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工場のIoTの現状

山田: 『日経ものづくり』の山田です。『日経ものづくり』はこんな表紙の雑誌なのですけれど、こんな表紙なのはいつものことじゃなくて、これはちょっといつもより相当かわいいと言われているのですが、いつもはもうちょっと無骨な感じです。工場のIoTは今どうなっているのですかという話はいろんなところで聞きます。ものすごく今話題にはなっているというか、皆さんの関心が出てきた。インダストリー4.0とかいう話が出てきたのはもう何年も前なのですけれど、日本だとようやくというイメージが僕の中ではあります。この間、11月の頭にJIMTOF、日本国際工作機械展というのがありまして。2年に1度の割と工作機械のイベントで、東京ビッグサイトのフロアを全部使って工作機械が1000台ぐらい、ダーって並ぶという。あまり関係のない人には関係がないのですが、関係のある人はすごく興奮するイベントなのです。これの主催者展示のパネルばかり並んでいるのですけれど、8ホールある全部の会場で、どこでどんな工作機械が動いているかという、これはデモです。主催者がこういうふうにやって、このフロアでこれだけ機械が動いてます、今は動いてます、今は止まってますとか、そういうのを見せるとかやってました。これはファナックさんという会社で、ロボットで有名なところです。ここがフィールドシステムという工作機械同士をつなぐプラットフォームみたいなのを去年から始めてまして、80台ぐらいが今回つながっていたと思います。これはファナックさんの画面のほうだけれど、やっぱりこういうふうにシステムでつないだものを見せていました。これ以外にエッジクロスとか、いくつかプラットフォームが乱立しているという、ちょっと別の問題もあるのですが、そういうのでつなごうという意識は今出てきてます。国内のちゃんとした会社というか、トップの企業はすごい勢いで始めてます。
これはダイキンの堺新工場といって、今年の6月に稼働したばっかりの、25年ぶりにダイキンさんは日本に工場を作ったのですけれど、その工場です。こんな部屋があるのです。これをよく見ていただくと、上のほうにモニターがずらっと並んでいて、みなが立ってます。これは工場の現状のリアルタイムの生産状態とかが全部画面で見えて、その中で立ち会議をしながらどういうふうに生産を変えていくかとか、そういうことを見る。彼らはIoTコックピットって言ってますけれど、こういう専用の部屋があって分析をしながらやっている。これもラインの中なのですけれど、昔はこんなのはありえなかったのですけれど、これはパソコンというかモニターが置いてあるのです。赤丸下のほうにちょっと緑のパレットのところがありますけれど、これはICカードが置いてあって、このICカードでここからどんなもの、さっきお弁当のところでマスカスタマイゼーションという話がありましたけれど、これは業務用のエアコンの工場なのですが、ここでは1個1個全部違う仕様で作ってます。だから、どういうふうに作らなきゃいけないかというのが、このICカード経由で入っていて、このモニターに作業員の方に次はこれですよ、次はこれですよ、こういう作業をしましょうというのが出る。これはラインの全部で動いていて、当然どこに何が今あって、どういう状態でどこまで組み立てられたかというのを、この工場では一目で分かるようになっている。さらに言うと、ダイキンさんはこれを全世界に今広げていて、全世界の工場でデータの取り方を統一して、どこの工場の生産性が何%上がって、何%下がってというのがほぼリアルタイムに見えるところまできています。かなりこういうところは大企業が増えてます。
パナソニックの新潟工場というこれも新しい工場です。ダイキンさんとやっていることは同じで、モニターの全部にそれぞれの今の生産状況のデータを取ったものを見せながら、分析しながらやっているというような状況です。
うちの雑誌でアンケートを毎月取っていて、その中でテーマを予知保全というふうにちょっと絞ったのです。IoTは必要ですかという質問で、93.4%の人が必要と言っています。これが今の日本の、うちの読者というのは基本的には日本のものづくり産業のライン設計とか商品とかそういうところにいらっしゃる方、現場にいらっしゃる方だと思うので、大体こういうふうに皆さんは思っておられるのです。しかし、やっているの、と聞くと3割ぐらいやってない人がいる。これが現状を割と表してるか、というふうに思うのです。こういうのをいれるためにどうしたらいいのかと言ったら、データが取れないというのが大きな課題。お金がないとか、データが取れないというのが大きな課題になっているのです。予知保全のシステム管理などにコストが掛かる恐れがあって、そのお金が出ないというのが大体の理由。もう1つ、これも機械を変えなきゃいけない、もしくは機械からデータが取れませんというのが割と大きな課題になっています。大体古い機械を長いこと、工作機械、さっき言ったJIMTOF(日本国際工作機械見本市)の会場などに置いてあるものは軽く2000万円とか、下手をすると1台が1億円みたいなものがずらっと並んでるような世界なので、やっぱりどこの工場も機械を入れ替えるというのはすごい大きな投資になるので、入れたものはやっぱり10年、20年は使うわけです。そうすると、20年前の機械、10年前の機械は平気でまだ現役でばりばりで物を作っています。そういうところからどうやってデータを取るかみたいなこと。特に、さっきのダイキンさんとかパナソニックさんみたいに、そこそこお金がある大企業は工場のラインを一気に一新してとか、データを取る機械を並べてとか、できるのですけれど、小さい会社はそういうことはなかなかできない。
