研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
高温空気燃焼技術を用いた廃棄物・石炭高効率発電
2.研究代表者名
吉川 邦夫 (東京工業大学大学院総合理工学研究科 教授)
3.研究概要
 本プロジェクトは、約1,000 ℃に予熱された高温の空気及び水蒸気を用いて、低質な固体燃料に対しても燃焼に伴なう環境負荷を最低限に抑えながら高効率の発電が行なえる、安価かつコンパクト、しかも信頼性の高い画期的な発電システム(MEETシステム)の開発を目的とするものである。
 灰溶融ガス化MEETでは、投入される固体燃料の中の可燃分は、約1,000 ℃に予熱された高温空気によりガス化され、灰分は溶融状態で取り出されて無害化される。一方、高温水蒸気/空気改質方式MEET(STAR-MEET)では、固形燃料は約600 ℃の高温空気で熱分解ガス化され、発生ガス中に含まれるタール分を約800 ℃の高温水蒸気/空気によって一酸化炭素及び水素に改質することを目指している。
 現在までに、灰溶融ガス化MEETシステム及びSTAR-MEETシステムの実証プラントをそれぞれ製作し、実証運転を実施中である。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 灰溶融MEETシステムの技術実証は、燃料供給量200 kg/日容量のMEET-T装置に引き続き、燃料供給量4t/日容量のMEET-U装置を製作し、実証実験を実施してきた。
 MEET-T装置は平成9年に東工大長津田キャンパスに設置が完了した。その主なコンポーネントは、ぺブル床ガス化炉、高温空気加熱器、高温空気燃焼ボイラーである。この基礎試験装置により、固体燃料のガス化、溶融灰の捕獲と抽出、溶融スラグについての知見などが得られた。この結果MEET-T装置は、MEET-U装置設計のために基本的な技術情報を提供することができ、その役割を果たすことができた。
 一方MEET-U装置は、実用炉に必要なエンジニアリングデータの取得を目的として、横浜市産学共同研究センター(鶴見区)に平成12年3月に完成し、実証運転を実施中である。
 また、STAR-MEETシステムの技術実証については、平成12年9月に100 kg/4時間(バッチ方式)の燃料処理容量の実証装置を東工大長津田キャンパスに設置完了し、所定の基礎性能確認を行ってきた。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 灰溶融ガス化をめざしたMEET-U装置は、石炭を試験燃料とした場合、発熱量1,000 kcal/Nm3以上の生成ガスを取り出すことができることが確認できた。このシステムの中心的な構成機器で、固体燃料の中の可燃分をガス化する役割を受け持つぺブル床ガス化炉、ぺブル床ガス化炉に約1,000 ℃の高温空気を供給する役割である高温空気加熱器などにおける要素技術は十分な機能、性能の発揮が確認された。平成13年度において廃棄物について試験を実施するが、当初計画どおりの成果が得られれば、現代社会の大きな課題である廃棄物問題の解決に貢献できるものと期待されている。
 一方STAR-MEETシステムでは、本研究において新たに製作された熱分解炉、改質炉において、熱分解ガス中のタール分が一酸化炭素及び水素へ改質されることが確認できた。本件の成果は実用化に近いため、平成13年3月に科学技術振興事業団主体で新技術説明会(科学技術館、参加者約200人)を実施し、その特許、技術を公開した。この結果、今後は研究の成果を科学技術振興事業団のライセンス制度を通じて民間に実用化展開できる形となった。
4−3.総合的評価
 灰溶融ガス化をめざしたMEETシステムは、今後廃棄物処理の重要性が一段と高まる中で、その要請に応え得る実用化に近い研究であると評価される。また、資源量の多い石炭を高効率で利用しようという狙いも受け入れられると評価できる。今後の課題としては、実際の廃棄物での実際的なデータ蓄積が必要である。また、長時間運転による問題点の確認も十分に行う必要がある。一方STAR‐MEETシステムは、廃棄物の中小容量処理に貢献できる可能性がある。
 これらの研究課題は、基礎研究を越えて実用プラントに近づいている側面もあり、将来実用化を目指す別のスキームを検討する必要がある。

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