(2) 委託開発の流れ
大学等で生まれた研究成果であって、特に企業化が困難なものについて、企業等に開発費を支出して開発を委託します。開発が成功の場合、開発費の支出の返済を求めますが、開発不成功の場合は開発費の支出の10%分についてのみ返済を求め残りの90%について開発費の返済を求めないことにより開発リスクをJSTが負担します。開発が成功した新技術について、JSTは開発成果を実施する企業から実施料を徴収し、その2/3を新技術の所有者に配分します。また、応募課題の中から事前評価をもとに、委託開発課題としての採択ではないものの、フィージビリティ・スタディ(Feasibility Study:以下、「FS」という。)課題として採択させていただくことがあります。
〔開発課題・開発実施企業の審査〕
新技術の所有者及び開発実施企業から応募があった開発課題について、外部有識者が事前評価を行い、それらの評価結果を基に、プログラムディレクター(PD)・プログラムオフィサー(PO)は取りまとめを行い、委託開発に適していると認められる開発課題・開発実施企業を審査します。
◇ 「新技術の所有者」とは、新技術に係る特許権等(特許権(権利化された特許または出願中の特許)、実用新案権)の所有者(国公私立大学、高等専門学校、国立試験研究機関、公立試験研究機関、研究開発を行っている特殊法人、独立行政法人、公益法人、技術移転機関、または前記機関に所属する研究者)を指します。
〔開発委託〕
開発課題・開発実施企業の審査後、JSTは、新技術の所有者及び開発実施企業とそれぞれ契約を結んで開発を委託します。開発委託に先立って、JSTは、新技術の所有者及び開発実施企業と調整を行い、開発実施計画(開発規模、開発の方法、開発期間、開発資金等)、委託の条件(開発に係る特許等の取扱い、開発の成功・不成功に伴う開発費の返済方法等、実施料の対象製品と料率・配分、優先実施期間の設定、開発の成功・不成功に関する成否の認定基準等)を定めます。その後、開発実施企業に新技術に係る特許等を許諾できるように、新技術の所有者がJSTに当該特許等の実施権(専用実施権、あるいは範囲や期間を限定した再実施権付独占的通常実施権又はその予約)を設定することと、新技術の所有者への実施料の配分等をJSTと新技術の所有者との間で契約します。また、JSTと開発実施企業の間では、開発計画、委託の条件について、新技術開発委託契約で定めます。
◇ 成否の認定基準は、研究成果から見て開発期間中に達成が見込まれ、かつ企業で使用できる実用技術と見込まれる最低の技術水準として設定します。
◇ 開発委託にあたっては、開発実施企業が新技術に係る特許等を実施できるように、新技術の所有者からJSTに実施権(専用実施権、あるいは範囲や期間を限定した再実施権付独占的通常実施権又はその予約)を設定していただき、JSTより開発実施企業に通常実施権等を許諾します。
〔開発期間中〕
開発実施企業は、新技術開発委託契約書の開発実施計画に従って開発を実施していただきます。開発の進捗にあわせ、JSTは開発実施企業に開発費を支出します。
研究者(新技術の発明者)には、必要に応じて、開発実施企業に対して技術指導を行っていただきます。
◇ 「新技術の発明者」とは、新技術に係る特許等の発明者を指します。
開発期間中に生ずる新たな特許等については、「産業技術力強化法第19条」(日本版バイドール条項)に基づく取扱いが可能です。
開発実施計画を変更する必要が生じた場合には、新技術の所有者、開発実施企業及びJSTの協議の上、変更することができます。
5年以上の開発期間の課題については、開発の進捗状況や開発成果を把握し、これを基に適切な予算配分及び開発計画の見直しを行うために中間評価を実施します。
〔開発終了と成否の認定〕
開発の終了後、JSTは外部有識者が行う事後評価に基づき開発の成否を認定します。
開発の結果が成功の場合には、開発費は無利子で返済していただきます。
不成功の場合には、開発費の支出の10%分については返済を求めますが、残りの90%について開発費の返済は不要です。但し、開発費で取得した設備等はJSTへ引き渡していただくか、その物件の適正な評価額で開発実施企業に引き取っていただきます。
〔開発成果の実施〕
新技術に係る製品を製造・販売する際には、新技術開発成果実施契約を開発実施企業とJSTとが締結して売上高に応じた実施料を納めていただきます。
JSTは、その2/3を新技術の所有者に配分します。
開発実施企業の実施料の支払い期間は成果実施契約締結以降10年間です。当該期間終了後においても、開発した技術に係る特許等の知的財産権の実施権がJSTに設定される場合には、支払いの対象となります。
実施料の対象や料率、配分、優先実施期間の設定は、新技術の所有者と開発実施企業の合意に基づき、新技術開発委託契約で定めた内容で実施します。
開発成果は、内外の需要、市場規模、開発実施企業の供給能力等を勘案し、さらに、関係者の意見も考慮した上で他の企業に普及を図ることがあります。
〔FS〕
FSは、提案された新技術、及びその新技術に基づく企業化の可能性の調査・評価等を的確かつ迅速に行い、効率的・効果的な委託開発に資することを目的として実施するものです。
FSの実施終了後に、見直した委託開発実施計画を含むFS実施報告書を提出いただきます。その報告書等をもとに、POによる評価を行い、委託開発として適切な課題となれば、委託開発課題として採択されることになります。