・水循環研究領域はすでに終了しています。
・このページは研究課題および研究活動をまとめたアーカイブページです。
平成14年度採択 Q&A
Q 北方林地帯における水循環特性や植物生態生理に関する研究は、世界の水循環系においてどのような位置づけになるのですか、またどのような意義を持っているのですか。
Q 高緯度森林帯での水・エネルギー・炭素循環の研究の狙いはどこにあるのですか。
Q ヤクーツクやカムチャッカで観測を進めていますが、サイト選定の理由を聞かせてください。
Q 衛星を用いた高精度高分解能全球降水マップ作成を目的として研究が進展していますが、マップ作成の狙いを分かりやすく説明して下さい。
衛星による降水分布図の作成はWCRP(World Climate Research Program: 世界気候研究計画)の中のGPCP (Global Precipitation Climatology Project:全球降水気候計画)に代表されるように、その重要性から既に行われています。GPCPでは衛星搭載可視・赤外放射計、マイクロ波放射計ならびに地上雨量計のデータが使われていますが、静止衛星搭載の可視・赤外放射計データが中心となっています。しかし、静止衛星搭載の可視・赤外放射計は雲の観測頻度は高いものの、降水そのものは直接観測できず、背の高い雲の下では降水が多いという統計的事実を使って降雨量を推定するに留まっています。この雲と降水との対応関係の不完全性と雲は風に流される事実のため、短時間での高い空間分解能での降雨推定は困難です。マイクロ波放射計や降雨レーダのマイクロ波センサは、降水粒子に感度があるためにより直接的な降雨分布の観測を行うことができます。このため、将来の高精度・高分解能の降水分布マップを得るためにはマイクロ波センサを中心に据えた降水分布マップの作成が求められます。
Q 熱帯降雨観測衛星TRMMに搭載されたマイクロ波放射計から、どのようなデータが得られるのですか、またそのデータはどのように天気予報に生かされるのでしょうか。
Q 静止衛星に搭載した可視・赤外放射計からのデータは、降水システムにおける雲の発達期、成熟期、消滅期に関する情報を得ようとしていますが、どのようなメカニズムでその情報を得ようとしているのですか。
Q 水循環科学の構築を狙いとして、「都市生態圏-大気圏-水圏における水・エネルギー交換過程の把握」の研究を進展させていますが、今後の取り組みを教えてください。
今後は、いよいよ100m x 50mの広大な敷地に1:5の大型建物模型が導入され、より詳細で先例のない実験データが取得されます。
Q 首都圏において、水・エネルギーフラックスの実測をする狙いはどこにあるのですか。
Q 日本工業大学(埼玉県南埼玉郡宮代町)の敷地内に、コンクリートでの模擬都市を構築して、各種のデータ取得を予定していますが、具体的にどのような模擬都市構築を計画しているのですか。
Q 「国際河川メコン川の水利用・管理システムの構築」を研究課題にしている狙いはどこにあるのですか。
メコン川には次の特徴があります。
・ アジア・モンスーン地域の国際河川であり、気候の変化は、上流から下流にかけて非常に大きくなっています。これは、気候に合った水利用と異なった気候にいる利用者間の調整をどのようにするのかといった問題を検討するのに適しています。
・メコン川は、カンボジアとラオスで内乱が続き、1980年代には、開発から取り残された地域でした。国際河川の中では、現在、もっとも古い形で環境が保全されている地域です。このことは、環境と開発の検討をするために適している地域ということです。また、今後の政策方向によっては、環境と開発が大きく変化するため、プロジェクトで考えているような、政策提言型の研究をするには、成果が実地に反映されやすい点で適しています。
・メコン川は、トンレサップ湖を有し、現在でも毎年、洪水氾濫が生じている数少ない河川です。洪水氾濫は、この地域では豊かな漁業生産をもたらし、住民の貴重なタンパク源となっています。環境と保全を考える上では、氾濫の制御と利用の検討はもっとも適した研究課題です。
