研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
セラピューティック煉瓦造住宅の住環境効果
2.研究代表者名
松藤 泰典 (九州大学大学院人間環境学研究科 教授)
3.研究概要
 この研究は、世界初の高耐震煉瓦造住宅の開発に関する研究である。この目的のため本研究は、耐久性、快適性、省エネルギー性、経済性などの優れた特徴を有する完成度の高い中空壁工法による湿式工法煉瓦造住宅(例:オーストラリアにおける煉瓦造住宅)を、その特徴をすべて生かしつつ、地震国である我が国に適用可能とするための技術的課題の解決を目指している。
 第1期実験棟(225 m2)では、建設コスト、総合的コストパフォーマンス、室内熱環境データ解析、その他の住環境効果などについて研究がなされてきた。乾式組積工法に関する構造耐力等の要素技術を集大成した、現在建設中の第2期実験棟では、耐震性及びリサイクル性を確保した高LCA評価などの環境低負荷の実現、我が国の気候風土に適した省エネ型の室内環境の実現、経済性などの具体的課題の解決を目指している。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 現在、研究成果を取り込んだ中空壁構造の乾式工法の第2期煉瓦造住宅(225 m2)を建設中である。第2期実験棟の完成によって、煉瓦造住宅の住環境評価のための条件が整備された。13年度以降は、第2期実験棟を用いて、特に乾式煉瓦造住宅の室内熱環境解析、心理的効果などを実証確認する予定である。
 現在までに要素技術開発として、DUP基礎理論構築とその実験確認、煉瓦部材の耐力実験、乾式煉瓦造住宅の構造設計、乾式工法用金物及び工具の開発、防食システムの開発、石炭灰を用いた煉瓦製造技術の開発などを進めてきた。また、煉瓦造住宅の快適性と省エネルギー性を両立させるため、中空壁の具体的な断熱防露技術について研究を進めるとともに、煉瓦造住宅の特徴を生かした室内熱環境制御システム(パッシブコントロール)の研究を行ってきた。
 煉瓦造住宅は長寿命を特徴とすることから、建設、運用、解体(廃棄)にかかるライフサイクル炭酸ガス排出量(LCCO2)とライフサイクルエネルギー(LCE)の観点からみた利点についても具体的に研究を進めてきた。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 これまでに第1期実験棟を建設し、建設コスト、室内熱環境データ解析から煉瓦造住宅のコストパフォーマンス、住環境効果などについて、コストの積算、LCCO2及びLCEの手法を用いたデータ解析などを通じてその効果を実証確認した。
 煉瓦造住宅は、我が国における住宅の寿命が約30年と極端に短い点を改良し、長寿命住宅を提案するものである。煉瓦造住宅の長寿命化についての隘路技術は、地震の多いわが国においては耐震強度の確保、また、我が国の高湿度に耐え得る乾式工法用金物の防食技術の確立である。耐震強度に関しては、DUP煉瓦造構造体の強度計算、静的及び動的荷重試験を実施し、十分な強度を有することを確認した。また防食システムに関しては、供試壁を製作し加速条件下で長期間確認試験を実施中であるが、現在のところ問題点はない。
 13年度以降については、DUP乾式煉瓦造住宅である第2期実験棟について、建設コスト、煉瓦組積工事、LCA解析などを行い、第1期実験棟との有意差を明らかにする予定である。また、空気循環式空気調和(パッシブコントロール)の効果について、実証確認を行う予定としている。さらに、各種要素開発を並行してすすめ、完成させる計画である。
4−3.総合的評価
 工法、建設コストの評価手法は実証確認を進めてきたが、乾式煉瓦造住宅での省エネ評価等については今後に残されている。この点について、第2期実験棟を用いて研究を進捗させる必要がある。また、日本の気候変化の中での適合性、その環境調査、とくに住人意識と健康評価については、ほとんど研究がなされていない。今後これらの面についても、第2期実験棟完成後に研究を進捗させる必要がある。

戻る