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戦略的創造推進事業CREST研究領域 > 光科学

研究領域

戦略目標

研究領域名

新機能創成に向けた光・光量子科学技術
→ 研究領域HP

研究総括

伊澤 達夫(東京工業大学 理事・副学長)

概要

 本研究領域は、情報処理・通信、材料、ライフサイエンスなど、基礎科学から産業技術にわたる広範な科学技術の基盤である光学および量子光学に関して、光の発生、検知、制御および利用に関する革新的な技術の創出を目指す研究を対象とするものです。
 具体的には、情報処理・通信技術や計測技術などの飛躍を目的とした量子ドット、フォトニック結晶、非線形光学の応用などによる新しい光機能素子などの原理や技術、分子・原子や化学反応の制御、生体観察・計測、産業・医療などへの利用を目的とした未開拓の波長域発生などの新しい光源・検出手法の開発・高度化と利用技術、近接場光などを利用した光と物質の局所的相互作用の解明と超微細加工や超大容量メモリなどの利用技術、光による原子の量子的制御技術や光の本質に基づく新たな物質科学などの創出を目指す研究を対象とします。  また、以上の研究にブレークスルーをもたらす、新材料に関する研究も対象とします。

平成19年度採択分 年報 中間評価

研究課題
バイオメディカルフォトニックLSIの創成
研究代表者(所属)
太田 淳  (奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科 教授)
概要
フォトニクス技術とLSI(大規模集積回路)技術を融合し、バイオ・医療への適用を可能とする新しいバイオメディカルフォトニックデバイスの創成を目指します。光デバイス、バイオ、脳神経外科の各研究者の共同により、光の特徴を最大限に活かしたフォトニックLSIデバイスの新たな可能性を示し、脳科学分野への展開、パーキンソン病やてんかんなど脳の機能的疾患への臨床応用開拓までを見据えた研究を推進します。
研究課題
超伝導による連続THz波の発振と応用
研究代表者(所属)
門脇 和男  (筑波大学大学院 数理物質科学研究科 教授)
概要
高温超伝導体は、超伝導を担うCuO2層からなる原子レベルのジョセフソン接合を内包しており、それらが多数積層し結晶を形成している。この結晶内のジョセフソン接合すべてに同期したジョセフソンプラズマを励起することで、連続でコヒーレント、かつ強力な単色レーザーTHz光の発振にごく最近、成功しました。この発振現象は超伝導による初の固有ジョセフソンレーザー(SIIJ LASER)と考えられ、この新現象の物理的な機構の解明とともに、更に強力なTHz波を得るための技術開発を行います。また、このTHz波を用いて物質の分光も行います。
研究課題
光合成初期反応のナノ空間光機能制御
研究代表者(所属)
橋本 秀樹  (大阪市立大学大学院 複合先端研究機構 教授)
概要
構造を改変した光合成色素蛋白超分子複合体を、ナノ空間において自在に配列させた、人工光合成膜試料を作成し、超高速時間分解コヒーレント分光および時間分解顕微分光を用いた励起エネルギー移動の実時間計測と広い周波数領域でのフォノン物性の測定を行い、統括的な励起エネルギー移動メカニズムの解明及びデバイスとしての利用指針を確定することで、21世紀をリードするバイオナノテクノロジーの基盤技術形成を促進します。
研究課題
230-350nm帯InAlGaN系深紫外高効率発光デバイスの研究
研究代表者(所属)
平山 秀樹 ((独)理化学研究所 テラヘルツ量子素子研究チーム  チームリーダー)
概要
波長が230-350nm帯の深紫外高輝度LED・深紫外半導体レーザは、医療、殺菌・浄水、生化学産業、高演色LED照明、高密度光記録、公害物質の高速浄化、各種情報センシング等の幅広い分野への応用が考えられその実現が大変期待されています。本研究では深紫外発光素子実現のため、窒化物InAlGaN系半導体の結晶成長技術を開拓し、230-350nm帯深紫外高効率LED、半導体レーザを実現します。
研究課題
アダプティブパワーフォトニクスの基盤技術
研究代表者(所属)
宮永 憲明 (大阪大学レーザーエネルギー学研究センター 教授)
概要
高出力超短パルスレーザー光がもつ潜在能力を極限まで引き出すことにより、レーザー光と物質との相互作用を多様かつ高精度に制御することが可能となります。そのために、半導体レーザー励起固体レーザーによる光パラメトリック増幅を基盤として出力30TW級の数サイクルレーザーを開発し、世界的に競争力のある基幹装置として利用研究に供していきます。さらに、時間的・空間的位相制御や偏光分布制御技術を取り入れ、アダプティブな制御機能を有するパワーフォトニクスの基盤技術をまとめ上げます。

