戦略的創造研究推進事業「生体分子の形と機能」研究領域(研究総括:郷 信広)における研究テーマの一環として、根本知己研究者(平成13年度新規採択)等は、非線形光学過程の1種である2光子励起過程を用いた断層イメージングの技術を生物顕微鏡に応用、発展させることで、顆粒が開口放出するとその顆粒膜のみが限局的にFアクチンに被覆されること、そしてこの過程は低分子量GTP加水分解酵素Rhoに依存的であることを示すことに成功し、その成果が国際学術誌Journal of Biological Chemistryに掲載されました。
この結果、
- 細胞膜直下のFアクチンのレイヤー構造と開口放出の関係という細胞生物学における古典的課題に明確な回答を与えると共に、
- 新たに発見したアクチンの被覆こそが、突発性に激烈な腹痛が生じ急激に死に至る(致命率が21%にも達する)重篤な炎症である急性膵炎、その初期において発生する腺細胞の空胞化現象を抑制していることを初めて示し、分子的なレベルで病因解明への糸口を与えることができました。
この本領域で研究されている生細胞の微小な構造をリアルタイム可視化する新規的な手法は、分泌、走性、増殖等を司る生体分子複合体の動作原理を、実際の細胞で解明していくのに有望であるのみならず、臨床医学的な応用も期待される技術です。
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