以上のように、河川とその自然とともに流域に生きるためには、開発と環境のバランスをとる必要があり、その研究をするにはもっとも適した流域といえます。しかし、一方では、長い内乱の間は、水文・気象のデータが計測されず、データの不備が多い問題点もあります。こうした問題点を解決するために、現地機関と協力して、正確な水文・気象計測を計画したり、短期的な集中調査を行っています。
メコン川委員会は、主にメコン川の本川に関わる水利用の調整を行い、大きな支川を除けば、支川の管理や利用は、各国に任せられています。一方、CRESTのプロジェクトでは、下流4カ国のメコン川全体を扱うため、支川も含めた流域が対象になります。このように、研究プロジェクトとメコン川委員会の検討対象は、重複しているところも多くありますが、全てではありません。
研究チームは、メコン川委員会と、プロジェクトの進行上の必要性やメコン川委員会の要望などを踏まえ、柔軟に連絡、協力体制をとることにしています。このため、既に、研究代表者の属する農業工学研究所は、メコン川委員会と水循環に関わる研究について包括的な共同研究を進める合意を得ています。また、CRESTの予算で、メコン川委員会の研究者を日本に招聘して研究推進上の協力関係を促進してきました。さらに、ベトナムについては、南部水資源研究所と共同研究を進めていますが、この共同関係の樹立に当たっても、ベトナムのメコン川委員会の国内委員会から協力を得ています。今後も、メコン川委員会との共同調査やワークショップの共催などを進めていく予定にしています。
Q メコン川の流域にあるタイ・ベトナム・ラオス・カンボジア等の国々は、メコン川の水利用システムとどのように関っているのですか。概略をご教示ください。
上流のタイ、カンボジア、ラオスについていいますと、水田の水利用で最大のものは、6月から10月頃の雨期に作付ける水稲に対する補給灌漑です。この時期は、降雨が多いのですが、その中に中休み的に雨が降らない時期が発生し、水不足が発生します。その時期には、灌漑が必要になります。第2は、乾期の灌漑です。この時期は雨が少ないので、灌漑をしなければ米を作ることはできません。したがって、灌漑の効果は非常に大きいのですが、雨が少ないために、乾期にも水が流れている大河川から取水できる地域を除けば、灌漑のための水を雨期からとっておく必要があるため、実際に灌漑できる面積は雨期の3分の1前後です。これ以外に、面積は少ないですが、洪水時期に氾濫原において、水位の上昇に合わせて稲を育てる浮稲と、洪水が引いた後に、洪水で供給された水を利用して稲を作付ける減水灌漑があります。
下流のベトナムでは、水路整備が進んでいて、水田は、河川から、水路に取水された水をほぼ1年中使うことができます。このためベトナムでは、1年に3回米を作る3期作や2回作る二期作が広く行われています。ベトナムは、最下流にあるため、河川からの取水ができなくなることはありませんが、河川の流量が減少した状態で、多量の取水を行う海から遡上した塩水が取水に混ざってしまうという問題点を抱えています。
以上を図1にまとめてみました。
米以外に大切な水利用は漁業です。自然の河川や湖を使った漁業は、大きなトンレサップ湖を持つカンボジアで盛んです。漁業は、取水をする訳ではないのですが、洪水期のトンレサップ湖の水位が高いほど漁獲量が多いというデータもあり、深い関係があります。池やダムでの養殖漁業は、ベトナム、タイが盛んで、ラオスの一部でも行われています。こうした池の中には水田と水の競合関係の場合もあります。
河川の堤防を越えて水が流れる洪水は日本では大きな問題ですが、メコン川流域の下流部では、こうした洪水は毎年起こり、氾濫する期間も四ヶ月に及ぶため、洪水が起こること自体が問題にされることはありません。それでも、2000年のように、今までの洪水の水位を大きく超えた高い洪水水位が発生すると、被害が発生して問題になります。その場合には、一部の水田は洪水の被害により、収穫ができなくなります。
メコン川の水利用は、上流で本川から水を取水すると下流では取水できなくなる関係にあります。そこで、メコン川委員会では、メコン川本川の取水、ダム開発、流域の変更を協議の必要な対象と定めています。上流の水利用が下流の水利用を阻害しないこと、あるいは、下流にもメリットがあることが、水利用を拡大するためには必要な条件になります。更に、必要なレベルの環境保全にも配慮する必要があります。こうした対立は同じ国の中でも発生するのですが、行政的な補完システムが働かない国の間では、対立がより厳しいものになりやすい傾向があります。このような対立点を明らかにし、上流国と下流国がともにメリットを受けるようなWin-Winシステムを提案することが必要になります。