平成18年度採択分 年報 中間評価

研究課題
高エネルギー密度プラズマフォトニクス
研究代表者(所属)
兒玉 了祐 (大阪大学大学院 工学研究科 教授)
概要
超高強度レーザーで生成できる高エネルギー密度プラズマを、コヒーレントに制御し、規則性を維持した状態の過渡的なプラズマを利用することで、新たな光機能素子としてのプラズマフォトニックデバイスの可能性を探求します。これにより開発されるデバイスは、通常の光学・制御デバイスでは直接制御が困難な桁違いに高い強度の電磁波や高エネルギー密度量子ビームを直接取り扱うことができる高い耐力と機能をもったもので、幅広い応用が期待されます。
研究課題
時空間モルフォロジーの制御による能動メゾ光学
研究代表者(所属)
五神 真 (東京大学大学院 理学系研究科 教授)
概要
物質の形態に敏感な光学効果に着目しその動的制御による光操作法“能動メゾ光学”を開拓します。非局所的光学応答や巨視的コヒーレンスに起因する特異な光学効果を探り、光と物質の両面からその効果を増強します。時空間で位相を含め厳密に制御されたパルス光源、それを用いた極限的光学測定技術の開拓を進めます。これらにより、光と物資の基礎科学を深化させ新しい光制御機能を開拓します。
研究課題
フォトニックナノ構造アクティブ光機能デバイスと集積技術
研究代表者(所属)
馬場 俊彦 (横浜国立大学大学院 工学研究院 教授)
概要
フォトニックナノ構造デバイスは、近年、高度なパッシブ技術が確立されました。そこで本研究ではアクティブ的な光学現象を探求します。特にフォトニック結晶中の巨大かつ多次元的な分散によるスローライト発生、高効率光増幅、負の屈折現象、光局在による非線形増大、ダイナミックな光学現象などを調査し、高機能光デバイスを開発します。また他のデバイスやシリコンフォトニクス技術と融合することで、光集積と光信号処理にブレークスルーをもたらすことを目指します。
研究課題
温度安定性に優れた光通信用InN半導体レーザの研究
研究代表者(所属)
松岡 隆志 (東北大学 金属材料研究所 教授)
概要
高度情報化社会の発展のため、通信システムの低価格化と大容量化が望まれています。このような状況の中で、温度安定性に優れた光源が期待されています。我々は、青色発光ダイオード用材料である窒化物半導体の内のInNが赤外域で発光し、その効率と波長の温度安定性が優れていることを、見いだしました。本研究では、InNを発光材料とする通信用レーザを実現します。このレーザは、砒素や燐を含まない低環境負荷素子という特徴も有します。
研究課題
電子相関による光と電子の双方向制御の実現
研究代表者(所属)
宮野 健次郎 (東京大学 先端科学技術研究センター 教授)
概要
遷移金属の酸化物や錯体では、電子は互いに影響を及ぼしあうことによって独立には動くことができない状態にあります。これを電子相関と呼びます。強い相関のもとでは、電子集団はしばしば自発的な秩序を持つようになります。この秩序は光の影響を強く受け、また逆に光に強く影響を及ぼすことから、光によって秩序を変え、秩序によって光を変える双方向の制御が可能です。電子相関材料と光が最大に結合するような構造を作り、原子一層の材料から目に見える効果を引き出すことを目指します。
研究課題
高強度光電界による電子操作技術の開拓
研究代表者(所属)
渡部 俊太郎 (東京大学物性研究所 教授)
概要
最新の高出力レーザー技術と光パルスの精密制御技術の融合により、軟X線サブ100アト秒パルスの発生と高強度任意電場波形の生成を行います。100アト秒パルスをポンプ光およびトリガーとし、三角光電場で掃引する“アト秒オシロスコープ”を開発します。これにより、オージェ過程や化学反応などで発生する電子の超高速運動の連続写真を取ると同時に物質中の電子をアト秒領域で自由に操作する技術を開拓し、新機能の実証を目指します。

