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戦略的創造推進事業CREST研究領域 > 太陽光を利用した独創的クリーンエネルギー生成技術の創出

研究領域

戦略目標

「異分野融合による自然光エネルギー変換材料及び利用基盤技術の創出」

研究領域名

太陽光を利用した独創的クリーンエネルギー生成技術の創出
研究領域HP

研究総括

山口 真史(豊田工業大学 大学院工学研究科 主担当教授)

概要

 本研究領域は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに直接変換する太陽光発電技術を対象とし、さらには太陽光エネルギーにより 水素等を生成する化学燃料生成技術、電気エネルギーと化学燃料を同時に生成する技術等も含め、将来の独創的クリーンエネルギー生成に 資する研究開発を行います。
 具体的には、太陽光発電技術として、シリコン系、化合物薄膜型、色素増感型、有機薄膜型、新型超高効率系の太陽電池開発、 太陽光利用による有用物質・エネルギー生成技術として、水素などの有用物質生成、有用物質とエネルギーの同時生成等に関する研究開発を対象とします。
 また、本研究領域は、従来技術の延長線上の単なる高効率化、長寿命化を追うのではなく、材料探索、基礎物性解析等、光吸収、電荷分離、材料劣化等の 基本に立ち返り、場合によっては全く新しい原理により動作する材料、デバイスを目指す等、独創的かつ将来的な波及効果が 大きな研究開発を目指すものです。そのため、対象となる研究分野は、物質科学とデバイス物理が融合した分野であり、この領域での ブレークスルー技術を創出するため、物理学、化学、電子工学等の異分野の研究者の英知を結集し、最先端のナノテクノロジーも駆使しつつ、 異分野融合による研究開発を促進します。

平成23年度採択分

研究課題
集光型ヘテロ構造太陽電池における非輻射再結合損失の評価と制御
研究代表者(所属)
金光 義彦 (京都大学化学研究所 教授)
概要
時空間分解レーザー分光を駆使して、多接合・ヘテロ構造・ナノ構造を有する集光型太陽電池のバルク再結合、界面・表面再結合、オージェ再結合など非輻射再結合損失の評価と制御を行い、光エネルギー変換の高効率化の道筋をつけます。さらに、ナノ構造太陽電池内で競合するマルチエキシトン生成速度、オージェ再結合速度、取り出し効率を評価し、1光子多電子変換過程が有効に利用できるかという長年の課題を実験的に検証します。
研究課題
フォトニック・ナノ構造を活用した新しい光マネジメント技術の開発
研究代表者(所属)
野田 進 (京都大学工学研究科 教授)
概要
本研究は、太陽光発電効率の飛躍的な向上を目指し、フォトニック結晶を核とするフォトニック・ナノ構造の活用により、新しい光マネジメント技術の開発を目指すものです。具体的には、フォトニック結晶のバンド端効果に基づく大面積共振作用を用いて、薄膜シリコン(マイクロクリスタルシリコン・アモルファスシリコン等)の光吸収の減少が顕著となる波長域(600−1000nm)において、効果的な光閉じ込めを可能とする新しい光マネジメント技術の開発を行っていきます。
研究課題
固液界面反応設計による新規高純度シリコン材料創製プロセスの構築
研究代表者(所属)
本間 敬之 (早稲田大学先進理工学部 教授)
概要
高純度Siの製造には長時間にわたる超高温反応を必要とし、生産面・コスト面の大きな課題となっています。本研究は、固相や液相などの界面で起こる電解反応系に着目し、その原子レベルからの解明と精密な反応設計を実現し、低エネルギーかつ高速に高純度Siを生成するクリーンなプロセスを開発します。また国内にも豊富に存在する珪藻土を原料とする新しい製造プロセスを開発し、高純度Siの安定供給という資源確保戦略にも貢献します。

