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戦略的創造推進事業CREST研究領域 > 免疫機構

研究領域

戦略目標

(PDF:136KB)

研究領域名

アレルギー疾患・自己免疫疾患などの発症機構と治療技術
研究領域HP

研究総括

菅村 和夫(宮城県立病院機構 理事)

概要

 本研究領域は、アレルギー疾患や自己免疫疾患を中心とするヒトの免疫疾患を予防・診断・治療することを目的に、免疫システムを適正に機能させる基盤技術の構築を目指す研究を対象としています。
 アレルギー疾患や自己免疫疾患を中心とする疾患には国民のQOLを低下させるとされるものから重篤な場合は死に至るものまであります。このような疾患についてこれまでに深められてきた分子、細胞、器官・組織といったレベルにおける免疫機構や制御に関する理解を個体レベルの高次調節免疫ネットワークシステムの理解へと発展させ、臨床応用へとつないでいきます。
 具体的な研究課題としては、制御性細胞による免疫調節機構、粘膜免疫系・自己免疫系・獲得免疫系・自然免疫系の構築機構とその制御、自己免疫疾患・アレルギー疾患の発症機構、免疫と感染制御機構、疾患に対する薬剤・ワクチンなどの開発と効果測定、疾患の診断・治療法の確立、などが含まれます。

平成22年度採択分

研究課題
ヒト肥満細胞活性化制御技術の開発によるアレルギー疾患の克服
研究代表者(所属)
渋谷 彰 (筑波大学大学院人間総合科学研究科 教授)
概要
アレルギーの多くは肥満細胞から放出される化学物質によって引き起こされます。我々はこれまでに、これらの化学物質の放出を抑制する免疫系受容体、アラジン-1およびメア-Iを同定しました。本研究ではヒト肥満細胞に発現する新たな抑制性免疫系受容体を探索し、アレルギー疾患発症機構におけるこれら受容体の役割を解明します。さらに、抑制性免疫系受容体を分子標的とした、花粉症や喘息などに対する革新的医薬品の開発を目指します。
研究課題
自然免疫系を標的とした腸管免疫疾患の制御技術の開発
研究代表者(所属)
竹田 潔 (大阪大学大学院医学系研究科 教授)
概要
炎症性腸疾患をはじめとした免疫疾患の多くが、自然免疫系の異常により発症することが明らかになってきています。腸管の免疫系は、他の組織にはない特有のシステムを構築しており、自然免疫担当細胞も特有の細胞サブセットが存在し、腸管粘膜免疫系を制御しています。本研究では、自然免疫系による腸管粘膜免疫制御機構を明らかにして、その異常により発症する腸管免疫疾患の治療技術の開発を目指します。

