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戦略的創造推進事業CREST研究領域終了領域一覧 > 生体防御のメカニズム

研究領域

戦略目標

研究領域名

生体防御のメカニズム

平成9年度採択分 中間評価  事後評価  終了報告書

研究課題
仲介因子を介した遺伝子発現制御の解明
研究代表者(所属)
石井 俊輔(理化学研究所 主任研究員)
概要
本研究では生体防御系における仲介因子の役割の解明を目指して、Ski/Snoなどの造血・免疫系において重要な役割を果たす転写仲介因子について解析した。その結果、1)Ski/Snoはコリプレッサーであり、がん抑制因子としても機能する、2)Ski/Snoは転写因子GLI3やメチル化DNAに結合するリプレッサーMeCP2介した転写抑制に必須である、3)核内構造体構成因子PMLがコリプレッサー複合体を介した転写抑制に必須である、4)複数のコリプレッサーがMybによる転写活性化を阻害する、等を明らかにした。
研究課題
遺伝子の不活化・活性化を通した植物の生体制御
研究代表者(所属)
大橋 祐子((独)農業生物資源研究所 特待研究員)
概要
外来遺伝子を導入してもその発現が抑制される「遺伝子の不活性化」が 有用組換え植物作出のための障害となっている。本課題では、耐病性植物作出のため、植物の耐病性の機構を解析すると共にこの問題に取り組み、植物に特徴的な自己防御機構を明らかにすると共に、導入遺伝子の不活性化が細胞増殖により回復すること、DNAメチル化を伴う遺伝子不活性化はトランスポゾン抑制のための自己防御であること、などの新知見を得た。
研究課題
細胞容積調節の分子メカニズムとその破綻防御
研究代表者(所属)
岡田 泰伸(岡崎国立共同研究機構生理学研究所 教授)
概要
細胞は容積を一定に保つ能力を持っている。本研究では第一に、この細胞容積調節、とくに膨張後の容積調節Regulatory Volume Decrease (RVD) の分子メカニズムの詳細を解明した。第二に、アポトーシスやネクローシス細胞死に容積調節性アニオンチャネルの変調などの細胞容積調節異常が本質的に関与することをはじめて明らかにした。これにより、容積調節性チャネルなどの細胞容積調節装置を虚血性細胞死防御のターゲットとするという新戦略を提起した。
研究課題
糖鎖シグナルを介する生体防御システムの解析
研究代表者(所属)
川嵜 敏祐(京都大学大学院薬学研究科 教授)
概要
MBPが補体非依存的細胞傷害作用によりがん増殖抑制作用を持つこと、がん細胞表面のMBPリガンドがフコースを含む血液型関連糖鎖エピトープ含む新規なポリラクトサミン型糖鎖であることを明らかにした。各種サイトカインがレクチン活性を持ち、サイトカインによるシグナル伝達において、糖鎖リガンドとの結合が調節因子として重要な役割をもつことを明らかにした。また、カブトガニより新たに数種のレクチンを単離した。これらのX線結晶構造解析に成功し「パターン認識」機構を原子レベルで解明した。
研究課題
免疫系のフレームワーク決定及び免疫制御の分子機構
研究代表者(所属)
笹月 健彦(国立国際医療センター研究所 所長)
概要
未熟胸腺細胞に'生'と'死'という相反する運命を課す分子機構は免疫学の最大の疑問であった。特に、正の選択における自己抗原ペプチドの関与に関しては多くの仮説が提唱されてきた。しかしながら、MHCには数千の自己抗原ペプチドが結合しているため、分子レベルでの解析は困難であった。この問題を克服するために、私共は、1種類の抗原ペプチドのみを結合したMHCを発現する遺伝子改変マウスを作製することで、 1)同じMHC/自己抗原ペプチド複合体が胸腺での発現量に応じて正の選択のリガンドにも負の選択のリガンドにもなり得ること、 2)正の選択においても特異的なTCR-ペプチド相互作用が関与し得るが、その際3)TCRと直接相互作用を持つアミノ酸残基の側鎖の大きさや荷電の有無が、選択されるT細胞レパートリーの多様性に影響することを明らかにした。また、CDMファミリーに属し、免疫系特異的に発現する遺伝子DOCK2を単離した。ノックアウトマウスを作製することでこの分子が、リンパ球遊走に不可欠であることを明らかにした。
研究課題
異物排除システムの分子基盤
研究代表者(所属)
杉山 雄一(東京大学大学院薬学系研究科 教授)
概要
トランスポーターによる異物排出は、低分子異物に対する生体防御機構の一つとみなすことができる。本研究では、一次性および二次性能動輸送担体による異物解毒の分子機構について、薬物体内動態および病態との関連、蛋白構造と機能との関連という観点から検討を加えた。その結果、多くの新規トランスポーターの同定・機能解析、薬物体内動態・抗癌剤耐性における役割を明らかとしたほか、カルニチン欠乏症の疾患遺伝子の同定、Dubin-Johnson症候群発症の分子機構を明らかとすることができた。また、大腸菌の異物排出蛋白ArcBのX線結晶構造解析に成功を修め、構造をもとに異物認識・輸送機構を論じることを可能とした。
研究課題
造血幹細胞の分化と自己複製の制御機構
研究代表者(所属)
中内 啓光(東京大学医科学研究所 教授)
概要
高度に純化された造血幹細胞を用いてin vitroならびにin vivoの両方で造血幹細胞の分化と自己複製の様式をクローナルに解析する方法を確立した。また、造血幹細胞の能力を定量的に解析する方法を開発し、造血幹細胞の自己複製能に限界があることを実験的に証明するとともに、自己複製に関与する分子群を同定した。造血幹細胞の分離に用いた方法を応用して実質臓器である肝臓の幹細胞を分離同定することにも成功した。