平成22年度採択分

研究課題
Next次世代を目指す化合物薄膜太陽電池の高性能化
研究代表者(所属)
片桐 裕則 ((独)国立高等専門学校機構 長岡工業高等専門学校電気電子システム工学科 教授)
概要
次世代の先を見据えて,脱希少金属系薄膜太陽電池の高性能化を行います。地球温暖化を止め,低炭素社会に向け太陽電池を普及させるには,変換効率と共に,使用する原材料の安定供給を考慮する必要があります。本研究では,希少金属であるインジウムを使用しないCZTS系光吸収層の高品質化,新規太陽電池材料,新規界面層の探索および新しいナノ構造を太陽電池に取り込むことで,産業として持続可能な新規太陽電池を開発します。
研究課題
シリコン基板上窒化物等異種材料タンデム太陽電池の研究開発
研究代表者(所属)
重川 直輝 (大阪市立大学大学院工学研究科 教授)
概要
本研究では、低発電コスト、高効率、省資源の太陽電池の実現に向けて、集光型太陽光発電システムと親和性が高い、シリコン/窒化物半導体ハイブリッド多接合タンデム太陽電池を実現します。そのために、可視〜赤外光バンドギャップ窒化物半導体のシリコン基板上作成技術、太陽電池設計・作成技術、ハイブリッド化技術を開発するとともに、InN系窒化物半導体の結晶成長、材料物性及びデバイス化に係る学問・技術の進展を図ります。
研究課題
シリサイド半導体pn接合によるSiベース薄膜結晶太陽電池
研究代表者(所属)
末益 崇 (筑波大学数理物質系 教授)
概要
本研究では、資源の豊富なSiとBaで構成されるBaSi2という新しい材料を用いて、pn接合型の薄膜結晶太陽電池を開発します。この材料を用いると、1μm程度の厚さでエネルギー変換効率が25%を超える太陽電池の形成が原理的に可能になります。太陽電池の性能を左右するpn接合について、高品質なpn接合形成のための製膜技術の開発に注力し、この新しい材料の薄膜太陽電池用材料としてのポテンシャルを示すことを目標とします。
研究課題
Cat-CVDなど新手法による太陽電池高効率化
研究代表者(所属)
松村 英樹 (北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科 教授)
概要
本研究では、Cat-CVD(触媒化学気相堆積)法による高性能界面を持つ薄膜形成、触媒生成されたラジカルを用いた200℃以下での低温不純物拡散とpn 接合形成など、われわれが開発した新手法を全て駆使することで、従来法の問題点を克服、エネルギー変換効率25%以上の結晶シリコン太陽電池の実現につながる基盤技術の確立を目指します。
研究課題
革新的塗布型材料による有機薄膜太陽電池の構築
研究代表者(所属)
山田 容子 (奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科 准教授)
概要
本研究では、光変換型前駆体法や超分子ナノ構造などの手法による塗布型低分子有機半導体材料を駆使し、有機薄膜太陽電池のp/n接合ナノ構造を制御します。これにより、これまで不可能であった「電荷分離界面の増大」と「キャリア取り出し経路の確保」の両立を実現したデバイス作製技術を確立し、次世代太陽電池の発展を目指します。

