「プロセスインテグレーションに向けた高機能ナノ構造体の創出」

平成23年度 研究終了にあたって

研究総括 入江 正浩

 本研究領域は、戦略目標「プロセスインテグレーションによる次世代ナノシステムの創製」の達成に向けた研究領域の一つとして平成20年度に発足した。本研究領域では、自己組織化に代表される従来のボトムアッププロセスの一段の高度化を図ることによる、新規高機能ナノ構造体を創出することをめざしている。具体的には、自己組織化や自己集積化などのボトムアッププロセスに、自己構造化や自己修復などの新たな手法を取り込むことにより、これまでに蓄積されてきた分子レベルでの精緻な機能をreal world において利用可能な技術として実現するための道筋をつけ、高度な機能を有するナノ構造体を創出することをめざし、16課題の研究開発をすすめてきた。
 
 平成20年度に採択された5件の研究チームのうち、水野哲孝(東京大学大学院工学研究科)「階層的3次元構造・粒子形態制御による高機能ナノ構造体の創出」研究チームは、高機能固体材料を原子・分子レベルで精密設計し、それらを特異的に自己組織化・集積化させることにより空隙体積、細孔径などが精密制御されたナノ構造体を構築することをめざした。
 
 欠損型ポリオキソメタレートを分子鋳型として用いることで、種々の金属数・結合様式の活性点構造を有する分子触媒を自在に設計・調整することに成功している。リン中心ヒドロキソ架橋二核バナジウム構造をもつポリオキソメタレートが、アルカンのヒドロキシル化反応に対して高い触媒活性を示し、2級と3級C-H結合を有するシクロアルカンのヒドロキシル化反応においては、より不活性な2級C-H結合を優先的にヒドロキシル化するという特異な位置選択反応性を示すことも見いだしている。構造体生成過程の素反応制御による速度論的な粒子形態制御については、その方向性を見いだした。また、応用研究として、近赤外線遮断材料、水素貯蔵材料、白金低使用固体高分子型燃料電池などポリオキソメタレートを用いた機能材料についても開発の糸口を見いだしている。

 当初5.5年の研究期間で予定された本研究課題は、最先端研究開発プログラム(Firstプログラム)の「高性能蓄電デバイス創製に向けた革新的基盤研究」(中心研究者:水野哲孝)の中でさらに成果を発展させることとなったため、研究開始から2.5年の平成23年3月で終了することとなった。

 最後に、課題の選定、評価に適切な助言、ご指導を頂いた本研究の領域アドバイザーの各位に深く感謝します。

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