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戦略的創造推進事業CREST研究領域 > 組込みOS

研究領域

戦略目標

研究領域名

実用化を目指した組込みシステム用ディペンダブル・オペレーティングシステム
研究領域HP

研究総括

所 眞理雄((株)ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長)
(副研究総括:村岡 洋一(早稲田大学 理工学術院 教授))

概要

 コンピュータ技術の進展に伴い、基幹業務系や汎用PCのみならず、ホームサーバ、デジタルTV、組み込み型高性能サーバ、車載制御装置、生産制御装置、通信制御装置、ロボット、携帯機器、モバイル・ウェラブルコンピュータ、センサー・アクチュエータなど、多数の情報機器・システムがネットワークに接続されるようになってきており、近い将来にいわゆるユビキタス情報社会を構成するであろうと見込まれます。この時、これらの要素システムの多くは目的別の組込みシステムとして構築され、高い信頼性、応答性を確保しつつ、小さく、軽く実現することを要求されます。加えて、それらを接続した情報システムの信頼性、安全性、セキュリティ、性能などの要求を満足でき、さらには将来の拡張性や変更に動的に対応できなければなりません。このようなディペンダブルなシステムを構築するためには、オペレーティング・システム(OS)のレベルからイノベーティブな研究開発を行う必要があると考えられます。
 本研究領域は、ディペンダブルな情報システムを構築するための組込みシステム向けのOS の研究開発を行うものです。本研究領域では、将来、社会で実際に広範に使用されうるOS 技術を創出するために、実用化を目指し、個別の研究成果を統合して実用システムとして実現が可能であることを実証し、オープンソースの形で将来の更なる研究開発の基盤を提供することを目指します。このため、本研究領域においては、研究総括の強い統率の下で、必要に応じて研究体制の再編や研究の進め方の調整を行うことにより、研究領域内の研究を横断・統合した推進体制をとり、適切な研究領域運営を行うこととします。

平成20年度採択分  中間評価

研究課題
実時間並列ディペンダブルOSとその分散ネットワークの研究
研究代表者(所属)
加賀美 聡 ((独)産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究センター 副センター長)
概要
本研究は実時間周期タスク実行機能のディペンダビリティを持つART−Linuxと呼ぶOSに、マルチプロセッサ利用機能、実時間処理と優先度継承制御のためのシステムコールと解析機能、実時間通信機能、の3つの機能を実現します。実装はディペンダブルOS領域で研究されているディペンダビリティ規格に沿った形で行い、また同領域で開発されている検証ツールを利用可能とします。本OSを公開すると共に、ヒューマノイドロボット、ロボット用RTミドルウエア、企業の組み込みシステムでの実証実験を広く行い、5年後の実用化を目指します。
研究課題
利用者指向ディペンダビリティの研究
研究代表者(所属)
木下 佳樹 ((独)産業技術総合研究所関西産学官連携センター 主幹研究員)
概要
情報処理システムの社会的責任を考えに入れた、総合的なディペンダビリティをもつ規格を策定し、その適合性評価と規格適合のためのシステム・ライフサイクル(開発、運用、廃棄など)のガイドラインを定めます。ディペンダビリティをうたうシステムに一定の客観的基準を与えて利用者の安全安心に資するとともに、開発者に客観的付加価値としてディペンダビリティを提供する手段を与えることを狙います。
研究課題
Security Weaver とPスクリプトによる実行中の継続的な安全確保に関する研究
研究代表者(所属)
倉光 君郎 (横浜国立大学大学院工学研究院 准教授)
概要
本研究では、P−Busインターフェースに対応したSecurityWeaver を開発し、任意のセキュリティモジュール(アクセス制御や監査)を実行中に導入可能にすることで、予測不能なセキュリティ脆弱性に対応可能なディペンダブルOSの研究開発を進めていきます。さらに、運用状況に応じて適切にSecurityWeaver の制御を行うための新しい記述システムとして、Pスクリプトの研究/開発を新たに行います。最終的に、ソフトウェア開発者に広く利用されるオープンソース・ツールの開発・公開を行う予定です。
研究課題
耐攻撃性を強化した高度にセキュアなOSの創出
研究代表者(所属)
河野 健二 (慶應義塾大学理工学部 准教授)
概要
仮想化テクノロジー、セキュリティチップなどの最新の技術動向を踏まえ、既存のオペレーティングシステム(OS)の持つセキュリティ機構の全般的な見直しを行い、既存OSが提供するセキュリティ機構と、現在の情報システムが求めているセキュリティ機構とのギャップを埋める高セキュアOSの創出を目指します。アドホックな要素技術の組み合わせに過ぎなかったセキュリティ技術を系統的かつ体系的に見直し、最新のハードウェア動向を最大限に活用した系統的かつ体系的なセキュリティ機構として統合します。具体的には、LinuxベースのOSにセキュリティ機能のための拡張性を持たせ、分割して実装されていた種々のセキュリティ機構を連携させて組み込めるようにし、かつ、仮想マシンモニタ層とセキュリティハードウェア層という2つの階層からその健全性を保証するというアプローチをとります。結果的にさまざまなセキュリティ機構を容易に組み込める基盤を提供することになり、実際に使われる実用OSとして踏み出していくことを狙います。

