戦略的創造研究推進事業「生体分子の形と機能」研究領域(研究総括:郷 信広)における研究テーマの一環として、木下 専研究者(平成15年度採択)らは、細胞骨格蛋白質の一つであるセプチンを欠損するマウスを作成し、これが精子無力症による雄性不妊となることを発見しました。また男性不妊症患者の精液をスクリーニングしたところ、精子無力症患者の約2割でセプチンを主成分とする細胞膜直下のリング構造(セプチンリング)が欠失しており、セプチン蛋白質のユニークな自己集合性の医学的意義の1つが初めて示されました。将来はセプチンリングを精子無力症の臨床検査マーカーの一つとして利用することが期待されます。この成果は米国科学雑誌「ディベロップメンタル・セル」(3月1日付)電子版に掲載されました。 上記研究に先立って、同研究者らは3種類のセプチンサブユニットが等モル比で数個〜数十個ずつ重合した複合体の再構成に成功していました。この再構成セプチン複合体は不規則な形状のフィラメントで、独特の自己集合性を持ち、安定かつ曲率一定の環状高次構造体を試験管内で形成します (木下ら、Developmental Cell 2002)。しかし、その生物学的意義は不明でした。 今回の成果で、精子輪状小体の形状と外径がこの再構成セプチンリングと類似していること、輪状小体の構成成分がセプチン以外に知られていないことなどからも、輪状小体がセプチンリングであることと、その破綻が高等動物の配偶子に決定的なダメージを与えることが判明しました。同研究者らは脳・神経系にも種々の形状のセプチン構造体を見い出していますが、現在その意義を探索するとともに、セプチン蛋白質群のユニークな自己集合性の構造的基盤の解析を行っています。 |
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