top
戦略的創造推進事業CREST研究領域 > ナノ構造体

研究領域

戦略目標

研究領域名

プロセスインテグレーションに向けた高機能ナノ構造体の創出
研究領域HP

研究総括

入江 正浩(立教大学理学部化学科 教授)

概要

 次世代ナノシステムを効率よく自在に創りあげるには、トップダウンプロセスとボトムアッププロセスとの有機的な結合が欠かせません。本研究領域では、分子レベルにおける精緻なナノ構造、機能をマクロレベルの材料の構造、機能に繋げる方策を探り、ボトムアッププロセスでしか達成されない特異な構造、機能をそなえた自立した高機能ナノ構造体を創出することをめざしています。
 分子、超分子レベルでは、分子機械、分子モーター、人工筋肉など精緻な構造の構築、特異な機能の発現も報告されていますが、これらのナノ構造体を自己組織化、自己集積化し、マクロレベルの材料の構造、機能に繋げることには成功していません。分子触媒、固体触媒について言えば、精緻な分子・構造設計に加え、自己組織化、自己構造化により、多段階反応のワンポット合成などこれまでにない高度な機能をもった触媒の開発が望まれています。分子材料は、その多様性を活かすことによりいかようにも姿を変えるポテンシャルを持っています。このポテンシャルを見据えて、分子レベルにおいて実現している精緻な構造、機能(化学、物理刺激応答性、触媒機能、導電性、磁性など)を、ボトムアッププロセスにより、マクロなreal worldの材料に繋げる道筋をつけ、特異な機能をもった自立した高機能ナノ構造体を創出することを本領域の目的としています。

平成22年度採択分

研究課題
高速フォトクロミック分子の高性能化と新機能創成
研究代表者(所属)
阿部 二朗 (青山学院大学理工学部化学・生命科学科 教授)
概要
光照射により生成した発色体が数百ミリ秒以内に完全消色する高速フォトクロミック分子の際立つ特徴は、高い発色効率・発色濃度および高速熱消色特性を併せ持つことにあります。本研究では従来のフォトクロミック分子では実現困難であった革新的フォトクロミック材料を開発することによって、世界をリードする新しい光産業の創出を目指します。
研究課題
ナノラジカル界面からの電子機能発現
研究代表者(所属)
阿波賀 邦夫 (名古屋大学物質科学国際研究センター 教授)
概要
本研究では、スムーズな電子移動が期待される有機ラジカル等のさまざまな開殻化学種を電極表面上にナノ配列させ、このナノラジカル界面で生じる電荷分離を起点として発生する巨大光過渡電流を用いた高効率・超高速の光−電流変換を実現します。さらに、ナノラジカル界面を固体電気化学へ応用し、これを電子プールとした高エネルギー・高パワー密度の分子性二次電池を実現します。
研究課題
磁気化学を基盤とした新機能ナノ構造物質のボトムアップ創成
研究代表者(所属)
大越 慎一 (東京大学大学院理学系研究科化学専攻 教授)
概要
本研究では、磁気化学を基盤とした新機能ナノ構造物質のボトムアップ創成に関する研究を推進し、新機能を有する磁気機能物質の探索およびそのデバイスへの展開を狙います。例えば、磁性酸化物ナノ微粒子を用いて次世代高密度磁気記録材料や電磁波吸収体等の創製を目指します。また、金属錯体磁性体の高次構造を制御することで、磁気とイオン伝導およびフォトンが相関した新規磁気現象などの、従来には無かった現象を見出すことを目指すと共に、これらの磁気機能性に関して分子構造やナノ構造といった観点から現象の本質に迫ります。
研究課題
ソフトπマテリアルの創製と機能発現
研究代表者(所属)
山口 茂弘 (名古屋大学大学院理学研究科 教授)
概要
真に優れたπ電子系物質の創出は、効率的な光電変換や照明やディスプレイなどの省エネルギー化、高性能化を実現し、未来のエレクトロニクス技術の発展の礎となります。本研究では、高度な広がりをもつπ共役骨格の創出、柔軟な共有結合鎖を用いたπクラスター化により、特異な光・電子物性の発現、高機能性アモルファス薄膜の形成、スイッチング機能の付与などの可能性を追求し、新たなソフトπマテリアル群の創製を目指します。
研究課題
超分子化学的アプローチによる環状π共役分子の創製とその機能
研究代表者(所属)
山子 茂 (京都大学化学研究所 教授)
概要
本研究では、超分子化学的な発想に基づく合成法により、カーボンナノチューブの部分構造を持つシクロパラフェニレンに代表される、環状π共役分子の創製を行います。さらに、これらのπ共役分子が積層した高次構造体の構築による機能化と共に、これらの化合物を有機エレクトロニクス材料として利用することを視野に入れた基礎物性の解明を行います。これらの研究を通じて、未開拓分野である環状π共役分子の科学・技術の確立を目指します。

