「二酸化炭素排出抑制に資する革新的技術の創出」

平成23年度 研究終了にあたって

研究総括 安井 至

 本研究領域は、戦略目標「持続可能な社会に向けた温暖化抑制に関する革新的技術の創出」の達成に向けた研究領域として平成20年度に発足しました。2050年までに世界の温室効果ガスの排出を半減させるという目標に向け、再生可能エネルギーの利用拡大と省エネ・高効率技術の開発と普及、例えば、新概念の太陽電池・バイオマスエネルギー・蓄電技術・燃料電池・高効率インバータ等を研究対象とし、これら関連する技術が20年後程度を目処に実用化されることを目標としています。この領域目標達成のため平成20年度に6課題、平成21年度に5課題、平成22年度に4課題の研究チームを採択し、合計15チームの体制となりましたが、その後、平成20年度採択の冨重チームと渡邉チームの研究課題がそれぞれ平成22年度末と23年度末に終了することとなりました。

 研究代表者:冨重圭一(東北大学大学院工学研究科・教授、研究課題名:触媒技術を活用する木質系バイオマス間接液化)の研究チームは、木質系バイオマスから液体燃料や化学品を製造する技術に関して、小規模でもエネルギー的に自立しやすく、かつ、コンパクトで操作性が高いプロセスを構築する際に重要となる触媒を開発することを目的としました。
 当初5.5年を予定していた冨重チームの研究課題は、H23年度から内閣府の最先端次世代プログラムで発展継続させることとなったため、平成22年度末で終了することとなりました。2.5年間の研究期間で開発した触媒の高機能化・機能解析・高性能化等の基盤技術は、バイオマス利用技術においてキーとなる要素技術であり、今後ますます重要性を増していくものと思われます。研究期間後半に予定されていた開発触媒の長寿命化・製造コスト低減等、実用化検証に向けた開発が中断されたことは大いに悔やまれますが、ここで開発された基盤技術が今後の実用化検証において有効に活用されていくことを期待しています。

 研究代表者:渡邉信(筑波大学大学院生命環境科学研究科・教授、研究課題名:オイル産生緑藻類Botryococcus(ボトリオコッカス)高アルカリ株の高度利用技術」の研究チームは、光合成により大気中の二酸化炭素ガスを吸収し、利用価値が高い軽質油とほぼ同じ成分を有するオイルを高アルカリ性環境下で大量に産生する緑藻Botryococcus braunii(ボトリオコッカス)を研究開発対象とし、そのオイル生産効率を一桁向上させることを目標としました。
 当初5.5年を予定していた渡邉チームの研究課題は、平成24年度から開始される「つくば国際戦略総合特区-藻類バイオマスエネルギーの実用化」の研究で発展継続されることとなったため、平成23年度末で終了することになりました。本研究チームのオリジナル技術であるボトリオコッカス耐アルカリ性株が持つ高いポテンシャルを最大限に引き出すこと、さらに、その際のエネルギーバランスの定量的な解析など、今後の研究の発展を期待しています。

 最後に、研究課題の選定と評価、サイトビジット、公開シンポジウムなどで日頃から適切なご助言をいただく領域アドバイザーの五十嵐泰夫、岡島博司、小久見善八、桑野幸徳、小長井誠、竹山春子、辰巳敬、藤岡祐一、藤野純一、松村幸彦、山地憲治、湯原哲夫の諸先生に感謝します。

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