濵口 道成 先生インタビュー

濵口 道成 先生(名古屋大学総長 医学系研究科)

女性研究者を取り巻く環境や活躍推進のための方策、及びご自身が総長を務められている名古屋大学の取り組みについて、名古屋大学総長の濵口道成先生(※)にお話を伺いました。(※2014年取材当時)

理系女子高生の進路選択について

 日本の女性は35歳頃に就業が減り、その仕事についてもパート職が増えます。医学部は、卒業後に自分のライフプランに合わせて生活していけるので女性の志望者が多いですね。名古屋大学医学部の場合、関連病院にお願いし、女性医師が35才の子育てに忙しい時期、平日の昼間だけ、土日の当直は無い常勤職を作りました。このような試みで、年収は下がっても、現場感覚を失わないよう、仕事を継続できる環境作りに努めています。

 工学系で、女性の需要が増えていますが、工学を希望する女性があまりありません。これは、高校の先生の進路指導の影響もあると思います。一方で、日本の人口が減っているにもかかわらず、医学部の定員を増やしすぎていると感じています。幅広くイノベーションを実現するためには、限られた人数の優秀な理系人材の活用について国のグランドデザインが必要ではないでしょうか。適切なロールモデルの存在も重要ですし、女子大に工学部を作るというのも1つのアイディアだと思います。

女性のグローバル育成について

 現在海外にいる24万人の日本人研究者の約6割が女性ですが、海外の方が自由に研究できるため、日本に帰ってくるのが難しいという事情もあるようです。ミャンマー、タイでは女性の教授が大変多いことに驚きます。日本は、アジア諸国と比べ女性の支援が遅れています。そこで、アジアに焦点を当て、女性リーダーを養成する「ウエル・ビーイング・イン・アジア」という女性大学院生のためのリーディングプログラムを始めました。また、YLC(Young Leader Cultivation)プログラムという本学の若手研究者のためのプログラムでは、本学で博士号を取って海外に行くことを条件に、毎年10名程度採択していますが、女性枠を設定したところ女性の応募が飛躍的に増えました。女性には潜在的にチャレンジしたいという気持ちはありますので、そういった意欲を後押しする支援が必要だと思います。

 名古屋大学は「女性PI採用プログラム」を積極的に進めています。国際公募で、分野を問わず、女性のPIを募集し、能力評価のみで採用しています。優秀な人材が集まり、手応えを感じています。また、こういった方の仕事の環境をしっかり整えることも重要で、学童保育等あとで述べる活動を大切にしています。

マネージメントにおける女性活用について

 現在、名古屋大学には女性の理事がいませんが、いきなり理事にするのではなく、まず学部長を経験し、その次に理事になるというように、段階を経て登用する流れが必要だと思います。男女共同参画担当の副総長など、職務を限定して女性を登用することも検討しています。女性の登用は「成功体験」が今は大切だと思います。

名古屋大学での環境整備について

 昔は育児を地域社会・大家族全体で見ていたのに、今は両親のみが背負っています。そのような状況で、一流の研究者を育てるためには、育児休暇だけではなく、できるだけ休まなくてすむような環境の整備、例えば病児、夜間、学童の保育がとても重要です。本学の保育所では20年前から、7:30から21:00までの長時間保育を行ってきました。学童保育に関しても、大学の近くの学校なら、提携しているタクシーが、子供を保育所まで連れて来ますので、両親は昼間の間、仕事に専念できます。学内に授乳や体調不良時の一時休憩など、女性だけが入れる部屋も作りました。単身赴任の女性研究者が、お互いに支えあえるシェアハウスを作る検討も始まっています。

 そのような取り組みなどの結果として、本学において女性研究者は着実に増えてきています。最近、名古屋大学における女性研究者、職員、院生たちの活躍を紹介する「名古屋大学が取り組む女性力の未来」という冊子を作りました。今後も女性研究者・職員・院生の活躍を、全学を挙げて支援していきたいと思います。