平成17年度採択分 中間評価  事後評価  終了報告書  年報

研究課題
ナノコラム結晶による窒化物半導体レーザの新展開
研究代表者(所属)
岸野 克巳 (上智大学 理工学部 教授)
概要
緑色半導体レーザが未開拓なため三原色レーザの全半導体化の目処は立っていません。本研究では、本チームが創成した窒化物ナノコラムで発現されるナノ結晶効果で緑色半導体レーザへの道を拓きます。青色域に利用されたInGaN/GaN系は長波長化とともにレーザ特性が劣化し、緑色域に到達しません。ナノコラム結晶で期待される無転位性、結晶歪とIn組成揺らぎの軽減効果を基礎にして、緑色域ナノレーザの実現を目指します。
研究課題
超伝導フォトニクスの創成とその応用
研究代表者(所属)
末宗 幾夫 (北海道大学 電子科学研究所 教授)
概要
本研究では、ボゾン粒子としての電子クーパー対の巨大コヒーレント体積による振動子強度の増強と、半導体量子ドットの価電子帯離散準位におけるフェルミ粒子としての正孔に対するパウリの排他律を用い、On demandで一度に単一の量子もつれ合い光子対を発生するダイオード光源を実現します。これはまた超伝導とフォトニクスの境界領域をつなぎ、さまざまな量子情報処理の基幹デバイスとしての幅広い応用も期待されます。
研究課題
フォトニック結晶を用いた究極的な光の発生技術の開発
研究代表者(所属)
野田 進 (京都大学大学院工学研究科 (兼)光・電子理工学教育研究センター 教授・センター長)
概要
本研究は、フォトニック結晶を用いて、不要な光のモードを排除し、真に必要なモードのみを用いた究極的な光の発生技術の開発を行い、超高効率発光デバイスや、安定な縦横モードかつユニークなビームパターンをもつ大面積レーザの創出を目指します。併せて、光子−電子系の弱・強結合に関する検討をも行い、次世代量子通信・情報のための基礎を築きます。これらの研究は、将来的には、極限的に高いQ値をもつ光ナノ共振器と電子系の結合体を複数集積した光量子演算や、様々な光エレメントを一括集積した光チップの世界へとつながっていくものと期待されます。
研究課題
ナノ光電子機能の創生と局所光シミュレーション
研究代表者(所属)
堀 裕和 (山梨大学大学院 医学工学総合研究部 教授)
概要
ナノメーターサイズの空間で、一体となった光と電子の動きを制御し、情報処理や通信にイノベーションをもたらす、ナノフォトニクスデバイスの実現を目指します。局所光と電子の動きをミクロな磁石で制御する半導体素子を創るため、局所光で微細加工するナノ光リソグラフィー技術と、局所光による信号の伝送機構を設計する計算機シミュレーション法を開発します。原子分子レベルで基本動作を検証し、ナノの世界に特有の新機能を開拓します。
研究課題
極限光電場波形制御による新光量子技術の創出
研究代表者(所属)
山下 幹雄 (北海道大学大学院 工学研究科 特任教授・名誉教授 )
概要
可視・近赤外域で世界最短の2.8fsの単一でクリーンなモノサイクル域光波の電場波形を制御・最適化する手法を活かし、以下の未踏域の研究を行います。(1)100アト秒以下の高次高調波X線パルスの発生;(2)常温量子固体からの高次ラマン光および希ガス充填内壁コートホローファイバからの誘起位相変調光を利用した、近赤外・可視・紫外域でのサブフェムト秒パルス発生;(3)量子状態制御法を光応答性DNAに応用した遺伝子発現レーザー選択制御、の3技術を創出します。
(*研究者の所属は2011年4月現在のものです(但し、終了課題に関しては、その終了時点))