『持続可能なサニテーションシステムの開発と水循環系への導入に関する研究』
船水尚行研究チーム
Q 持続可能なサニテーションシステムの開発は、先進国や発展途上国にどのようなインパクトを与えるのですか。
(1) 現在、世界中に下水道の建設が進まないのは、経済的な制約によると考えています。新しいシステムはパイプを使って汚水を集めることはしません。そのため、下水道を建設するより安価となり、普及が容易です。
(2) し尿に含まれる病原性微生物による直接的な病気、し尿が地下水を汚染することにより生じる水を媒介とした病気を少なくすることができます。
(3) し尿中の窒素やリンを肥料として使うことができ、資源の循環に寄与します。
(4) トイレでは水を用いないので、水資源の節約を図ることができます。
(5) し尿に含まれる栄養塩(湖沼の富栄養化を引き起こす物質)、微量汚染物質を水系から分離することができ、水質汚濁防止に寄与します。
下水道が普及している先進国においても短期的、長期的な二つの観点から新しいシステムの位置づけを考えることができます:
(1) 短期的、すなわち、現在の先進国おける新しいシステムの位置づけを考えて見ましょう。先進国において下水道が整備されていない地域はどのようなところでしょうか?容易に想像されるように人口密度が低い地域の整備が進んでいません。これは、パイプを敷設して汚水を集めるのに非常にお金がかかり効率が悪い地域です。このような地域には汚水を集めないシステムが効果を発揮します。
(2) また、開発途上国、先進国を問わず循環型社会の形成にむけて努力が進められています。新しいサニテーションシステムは、し尿を水系から分離し、栄養素の再利用を行うことから、持続可能な循環型社会の構築に寄与します。
(3) 長期的な観点からは新しいシステムが現用の下水道に代わるものになるかを考えてみる必要があります。先進国では多くの資金を下水道建設に投入してきました。そして、下水道施設は私たちの貴重な資産になっています。この下水道資産、特にパイプを維持管理していくのに多くの資金が必要になることが予想されています。顕著な経済成長が望めない国では、将来下水道施設の維持管理が重荷になるかもしれません。このため、下水道施設が老朽化し維持管理が容易でなくなってしまう前に現在の下水道システムに代わる新しいシステムを準備していく必要があると考えています。
Q バイオトイレの開発・導入を狙いとした研究と水循環に関する研究の関係をお教えください。
水を利用し、そして排出するためにさまざまな施設やシステムが用いられています。その中で人間生活の基盤をなしているのがトイレの関わりであると思います。日本で用いられている水洗便所を考えて見ましょう。水洗便所は(1)水資源が十分にあり、(2)浄水場で水が処理され、(3)水道管で水が配られ、(4)そしてフラッシュした下水が下水処理場まで集められ、(5)そして適切に処理された後、放流されています。水洗便所の後ろには巨大なシステムが機能していることになります。水を用いないトイレの導入は水循環と人間のかかわりを変えることができると考えています。
Q 日本及びに世界におけるバイオトイレの開発・導入等の取り組み状況をお教えください。
日本ではおが屑をマトリックスとしたコンポスト型トイレをはじめ、さまざまな種類の新しいトイレが開発されています。そして、富士山山頂をはじめ山のトイレとして導入が始められています。
Q 都市における涵養型地下水の確保は、どのような狙いのもとに行おうとしているのですか。
Q 涵養型地下水を利用する上での課題はどこにあるのですか。
Q 都市排水には、屋根排水、道路排水、下水処理排水等がありますが、どのような微量汚染物質が含有していると考えられているのですか。
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