平成21年度採択分

研究課題
ナノとマクロをつなぐ動的界面ナノテクノロジー 
研究代表者(所属)
有賀 克彦 ((独)物質・材料研究機構WPI国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 主任研究者 )
概要
本研究では、界面環境にてバルクの刺激によって機能性分子・ナノシステムを駆動しうる「手で操るナノテク(Hand-Operating Nanotechnology):ナノとマクロをつなぐ動的界面ナノテクノロジー」を創始します。「自らの手の動きで分子をつかむ・並べる・見分ける・放出する」という夢の技術を実現し、あらゆるサイズで駆動するセンサー、DDS、物質分離などの革新技術の開発につなげます。
研究課題
酸・塩基複合型超分子動的錯体を鍵とする高機能触媒の創製
研究代表者(所属)
石原 一彰 (名古屋大学大学院工学研究科 教授)
概要
従来の単一分子性触媒では困難な遠隔不斉誘導、カスケード反応、高度な分子認識などの酵素特有の機能を備えた、真に実用的な人工触媒の開発は有機合成化学の最重要課題です。本研究提案では、環境に優しい精密合成技術の実現を目標に、生体酵素を凌駕する高機能ナノ触媒の創製とその効率的調製法の確立を目指します。酸・塩基複合化学を基盤に多様な動的機能を備えた超分子自己会合型触媒を開発します。
研究課題
ホウ酸エステルの動的自己組織化に基づく高次機能の開拓
研究代表者(所属)
岩澤 伸治 (東京工業大学大学院理工学研究科 教授)
概要
本研究ではホウ酸エステル化合物の特徴的性質を活用し、ホスト-ゲスト相互作用に基づく動的自己組織化を基盤とするボトムアップ合成手法を確立すること、次いで分子レベルでホウ酸エステル化合物に特徴的な動的高次機能、特に分子触媒機能や分子分離・貯蔵機能などを実現すること、そして最終的には分子レベルで実現した各種機能をマクロな物質レベルでの機能発現へと展開することを目的とします。
研究課題
キラルナノ分子ロッドによる機能の階層的不斉集積と組織化
研究代表者(所属)
杉野目 道紀 (京都大学大学院工学研究科 教授)
概要
触媒、キラル誘起、発光、可逆架橋、水素結合、配位結合などの多様な機能部位を集積・組織化したナノサイズのらせん形巨大棒状分子を、さらに精密に集積・組織化することで階層的な構造体を創りだし、新しい機能性材料の開発を行います。この巨大棒状分子の合成法の確立と集積化により、次世代のキラルテクノロジーとして期待されるキラル高分子触媒やキラル分離膜の創製を目指します。
研究課題
多核金属クラスター分子の構造制御によるナノ触媒の創製
研究代表者(所属)
真島 和志 (大阪大学大学院基礎工学研究科 教授)
概要
第1遷移金属や前周期遷移金属などの非貴金属について、金属核数、金属種、結合様式を制御することにより、2核より金属数の大きなナノスケールの多核金属クラスター分子を系統的に合成します。これにより、通常の貴金属の単核錯体が示す触媒機能を凌駕し、単核金属錯体では実現できないまったく新しい触媒反応の開発を行います。本研究により開発するナノ触媒により、医薬品や機能性材料の合成に優れ、環境負荷を低減できる新しい触媒反応を実現します。
研究課題
ナノシートから構築する高機能ナノ構造体
研究代表者(所属)
松本 泰道 (熊本大学大学院自然科学研究科 教授)
概要
厚さ1nm程度の二次平面単結晶無機ナノシートは、その組成に基づく化学的・物理的特性に加えて、量子サイズ効果、特異界面効果、高効率電荷分離効果を有する革新的機能材料です。本研究では、本来ナノシートが持つ静電的自己組織機能を利用し、異種ナノシート、機能性分子、液晶・高分子、DNAからなる未来型高機能ナノ層状体・ナノハイブリッド材料を構築し、新規機能の探索を行います。