平成21年度採択分

研究課題
ペア型レセプターを標的とした免疫・感染制御技術の開発
研究代表者(所属)
荒瀬 尚 (大阪大学微生物病研究所 教授 )
概要
抑制化と活性化レセプターから成る一連のペア型レセプター群は、免疫細胞の自己応答性を制御する一方、病原体などに対する生体防御を担っており、免疫制御において重要な機能を担っています。本研究では、一連のペア型レセプター群の認識機構および免疫病や感染症などにおける機能を解明すると共に、ペア型レセプターを制御することによる自己免疫疾患やアレルギー疾患の新たな治療法および病原体や腫瘍に対する免疫誘導法の開発を目指します。
研究課題
自己免疫疾患制御分子の同定による新規治療法の開発
研究代表者(所属)
岡崎 拓 (徳島大学疾患ゲノム研究センター 教授 )
概要
自己免疫疾患の効果的な診断法、および根治療法の開発には、疾患の成立機序を詳細に解明することが不可欠ですが、自己免疫疾患は多遺伝子疾患であるため原因遺伝子を解明することは極めて困難であり、思うように進んでいませんでした。そこで本研究では、病態成立の遺伝要因がより単純であるモデル動物を利用することにより、その原因遺伝子を全て同定して病態成立機序の全貌を解明し、新規治療法の開発につなげることを目的としています。
研究課題
新たなアレルギー発症機構の解明とその制御
研究代表者(所属)
烏山 一 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 教授 )
概要
近年、日本を含む先進諸国においてアレルギー疾患に苦しむ患者数が増加し、大きな社会問題となっています。本研究では、私たちが独自に道を開いた「好塩基球」ならびに「高IgE症候群」に関するアレルギー研究の成果を基盤として、従来とは異なるアプローチで、新たなアレルギー発症機構ならびにその制御機構を分子レベル、細胞レベル、個体レベルで解明し、新規アレルギー治療法開発の基盤技術の確立を目指します。
研究課題
接着制御シグナルの破綻と自己免疫疾患
研究代表者(所属)
木梨 達雄 (関西医科大学附属生命医学研究所 教授 )
概要
免疫細胞の全身性の移動制御は、異物侵入を監視する免疫機能に重要な働きをしています。私たちは、免疫細胞の動態を制御するRap1シグナル伝達機構を発見し、そのメカニズムを明らかにしてきましたが、その破綻が、多臓器の自己免疫病につながることを見出しました。本研究は、自己寛容における免疫動態制御シグナルが果たす機能と制御を明らかにして、新たな自己免疫発症機構を提示し、難治性自己免疫疾患との関連を明らかにします。
研究課題
液性免疫制御による新しい治療法の開発
研究代表者(所属)
黒崎 知博 (大阪大学免疫学フロンティア研究センター 特任教授 )
概要
慢性関節リウマチを始めとする自己免疫疾患においては、プラズマ細胞から自己抗体が産生され、この自己抗体が、疾患の引き金・増悪に関与している重要な要因と考えられています。本研究では、自己抗体産生プラズマ細胞、およびその前駆細胞であるメモリーB細胞を標的にし、これらの細胞に特異的な活性化・抑制化・生存必須ファクターを同定します。さらに、それを用いて末梢自己寛容力を亢進させる新しい治療法の開発を目指します。
研究課題
核酸を主体とした免疫応答制御機構の解明とその制御法の開発
研究代表者(所属)
谷口 維紹 (東京大学大学院医学系研究科 教授 )
概要
核酸に対する自然免疫応答は感染防御や自己免疫疾患に深く関与します。各種核酸に特異的な受容体が同定される一方、全ての核酸に対する普遍的な認識機構は全く知られていません。本研究では最近我々が同定した、あらゆる核酸が免疫原性を獲得するために必須である結合たんぱく質を中心に、その下流で機能する新規分子群や適応免疫との連携機構を解析します。さらに、当該結合たんぱく質に対する拮抗物質などを用いて免疫応答の制御法の確立を目指します。