平成8年度採択分 中間評価  事後評価  終了報告書

研究課題
サイトカイン機能不全の分子機構と遺伝子治療
研究代表者(所属)
菅村 和夫(東北大学大学院医学研究科 教授)
概要
リンパ球の分化増殖に必須なサイトカイン共通受容体γc鎖の下流のシグナル分子として、STAM1、STAM2を単離し、T細胞特異的STAM1/STAM2ダブル欠損マウスがT細胞分化障害を示すことを見出した。また、T細胞特異的Grb2ファミリー分子、Grf40、を単離し、Grf40がT細胞分化増殖のシグナル伝達に必須であることを証明した。他方、OX40リガンド(OX40L)欠損マウスが、抗原提示細胞の機能不全を示すこと、また、OX40L遺伝子導入マウスが免疫寛容破綻を来し、自己免疫様病変を自然発症することを見出した。
研究課題
超分子システムによる免疫識別の分子機構解明
研究代表者(所属)
田中 啓二((財)東京都臨床医学総合研究所 部長)
概要
プロテアソームは生命科学史上最も巨大で複雑なプロテアーゼ複合体であり、超分子システムを構成している。本研究では多様な生理機能を担うプロテアソームが内在性抗原のプロセシング酵素として作用すること、そしてこの抗原提示による免疫識別がガンマ型インターフェロン等の主要な免疫サイトカインに応答して巧妙に制御されていることを明らかにした。さらに“免疫プロテアソーム”や“ハイブリッドプロテアソーム”を発見して適応的な生体防御機構の仕組み解明すると共にこれらの成果を基盤に適応免疫の起源に関する染色体重複仮説も提案した。
研究課題
自己免疫制御の分子基盤
研究代表者(所属)
谷口 克(千葉大学大学院医学研究院 教授)
概要
新しく同定されたリンパ球NKT細胞に関して次の研究成果を得た。1.独立したリンパ球系列に属するユニークな細胞で、種属間で保存されている。2.生理的機能は、自己免疫発症制御、臓器移植生着、発がん抑制などの免疫制御の他、細菌感染とくに結核結節形成、エンドトキシンショックに必須の細胞である。3.NKT細胞抗原受容体リガンドとして糖脂質α-GalCerを発見。α-GalCer刺激によって生体内NKT細胞を活性化し、がん転移抑制の強力な薬剤となることを証明した。
研究課題
環境発がん物質の低濃度発がんリスクの解明
研究代表者(所属)
福島 昭治(大阪市立大学大学院医学研究科 教授)
概要
遺伝毒性ならびに非遺伝毒性発がん物質の発がん性には実際上、無作用量があることを“weights of evidence”の観点からラットを用いて実証した。しかもphenobarbitalやDDTなどは発がんホルミシス現象を示した。乳腺発がん高感受性ヒト正常型H-rasトランスジェニックラット、前立腺好発PB/SV40 Tagトランスジェニックラット、および肝発がん高感受性コネクション32ドミナントネガティブ変異トランスジェニックラットを確立し、さらにがん関連遺伝子変異の高感度変異定量法を開発した。
研究課題
炎症反応分子機構のIL8、接着因子を中心とした解析
研究代表者(所属)
松島 綱治(東京大学大学院医学系研究科 教授)
概要
ケモカインと細胞接着因子による炎症、免疫反応時のダイナミックな生体内白血球移動の分子制御機序を解析した。その結果、アレルギー反応時のTh2リンパ球浸潤機序、所属リンパ節でのTh1分化機序、急性GVHD発症機序、小腸リンパ組織cryptopach形成機序、自己免疫反応マウスにおける自己抗体産生Bリンパ球集積機序などをケモカインと接着因子の立場から解明した。また、本研究を通して、炎症と免疫反応のケモカインによってリクルートされる樹状細胞によるリンクという新しい概念を提供した。

