さきがけ 研究者

研究課題名

相界面の動的構造観察のための波長分散型表面X線回折計の開発と応用

プロフィール

白澤 徹郎
白澤 徹郎
Tetsuroh Shirasawa

1977年 鹿児島県生まれ。2006年 九州大学大学院 博士課程修了(理学)。2006年 日本学術振興会 特別研究員(PD)。2007年 東京大学物性研究所 助教、2016年 産業技術総合研究所物質計測標準研究部門 主任研究員、現在に至る。
研究分野:表面科学、表面回折学
趣味:音楽鑑賞、野球

  • ※プロフィールは、終了時点のものです。

研究内容紹介

物質の構造を理解することは、物性や機能を理解するうえで最も基本的で重要なテーマです。多くのエネルギー材料において、機能が発現するのは埋もれた相界面であり、また直接の反応場ではない場合でも、相界面の品質が性能のボトルネックとなることが多いため、埋もれた相界面の構造を正確に評価する必要があります。さらに時間軸にまで目を向けると、電極反応、光や電場等の外部刺激応答、触媒反応、劣化過程など、デバイス特性を理解する上で重要なものがいくつもあり、埋もれた相界面構造の時間変化をその場追跡したいという要望は、多くの研究開発の場に潜在的に存在しています。
 物質内部の構造解明には、X線回折法が強力な方法として君臨してきました。これは相界面構造においても同様で、相界面観察に特化した方法である表面X線回折法は、様々な環境下における埋もれた相界面の構造を非破壊的に原子スケールからnmスケールまで解明することができる強力な方法として用いられてきました。しかし、相界面からの微弱な散乱X 線を試料や検出器をスキャンしながら広範囲計測する必要があるため、最新の放射光光源を用いても測定に時間がかかり、動的構造変化への利用は限定的でした。
 本研究では、従来法の1000倍程度の高速測定を可能にする新しい表面X 線回折計を開発し、相界面の動的構造変化の観察を可能にします。この方法では、従来法で用いられてきた単色X 線ではなく、波長分散したX 線(いわば虹色X線)を用いることで、試料や検出器を一切動かさずに、相界面からの広範囲の散乱X線分布を同時計測します。原子配列構造だけではなく、従来法では莫大な時間を要する3次元逆空間マッピングの高速計測法の開発によりnmスケールの分域構造ダイナミクスの観察を可能にし、相界面構造をマルチスケールに時分割解析できる計測法として確立させます。この新しい計測法を電極材料等の相界面反応や、メモリ材料のナノ秒スケール高速スイッチング機構の解明に応用し、エネルギー高効率利用に資する材料開発に役立てます。

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