平成20年度採択分  中間評価

研究課題
生体分子情報−構造−機能統合ナノシステムの構築 
研究代表者(所属)
杉山 弘 (京都大学大学院理学研究科 教授 )
概要
DNAは配列のプログラムによって意図的にさまざまなナノ構造を形成させることが可能です。このDNAに特有な性質を利用し、多種多様の分子・材料を思い通りに配置できるようにDNA構造上に個別の情報「アドレス」を割り振り、ナノスケールで精密に集積させ、その空間で発現される新規機能を開拓します。これを基盤技術として生体分子を組織化した高度デバイスを作成し、トップダウン型のナノ技術との融合を図ります。
研究課題
溶解カーボンナノチューブ高機能ナノシステムのデザイン
研究代表者(所属)
中嶋 直敏 (九州大学大学院工学研究院 教授)
概要
本研究では、研究代表者が世界に先駆けて提案、展開してきたカーボンナノチューブ(CNT)の可溶化/機能化研究を大きく展開させ、CNTのナノ構造制御による次世代のCNTナノハイブリッド材料の創成とその応用を目指します。ここでは、ボトムアッププロセスの高度化、ボトムアッププロセスとトップダウンプロセスの融合により高機能性CNTナノ構造体を創出します。また、同時にこれまでに未解明のCNTそのものの基盤特性を明らかにします。
研究課題
動的応答特性を有するナノ構造体の構築と精密バイオ機能化
研究代表者(所属)
浜地 格 (京都大学大学院工学研究科 教授 )
概要
本研究では、細胞の内側に侵入し、あるいは外側からソフトに作用することによって、細胞や組織の状態を精密センシングしたり、その機能を制御できる「動的特性を有する3次元自己組織化ナノ構造体」の創製を目指します。バイオイメージング、マルチ刺激応答型薬剤放出材料や3次元細胞培養マトリックス、高感度・高精度バイオ分析などに応用可能な先端医工学を推進する新ナノバイオ材料への展開が期待されます。
研究課題
自己組織化超分子ポリマーの動的機能化
研究代表者(所属)
原田 明 (大阪大学大学院理学研究科 教授 )
概要
ホスト分子としてシクロデキストリンや光応答タンパク質、抗体分子を、ゲスト分子として光や酸化還元応答性を有する分子を用いて、そのホスト−ゲスト相互作用を利用してさまざまな自己組織化超分子ポリマー構造体を作り、光などの外部刺激により、分子が分子の間を滑って動くシステムを構築します。さらに超分子ポリマーを利用して超分子触媒、超分子エネルギー変換素子、超分子センサー、および超分子輸送システムを構築します。
研究課題
階層的3次元構造・粒子形態制御による高機能ナノ構造体の創出
研究代表者(所属)
水野 哲孝 (東京大学大学院工学系研究科 教授 )
概要
本研究では、高機能(触媒・吸着・水素吸蔵・電極・赤外線遮断)固体材料を構成単位から原子・分子レベルで精密設計し、それらを自己組織化・集積化することで空隙体積、細孔径などが精密制御された構造体をサブナノ−マイクロメートルレベルで構築します。また、構造体生成過程の素反応制御による速度論的な集積・凝集形態制御を行い、3次元構造のみならず粒子形態が制御された構造体も合成します。さらに、材料の応用・実用化展開を行います。
(*研究者の所属は2011年4月現在のものです)