平成20年度採択分  中間評価

研究課題
IL−17ファミリー分子、C型レクチンを標的とした自己免疫・アレルギー疾患の発症機構の解明と治療薬の開発
研究代表者(所属)
岩倉 洋一郎 (東京大学医科学研究所 教授 )
概要
感染によりTLRやC型レクチンなどの病原体認識機構が活性化されると、種々のサイトカインが産生され、免疫系を活性化して病原体を排除します。しかし、この機構の過剰な活性化は、アレルギーや自己免疫も引き起こします。本研究では、関節リウマチなどの自己免疫疾患やアレルギー、感染症などに関与すると考えられるDectin−1/2やDCIRなどのC型レクチン、IL−17A/Fなどのサイトカインの機能を解析し、これらの疾病に対する治療法の手がかりを得ることを目指します。
研究課題
樹状細胞制御に基づく粘膜免疫疾患の克服
研究代表者(所属)
樗木 俊聡 (東京医科歯科大学 難治疾患研究所 教授 )
概要
粘膜組織は抗原の主たる侵入の場であり、固有の樹状細胞(DC)群によって構成されるDCシステムによるユニークな免疫応答・免疫寛容誘導機構が存在します。本研究課題では、粘膜DCシステムによる恒常性の維持機構を明らかにし、同機構の破綻による粘膜免疫疾患発症メカニズムの解明へ繋げます。これらの成果に基づき、DCシステムを介した免疫疾患の予防・治療技術の開発を目指します。
研究課題
受容体制御による新しい免疫療法の構築
研究代表者(所属)
高井 俊行 (東北大学加齢医学研究所 教授 )
概要
IgGおよびMHCクラスIの抑制性受容体であるFcgRIIBとLILRBなど免疫制御性受容体を標的としたアレルギー、自己免疫疾患の新たな治療法を構築します。γグロブリン大量静注療法のポリッシュアップ、アゴニスティックリガンドなどの開発を通じて自己寛容力をエンハンスし、さらに免疫系ヒト化マウスNOGにおいてこれら前臨床研究を成熟させ、ヒト免疫系の制御に活用できるレベルにまで展開します。
研究課題
アポトーシス細胞の貪食・分解とその異常
研究代表者(所属)
長田 重一 (京都大学大学院医学研究科 教授 )
概要
生体内では毎日、数十億の細胞がアポトーシスにより死滅し、マクロファージによって貪食・分解されます。また、毎日100億近く産生される赤血球の分化段階で核は放出されマクロファージに貪食されます。この過程の欠陥は、自己免疫疾患や貧血・リウマチ性関節炎をひき起こすと考えられます。本研究は、死細胞の貪食やDNAの分解異常がどのようにして自己免疫疾患や関節リウマチを発症させるかを明らかにしようとするものです。
研究課題
臓器特異的自己免疫疾患・炎症疾患の制御機構の理解とその人為的制御
研究代表者(所属)
平野 俊夫 (大阪大学大学院生命機能研究科 教授 )
概要
自己免疫疾患や慢性炎症性疾患の発症機序として、我々は、非免疫系細胞がサイトカイン依存的に免疫系細胞の活性化を増幅させて悪循環を誘導している機構が存在する事を見いだしました。本研究では、1.本悪循環に関与する、更なる因子の同定、2.悪循環の標的分子の同定、3.臓器特異的に悪循環を抑制する方法の開発――を行います。本研究により、自己免疫疾患、アレルギーの治療、さらに、癌治療、効率的なワクチン開発の基盤技術確立を目指します。
研究課題
細胞骨格制御シグナルを標的とした免疫難病治療の新戦略
研究代表者(所属)
福井 宣規 (九州大学生体防御医学研究所 教授 )
概要
免疫応答の根幹を為す種々の細胞高次機能は、いずれも細胞骨格の再構築により巧妙に制御されています。本研究では、細胞骨格制御に重要な役割を演じるCDMファミリー分子群の機能・構造・シグナル伝達機構を包括的に解析し、その成果に立脚して免疫応答を効果的に抑制し得る低分子化合物を同定します。この成果は、自己免疫疾患や移植片拒絶といった免疫難病の画期的な治療法の開発につながるものと期待されます。
研究課題
細胞内シグナル制御による免疫リプログラミング
研究代表者(所属)
吉村 昭彦 (慶應義塾大学医学部 教授 )
概要
ヘルパーT細胞は免疫の司令塔と言われ、正のエフェクターT細胞と負の抑制性T細胞に分化し、免疫応答のバランスを決定します。その制御破綻がアレルギーや自己免疫疾患に直結します。我々はT細胞分化の方向性を決定するSOCS遺伝子群を発見しました。本研究においてさらにT細胞分化を維持する分子機構を解明し、エフェクターを抑制型T細胞へ転換する、すなわち正を負にリプログラムする方法論の開発と免疫疾患治療への応用を目指します。
(*研究者の所属は2011年4月現在のものです)