岡部 聡 | 水循環の基盤となる革新的水処理システムの創出 |
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恩田 裕一 | 荒廃人工林の管理による流量増加と河川環境の改善を図る革新的な技術の開発 |
鼎 信次郎 | 世界の持続可能な水利用の長期ビジョン作成 |
田中 宏明 | 21世紀型都市水循環系の構築のための水再生技術の開発と評価 |
中尾 真一 | 地域水資源利用システムを構築するためのIntegrated Intelligent Satellite System(IISS)の適用 |
藤原 拓 | 気候変動を考慮した農業地域の面的水管理・カスケード型資源循環システムの構築 |
古米 弘明 | 気候変動に適応した調和型都市圏水利用システムの開発 |
水循環の基盤となる革新的水処理システムの創出
研究代表者
- 岡部 聡
- (北海道大学 大学院工学研究院 環境創生工学部門 教授)
共同研究者
- 山崎 弘太郎
- (大阪市水道局 浄水統括担当部 部長)
- 小林 健一
- (阪神水道企業団 技術部 部長)
- 大和 信大
- (メタウォーター株式会社 R&Dセンター 環境システム開発部 水処理プロセス開発グループ 研究開発員)
地球温暖化など気候変動による海面上昇や局地的な洪水の発生、加えて産業発展、都市化、人口増加などにより、世界的な水不足や水質・水源汚染が進行しています。このような状況下においても、安全・安心な水の安定的供給が強く求められています。安全・安心な水を安定的に供給するためには、従来のような一過型の水利用から脱却し、多様な水資源を有効活用することを可能にする自律・分散型の水循環システムを構築することが重要となります。この新たな水循環システム構築の鍵は、水の量的管理から質的管理へ転換することです。例えば、水需要の大部分を占める非飲用系の用水(工場用水、修景用水、親水用水など)には、高度に処理した下・廃水(再利用水)を用いることより対応します。
このような背景のもと、本プロジェクトは、「膜分離技術」と「バイオテクノロジー」を積極的に活用・融合し,革新的水処理技術の創出及び処理水(再生水)の迅速かつ正確な安全性評価を可能とする新規技術の開発・整備を行うことを目指します。具体的には、水循環システム構築に必須である自律・分散型の先端的水処理技術の開発、および水の安全性評価・管理手法の開発を行います。先端的水処理技術の開発に関しては、原水水質や目的に応じて、膜分離技術と既存の各種水処理プロセスを組合せ、処理全体の省エネルギー化、および高効率化を達成します。また、水の安全性評価・管理手法の開発に関しては、微量汚染化学物質リスクと病原微生物(ウイルス、細菌)リスクを対象とし、トキシコゲノミクスを用いた新規多指標型毒性評価法の開発や腸管系ウイルスの感染性評価法の確立を目指します。加えて、実証プラントを運転し、新規水循環システムとしての妥当性を総合的に検討し社会への適用を目指します。
本プロジェクトで提案する先端的下水処理システムの処理水は,既存の活性汚泥法と比較すると水質面で飛躍的に向上したものとなります。また、省エネルギー化,低コスト化,高効率化,及びコンパクト化が達成されれば,下・廃水処理システムの自律・分散型配置が可能となり,公共用水域の水質改善に大きく寄与するとともに,様々な用途での水の再利用が可能となります。また、水の安全性評価に関しては、毒性が未知の化学物質を含め多種多様の微量汚染化学物質について、個別の健康リスク評価を行うことには限界があります。本プロジェクトにより多くの化学物質の安全性評価を一括して行うことができる新規多指標型バイオアッセイが開発できれば、総合指標による水の安全性評価・管理手法の導入が可能となります。
本プロジェクトの成果の社会的波及効果として、従来の下水道などの大きなインフラ建設を不要とするため,我が国よりも水資源問題がより深刻な諸外国(特に新興国や発展途上国)にも適用できます。また、我が国の分離膜技術を用いた水処理技術は世界のトップレベルにあり、日本企業が分離膜の世界市場の約7割を占めています。提案する新規水循環システムや水の安全性評価技術が次世代において世界で広く取り入れられれば、2025年には100兆円にも達するとも言われる水ビジネスの巨大市場において、日本の国際競争を飛躍的に高めることができると期待されます。
(研究期間は平成21年10月~平成25年3月)