平成19年度採択分

平成18年度採択分 年報 中間評価

研究課題
並列・分散型組込みシステムのためのディペンダブルシングルシステムイメージOS
研究代表者(所属)
石川 裕 (東京大学 情報基盤センター 教授)
概要
本研究ではネットワークで接続された組込みコンピュータによるデータベースサーバや高性能計算システムを実現するためのディペンダブルな高性能組み込み並列分散オペレーティングシステムを研究開発します。処理能力に応じて、ハードディスクを搭載したコンピュータ群、マルチコアCPUとメモリだけを搭載したコンピュータ群が適時ネットワークでつながれるクラスタシステムを想定し、Linuxを基に、ディペンダブルな単一システムイメージを提供します。
研究課題
省電力でディペンダブルな組込み並列システム向け計算プラットフォーム
研究代表者(所属)
佐藤 三久 (筑波大学 計算科学研究センター センター長 )
概要
マルチコア・マルチチップからなる高性能並列組込みシステムの構築において、冗長性を持ったソフトウェア分散共有メモリ機構により耐故障性を実現するとともに、複数の低電力高速ネットワークリンクを適宜用いることにより、電力制御・性能制御・耐故障性を包括的に実現する通信機構を研究開発します。また、実時間制約下で並列性制御と省電力化を行うための電力制御機構を構築し実証します。
研究課題
マイクロユビキタスノード用ディペンダブルOS
研究代表者(所属)
徳田 英幸 (慶應義塾大学 環境情報学部 教授)
概要
無線センサノードや小型携帯端末のようなマイクロレンジ組込み機器で共通に動作可能な、実時間性、高信頼性、高安全性、高可用性を持つオペレーティングシステムの基盤を、オープンソースOSであるLinuxを拡張して実現します。同基盤を提供することにより、それらの機器を相互接続したアプリケーション開発の容易化と、それらのアプリケーションにおけるディペンダビリティを提供します。
研究課題
高機能情報家電のためのディペンダブルオペレーティングシステム
研究代表者(所属)
中島 達夫 (早稲田大学 理工学術院 教授)
概要
本研究では、既存のソフトウエア資産を有効に利用しながら、システム全体の信頼性,制御系と情報系処理の融合、機能拡張性を大幅に向上する超高機能情報家電向け仮想実行環境を構築します。本研究のシステムは、現状のLinuxを用いた場合の開発においてその場限りの一時的な対応になっている障害管理、入出力管理、リソース管理を共通フレームワークとして提供することにより、コストを増加させず信頼性や機能拡張性を向上させます。
研究課題
ディペンダブルシステムソフトウェア構築技術に関する研究
研究代表者(所属)
前田 俊行 (東京大学大学院 情報理工学系研究科 助教)
概要
本研究では、静的プログラム解析技術 (プログラムを数学的理論に基づいて解析することで、プログラムを実行することなく、その性質を知る技術)、特に型理論とモデル検査理論に基づき、システムソフトウェアの安全性・信頼性を保証・検証する技術を実現します。また、この技術を実用化し、実際にシステムソフトウェア開発者に広く利用してもらえるような現実的な検証ツールを開発・公開します。
(*研究者の所属は2011年4月現在のものです)