平成21年度採択分

研究課題
高感度な可視光水分解光触媒の創製
研究代表者(所属)
入江 寛 (山梨大学クリーンエネルギー研究センター 教授)
概要
本研究は、太陽光に多く含まれる可視光照射のもと、水を完全分解できる光触媒材料を設計・創製し、水素を獲得することを通じて独創的クリーンエネルギー生成技術の創出に貢献するものです。既存の材料設計・探索指針の延長ではなく、新規戦略に基づく材料設計および新規機構に基づく水分解方法を提案し、可視光応答型水分解材料を創製します。さらに、高効率化のため、材料の形態(ナノチューブ、ナノ中空体など)をナノレベルで制御することによって反応サイトを空間的に分離する方法やヘテロ接続構造の最適化によって電荷分離効率を向上する方法などの検討を行います。
研究課題
アモルファスシリコンの光劣化抑止プロセスの開発
研究代表者(所属)
岡本 博明 (大阪大学大学院基礎工学研究科 教授)
概要
本研究は、光劣化の無いアモルファスシリコンを創成し、高効率・高安定な実用化薄膜系太陽電池を実現するための科学技術を構築することを目的として、異なる分野で培われてきた叡知と経験を集結した総括的な研究開発を推進します。これは、次世代太陽光発電技術の発展に寄与するのみならず、薄膜シリコン系材料の物性・プロセス技術やデバイス物理などの基礎科学分野の革新的進展に貢献するものと期待されます。
研究課題
界面局所制御による光・キャリアの完全利用
研究代表者(所属)
佐藤 真一 (兵庫県立大学大学院工学研究科 教授)
概要
太陽電池が持つ潜在能力を極限まで引き出すためには、入射する「光」と、光により発生する「キャリア」の完全利用を目指す必要があります。本研究では「光」と「キャリア」の損失が起こる太陽電池と表面膜との界面に着目し、「界面特性の物理モデル」を構築します。さらにコンビナトリアル手法を駆使して「新しい表面膜材料」を探索し、モデルと組み合わせて太陽電池の高効率化を推進します。
研究課題
色素増感太陽電池におけるデバイス物性に関する研究
研究代表者(所属)
韓 礼元 ((独)物質・材料研究機構次世代太陽電池センター センター長)
概要
低炭素化社会に貢献する低コストの色素増感太陽電池の高変換効率化研究を行います。色素増感太陽電池のセル構造や色素、酸化物半導体、電解質などの構成材料を変えながら、半導体物理、電子工学の分野を基盤にして、表面科学、分子化学や計算科学的アプローチを加えた異分野融合研究により、「分子の電子状態・配列」から「半導体物性などのデバイス物理」までの動作原理を解明し、新たな高効率化アプローチを明らかにします。
研究課題
有機太陽電池のためのバンドギャップサイエンス
研究代表者(所属)
平本 昌宏 (自然科学研究機構分子科学研究所分子スケールナノサイエンスセンター 教授)
概要
本研究は、有機半導体のバンドギャップサイエンスを確立、すなわち、イレブンナイン超高純度化、ドーピングによるpn制御、内蔵電界形成、オーミック接合形成、半導体パラメータ精密評価、などのサイエンスをシリコン無機半導体のレベルまで引き上げ、さらに、励起子、無機/有機ヘテロ界面のサイエンスを確立して、シングルセルで効率15%の有機太陽電池を目指すものです。
研究課題
励起子吸収による増感を利用した高効率太陽電池の研究
研究代表者(所属)
堀越 佳治 (早稲田大学先進理工学部 教授)
概要
低コスト高効率の太陽電池を実現するためには薄膜化と吸収係数の増大が不可欠です。これを同時に実現するため、通常のバンド端吸収に加え、励起子の励起に伴う光吸収も利用します。室温における十分な励起子吸収は、励起子束縛エネルギーの高いZnOやGaNを含む半導体材料を用いること、および半導体超格子や量子井戸を利用することによって実現します。欠陥の少ない大面積ヘテロ接合薄膜の製作技術、および太陽電池としての最適なドーピング技術を確立し高効率化を達成します。
研究課題
大気圧プラズマ科学に基づく新たなSi材料創成プロセスの開発
研究代表者(所属)
安武 潔 (大阪大学大学院工学研究科 教授)
概要
本研究は、大気圧近傍の高圧力プラズマを用いて、廉価な低純度シリコン(Si)原料から太陽電池用Siを製造するプロセスを開発するものです。プラズマ内部や材料表面で生じる現象を原子レベルで解明し、高度に制御する手法を確立することにより、低純度Si原料からのシラン生成反応を超高速化します。これにより新しい高純度Si材料創成プロセスを開発し、太陽電池用Si材料不足の解消と太陽電池製造コストの大幅な低減に貢献します。
(*研究者の所属は2011年4月現在のものです)