日本のものづくりを支えている中小企業の多くというのは、そこで、ものすごく悩んでいることが多いです。古い機械に後付けでやるものをちゃんとした会社から買うと結構高くて、なかなか、お金が、手が出ない。最近ちょっとはやっているのが、安いIoTみたいな話で。割とこの会社は有名なのですけれど、旭鉄工という会社の事例です。右下のところの工作機械に、止まっていると赤くて、何かがおかしくなっていると黄色く点滅して、下がちゃんと動いているとブルーになるという、これはパトライトとかそういう名前で大体の工作機械に付いているのです。そこに秋葉原で買ってきた光センサーを付けて、緑が付いてたら動いている、赤が付いたら止まっているというのを取って、その下にある家庭用の無線LAN機器で工場内を飛ばしてデータを集めるというようなことをやっていたりします。この会社は実はこういう手法で20%ぐらい生産性が上がって、あとはクラウドのデータ収集システムとか分析システムなども一緒に頑張って作って活用して、今、それを外販するところまでいってます。この会社の社長さんはトヨタのテストドライバーを30年やったというすごい不思議な経歴の方なのですが、生産技術とかもすごく詳しくて、この会社はトヨタの金属部品の下請け工場なのですが、今非常に注目されている会社です。
これはちょっと別の会社ですけれど、これも小さい樹脂部品を作るような会社なのです。これはプレス機の稼働状態を調べるために、右側をよく見てもらえるとビニールのところに入ってるやつ、これはラズベリーパイです。5000円のパソコン、こういうのを使って半分自作で電流センサーのところに電流センサーをクランプで付けて、電流が流れたら動いているというのをただ取るだけ。でも、こういう取り組みでもやっぱり生産性はみなすごく上がる。工場の機械って意外にみな止まってるんだなあということが、社長さんは、皆さんおっしゃるらしいのですけれど、そういうことが分かるだけでもまずはいいというのが正直な現状だそうです。喜連川先生が作ったデータベースとか、原田先生たち主導で作った無線のデータ収集システムとかが活躍するのは、実はこれから。ようやくみながデータを取ったことによって状況が分かるのが、下のほうまで広がっていって、やらなきゃまずいというふうになっている。今から日本は少子高齢化が進みますから、そういうことに関しても対応策という意味でも生産性を上げるのが、今のテーマなのです。なので、そのへんの動きというのはこれから急速に進むかなというふうに思っています、以上です。
河井: ありがとうございます。これって、さっきのImPACTのプロジェクトの中でやってるような、例えばマスカスタマイゼーションのスケジューリングみたいな話とか、あるいは異物が入ってきたときにそれを見つけるみたいなこととか、そこまでは多分やってることはないと思うのですけれど、意識している。例えばダイキンさんみたいなところとか、そこまでの意識を持っていたりするものなのですか。
山田: パナソニックさんとかダイキンさんは、そのくらいのところまで手を出しています。トップの工場はみながやっていると思ってもいいと思います。パナソニックさんは、画像認識で良品と不良品を識別するというのが、さきほどの新潟の工場には入ってます。良品率、不良品率とかも遡って、それがなぜそうなったかという分析のところまでも、いわゆるビッグデータ解析的なことやデータ分析的なことも含めて、戦略的に作っている工場で。僕らの雑誌というかメディアのチームのところには、こういう工場を作りましたというプレスリリースというか取材の案内というか、こういうのを作ったのでぜひ取材にきてくださいみたいなのが、ほぼ毎月何通も来ます。つまり逆に言うと、トップの企業というのは今ちょうど実装して成果も出始めて、次のことも考えるとみんなにアピールしたいという肝心のタイミングになってるのかなあと思うので。ImPACTの研究で、これから実装する関心というのはすごく高いんじゃないかなというふうに思いました。
河井: そういう意味だと、かなり近づいてきてはいるということなのですかね、方向性としては。米田さん、これは実はそこまでいくのだけれど、まだもう少し、こういうところは、本当は難しい、みたいなことは何かございますか?
米田: まさに今の話をしますけれども、多くの工場はやっぱりまだ独立だったり、ネットワークがつながってないところもあったりします。セキュリティに関して言うと、保守員の人が一人で入ってきてUSBを使うときにそこから感染するとか、それをどうしようというのが今の現場のレベルです。それを保守員が現場に来てUSBから感染するというのを止めるために、リモートからオンラインで入れたらばもっと安全になるかというと、今度はリモートからの通信を許さなければならないので、ネットワークのセキュリティが非常に重要になるのです。そのネットワークのセキュリティをきっちりやることで、複数のベンダーが自分の機器だけを操作できるように遠隔の保守ができるようにしようというのが、今インダストリー4.0で動き出したところです。マルウェアが広がらないようにからネットワークをセグメントするのではなく、費用のかかる保守をリモートから安全にやるためネットワークのセグメントをするという発想です。そうすると、セキュリティにコストをかけても保守のコストが下がり費用対効果がでてくるのです。現場で起きていることを把握することももちろん大事ですが、先に目を向けていないとインダストリー4.0の人と話ができなくなるのです。
河井: 分かりました。ちょっと話を切り替えて今度はヘルスケアのほうにいきますね。小谷さん、ヘルスケアのほうで実際今起こっていること、というのをちょっと。