また、SPP回路は金属を用いるため伝導性があり、従来のエレクトロニクスの機能を併せ持つハイブリッド型の素子を製作し得ます。併せて、最近広まってきた電子ビームリソグラフィー(EBリソ)や収束イオンビーム(FIB)など、ナノスケール構造物製作技術が、SPP回路を設計・製作する上で強力なツールとなっています。

 現在、SPPに対する導波路、レンズ、ミラー、ビームスプリッター、干渉計、共鳴器などがぞくぞくと報告されています。ところで、この様な素子中を伝播するSPPを詳細に観察する為には、サブ波長(<100nm)の空間分解能、フェムト秒の時間分解能が要求されます。前者は近接場光学顕微鏡により、後者はフェムト秒レーザーを用いた超高速時間分解分光により独立に達成されていますが、両者を同時に満たす手法は開発されていませんでした。

 本研究では、干渉型時間分解二光子光電子分光と光電子顕微鏡を組み合わせたユニークな測定法(ITR-PEEM)を開発し、金属ナノ構造中のSPPダイナミクスの映像化を行っています(参考文献1-3)。映像のフレーム間隔0.33fs、空間分解能50nmを達成しています。SPPの励起光はTi:Al2O3オシレーターの第2高調波であり、中心波長400nm、パルス幅10fsを有し、マッハ-ツェンダー干渉計を通す事で遅延時間()が精密に制御(<50as)されたパルス対を生成します。SPP励起によりナノ金属構造に誘起される近接場強度の、4乗に比例する光電子電流が真空中に放出され、その空間分布を光電子顕微鏡で観察します。SPPの伝播、干渉、減衰の結果、フェムト秒時間スケールで刻一刻と変化する近接場の時間発展をポンプ-プローブ法で追跡します。

 いままでに、銀グレーティング上の局在型[1]および伝播型SPP[3]、さらに銀蒸着膜上の伝播型SPP[2]の時間分解映像を得ています。図.1は銀蒸着膜の溝状欠陥から伝播するSPP映像の代表的なフレームを抜き出したものです(: 0 -46.7 fs)。レーザー光は画面左方向から入射し、溝の右側のエッジでSPPに結合します。SPPの伝播が、の増大とともに前進する波状パターンとして観察されています。シミュレーションとの比較から、SPPの伝播距離は3、寿命12fs、群速度0.61c (c: 真空中の光速)と求められました。

 この手法は、複雑な構造のSPP回路を伝播する波束の観察に適用できます。現在、FIBやEBリソグラフィーにより製作した素子中のプラズモンダイナミクスの観察へと研究を展開しています。

参考文献

  • “Femtosecond Imaging of Surface Plasmon Dynamics in a Nanostructured Silver Film” A. Kubo, K. Onda, H. Petek, Z. Sun, Y. S. Jung, H. K. Kim, Nano Lett. 5, 1123 (2005)
  • “Femtosecond microscopy of surface plasmon polariton wave packet evolution at the silver/vacuum interface” A. Kubo, N. Pontius, and H. Petek, Nano Lett. 7, 470 (2007)
  • “Femtosecond microscopy of localized and propagating surface plasmons in silver gratings” A. Kubo, Y. S. Jung, H. K. Kim and H. Petek, J. Phys. B 40, S259 (2007)

参考文献

1.  “Femtosecond Imaging of Surface Plasmon Dynamics in a Nanostructured Silver Film” A. Kubo, K. Onda, H. Petek, Z. Sun, Y. S. Jung, H. K. Kim, Nano Lett. 5, 1123 (2005)
2.  “Femtosecond microscopy of surface plasmon polariton wave packet evolution at the silver/vacuum interface” A. Kubo, N. Pontius, and H. Petek, Nano Lett. 7, 470 (2007)
3.  “Femtosecond microscopy of localized and propagating surface plasmons in silver gratings” A. Kubo, Y. S. Jung, H. K. Kim and H. Petek, J. Phys. B 40, S259 (2007)


図 .1干渉型時間分解光電子顕微鏡 (ITR-PEEM) による、銀蒸着膜上の伝播型表面プラズモンの観察。
a-d : ITR-PEEM 映像の代表的なフレーム。 の範囲は 0 - 46.7 fs 。フレーム間隔は 9.3 fs 。 a の inset に、 Hg ランプを光源に用いて得られた表面形状像を示す。
g : a-f の断面像。
h : g のシミュレーション。溝のエッジ部から SPP が伝播する結果、 の増加と共に、振動パターンの波面が前進している( : 0 - 37.4 fs )。 = 46.7 fs では SPP の位相緩和のため、振動パターンに減衰がみられる。

 

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