平成7年度採択分 中間評価  事後評価  終了報告書

研究課題
遺伝子改変に基づく生体防御システムの解明
研究代表者(所属)
審良 静男(大阪大学微生物病研究所 教授)
概要
各種のToll-like receptor (TLR)メンバーのノックアウトマウスを作製し、各メンバーが異なる微生物菌体成分を認識することをあきらかにした。TLR4は、リポ・ポリサッカライドを、TLR2は、ペプチドグリカンやリポプロテインを、さらにTLR9は、病原体DNAを認識する受容体であることが判明した。また、TLRシグナルの下流に存在するアダプターMyD88がIL-1RとTLRを介するシグナル伝達に必須であること、NF-κB活性化キナーゼIKKαが、四肢の形成、皮膚の分化に必須であることを示した。
研究課題
カルシウムシグナル研究の先端的手法による展開
研究代表者(所属)
飯野 正光(東京大学大学院医学系研究科 教授)
概要
カルシウム放出チャネルの分子機構を様々な観点から明らかにするとともに、カルシウムシグナルに関わる新たな分子群を発見した。また、画期的な研究法として、細胞内IP3濃度の実時間測定法と、多光子励起法を用いた分泌機構観測系を確立した。以上の成果により、中枢神経細胞、筋細胞、B細胞、外分泌腺細胞などにおけるカルシウムシグナル機構の分子メカニズムの理解を格段に進め、カルシウムシグナルと生理機能との関連を明らかにした。
研究課題
植物の感染防御機構の生物有機化学的解明
研究代表者(所属)
岩村 俶(京都大学大学院農学研究科 教授)
概要
植物は、進化の過程で二次代謝物質を利用した感染防御機構を発達させてきた。本研究では、植物の感染防御に重要な役割をもっているファイトアレキシンをはじめとする種々の二次代謝物質の構造ならびに機能、生合成を明らかにした。さらに、植物の感染防御機構にとって重要な微生物や昆虫との相互作用についても解析した。
研究課題
免疫系と神経・内分泌系の立体的分子機構の解明
研究代表者(所属)
奥村 康(順天堂大学医学部 教授)
概要
我々は免疫系の細胞に広範に発現しているtumor necrosis factor(TNF)/TNFレセプターファミリー分子に焦点を絞り、FasL, TRAIL,OX40Lなど多くの分子に対するモノクローナル抗体を作製し、invitroおよびin vivoにおける抗体投与の実験から、これらの分子の発現調節のメカニズムや生理的あるいは病理的な役割を明らかにした。さらにTNFレセプターファミリーを介するシグナル伝達分子であるTNF receptor-associated factor (TRAF)5を新たにクローニングし、TRAF5単独およびTRAF2/TRAF5ダブルノックアアウトマウスを作製し、TRAF2およびTRAF5のTNFレセプターファミリー分子を介する種々の細胞の活性化あるいは細胞死における生理的な役割を明らかにした。
研究課題
ウイルス持続感染による免疫均衡の破綻機序とその免疫治療法の開発
研究代表者(所属)
神奈木 真理(東京医科歯科大学医歯学総合研究科 教授)
概要
