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プロジェクトの概要

研究総括挨拶

about_01.jpg多細胞生物では、個々の細胞が、近距離あるいは遠距離にある他の細胞とコミュニケーションをとりながら個体全体を維持しています。こうした個と全体を調和する細胞間コミュニケーションを、「ホロニックコミュニケーション」と呼びます。例えば、トカゲの尻尾が再生する場合、適切な形やサイズに再生します。これは再生中の個々の細胞がホロニックコミュニケーションにより自分の役割や位置を知るためと解釈できます。これまでの生物学において、こうした細胞間のコミュニケーションを担う細胞外シグナリング分子が多数同定されてきました。しかし、それらの分子が、生きた多細胞組織において実際にどのように挙動し、どのように機能しているのか、直接的に観察および操作解析することは困難です。モルフォゲンと称される分子を例にとると、これまでの研究では、モルフォゲンが「濃度勾配を作って形態形成に機能している」という時に、モルフォゲンの分布がどのように刻々と変化し、そうした分布や分布の変化が形態形成におけるモルフォゲンの機能に対していかに重要であるのかについて、完全に理解しているとは言い難い状況です。

私は長年、顕微鏡下にある多細胞生物の個々の細胞や分子を、「自由自在に操作し、解析する」ことを夢見て研究を進めてきました。また、こうした生物学を、「ライブセル生物学」と位置付けて、ライブイメージングや顕微細胞操作による研究を展開してきました。生きた細胞を用いた解析に、独自の顕微操作技術が加わると、時として大きな突破口が開きます。例えば、植物分野において140年間も探索されてきた花粉管誘引物質を、助細胞が分泌する複数のペプチドLUREとして同定することに成功しましたが、この成功にはレーザーマイクロインジェクターという装置の開発が深く関わっています。これらの成功から、私がこれまでコツコツと開発してきたような技術を飛躍的に発展させ、顕微鏡下でまさに自由自在に細胞や分子を操作できるようになった時に、革新的なライブセル生物学が展開できると考えました。それにより、これまで解析の難しかったホロニックコミュニケーションに挑むことができると考えました。課題名にあるホロニクスとは、個と全体の関係性を研究する学術分野のことです。

本ERATOプロジェクトでは、細胞外シグナリング分子の組織内での可視化やその操作解析、個々の細胞の応答や新規のシグナリング分子の同定、そしてこれらの解析に必須なデバイスの技術開発などを中心に研究を進めます。これにより、植物をモデルとして、配偶体形成や初期発生を含む様々な発生現象や、受粉時の動的で複雑な細胞間シグナリングなど、ホロニックコミュニケーションが関わる興味深い現象の解明を目指します。このために、光技術、工学技術、そしてシングルセルオミクスの3つのグループを設置し、これらのグループが三位一体となって研究を展開することにより、ホロニックコミュニケーションに関する新しい生物学のフロンティアが切り拓かれることが期待されます。

光技術グループ

about_02.jpg光技術グループでは、植物の卵装置形成および胚発生過程におけるホロニックコミュニケーションの担い手であろう植物ホルモンであるオーキシン、ペプチド性リガンド、small RNAの生きたままの細胞での可視化に取り組みます。また、二光子レーザーや赤外レーザーを用いたシグナリング分子の発現制御といった光操作、顕微鏡下におけるマイクロインジェクションによる刺激応答解析といった高精度な顕微鏡技術を駆使することによって、長時間にわたる卵装置形成および胚発生過程における、ホロニックコミュニケーションのメカニズム解明に寄与します。

ナノ工学グループ

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ナノ工学グループでは、細胞やシグナリング分子の解析手段としてMEMS等による微細加工デバイス、マイクロ流体デバイス、1分子操作・計測技術を利用した自在操作技術の確立とそれらの植物細胞生理学への導入により、個としての細胞と周囲全体の調和を保つホロニックコミュニケーションを真に理解することを目指します。

具体的には、植物の生殖や胚発生過程における細胞間コミュニケーションを生きたまま観察できる技術を確立するために、in vivo卵装置形成および胚発生を再現する組織培養・観察系の構築を行います。さらに、細胞レベルだけでなく、シグナリング分子などの1分子レベルでの操作・計測技術を開発し、シングルセルオミクスの実現を目指します。また、このような細胞レベルでのホロニックコミュニケーションの研究にとどまらず、シグナリング分子レベルでの作用メカニズムを明らかにするために、機械的細胞・分子操作やマイクロインジェクションなどによる物質刺激とその応答を測定できるような技術とデバイス開発を行います。例えば、マイクロチャネル内に花粉管をトラップし、花粉管誘引物質であるLUREペプチドを与え、その花粉管伸長方向に与える影響を分子レベルで定量的に観察するための実験系の開発なども行っています。

シングルセルオミクスグループ

about_04.jpgシングルセルオミクスグループでは細胞ごとの全mRNAやタンパク質の定量を目標にしています。ある細胞で産生されたシグナル物質が組織の中を伝わり、個々の細胞にどのような変化をもたらすのか、個々の細胞の変化がどのような全体の変化になるのかを解析します。

この目的のために次世代型シーケンサー(Genome Analyzer)や、バイオインフォマティクスを用いて研究を行います。

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