本課題では、レトロウイルス持続感染によってひきおこされる病態形成機序の解明と免疫治療法の開発を目的とした。主な研究成果として、日本に多いヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-I)感染腫瘍の動物モデルを完成させた。このモデルを用いて、宿主免疫とHTLVI感染細胞の生体内バランスと腫瘍化の関係、腫瘍免疫の標的抗原を明らかにし、これを抗原とするワクチンによる抗腫瘍効果を実証した。これは今後の成人T細胞白血病の免疫学的予防治療法開発の原型を提供するものである。この他、HTLV-I感染経路と宿主免疫の関係、HTLV-I Taxの細胞周期促進機序、宿主免疫によるHIV-1抑制機序、HIV-1の感染嗜好性機序、HIV-1integraseの新しい機能についても新知見が得られた。
研究課題
Fc受容体を介する生体防御システムの解析
研究代表者(所属)
高井 俊行(東北大学加齢医学研究所 教授)
概要
免疫系細胞に発現するFc受容体(FcR)の欠損マウスを開発し、活性化型FcRと抑制性FcRとの巧妙なバランスが崩れることがアレルギー、炎症、自己免疫疾患の引き金になることを解明した。また、この成果を新規リウマチ関節炎モデルマウス、Goodpasture症候群モデルマウスなどの開発につなげ、新規治療法、治療薬の開発に供した。さらに、FcRおよびこれらに関連するアダプター分子などの欠損マウスの解析により、これら免疫系分子群が中枢神経系細胞にも発現し、脳細胞の分化発達、組織構築に関与していることを発見した。
研究課題
普遍的な生体防御機構としてのストレス応答
研究代表者(所属)
永田 和宏(京都大学再生医科学研究所 教授)
概要
「普遍的な生体防御機構としてのストレス応答」というテーマのもとに、具体的に2つのアプローチから研究を展開してきた。第1はストレス応答の機構である。ストレス転写因子HSF3およびHSF4をクローニングし、その性質を明らかにした。第2には、分子シャペロンの機能解析を掲げていたが、コラーゲン特異的分子シャペロンHSP47のノックアウトによって、それがコラーゲン合成および個体発生に必須の遺伝子であることを明らかにした。また、小胞体の品質管理に関わる新規遺伝子EDEMを発見し、さらに品質管理にリボソームRNAの分解による蛋白質合成抑制という新たな機構の存在することを明らかにした。
研究課題
昆虫の生体防御分子機構とその応用
研究代表者(所属)
名取 俊二(理化学研究所 特別招聘研究員)
概要
(1)昆虫(センチニクバエ)の変態過程で、幼虫組織を破壊し除去するために必要な新しいスカベンジャーリセプターが、蛹の時期に体液細胞表面に発現することを見出し、その精製と構造決定、機能解析を行いました。(2)昆虫の抗菌蛋白ザーペシンBの活性中心部分を利用した新しい抗菌ペプチドの作出に成功し、その好中球上のリセプターを同定しま(3)昆虫から得られた生理活性物質5-S-GADには細胞選択性のある癌細胞の増殖抑制活性や、破骨細胞の分化阻止活性があることを示しました。
(*所属機関・役職名は研究終了時点のものです)