さきがけ 研究者

研究課題名

界面微細センサ開発とマルチスケール数値解析による熱・物質輸送-電気化学反応の連成現象の解明と最適界面構造設計

プロフィール

荒木 拓人
荒木 拓人
Takuto Araki

1975年 静岡県浜松市生まれ。2003年 京都大学大学院工学研究科 修了、博士(工学)。2003年 カリフォルニア大学ロサンゼルス校 日本学術振興会 特別研究員。2004年 豊橋技術科学大学電気電子工学系 助手。2007年 横浜国立大学大学院工学研究院 准教授、現在に至る。
研究分野:伝熱工学、物質輸送、燃料電池
趣味:サッカー、水泳、バイク整備・ツーリング、日曜大工

  • ※プロフィールは、終了時点のものです。

研究内容紹介

固体高分子形燃料電池(PEFC)は、クリーンで高効率なため次世代の自動車用、家庭用分散電源として期待されています。しかし、このPEFCの触媒には高価な白金が主に用いられており、将来のさらなる普及のためにはこの触媒の使用量の削減が必要です。そのためには、とくにカソード側の触媒反応サイトへ活物質である酸素や水素イオンさらには電子をスムーズに届け、触媒性能を限界まで引き出す最適な界面構造設計技術が求められています。そこで、本プロジェクトでは触媒層近傍におけるナノメートルからマイクロメートルスケールの相界面で生じている熱・物質輸送と電気化学反応の連成現象、特に運転条件ごとの律速段階を整理し、最適な界面構造設計へつなげることを目的としました。
 特に触媒周辺では、液水・酸素・プロトンなどの化学種輸送と温度や電子輸送、そして反応分布がお互いに密接に関連しているため、触媒層反応場の構造の最適化のためにはそれぞれの現象および相互作用も明らかにする必要があります。ところが、触媒層自体が10μm 程度と極めて薄く、代表長さである空孔径も10~100nmオーダーと極めて小さいため、触媒層の内部の現象を実運転下(in situ)で直接測定できる技術はほとんどありませんでした。そこで、1つめの具体的な目標を「触媒層近傍におけるサブマイクロメートルスケールの現象(温度、濃度)をセンシングできるナノ・マイクロセンサを開発すること」としています。
 さらに、これら触媒層近傍の現象は触媒層の構成部材である固相やナノ孔にある液相、そして気相と、それぞれの相界面といったミクロ構造だけでなく、リブやチャネル、GDL中の液滴、MPLのクラックといった、1μmから1mmスケールのより大きな構造の影響も強く受けます。それらのマルチスケールの現象を明らかにするためには、実験からだけでなく数値解析の併用が有効です。そこで、もう一つの具体的な目標を「触媒層ナノ・マイクロ構造での液水・プロトン・電子・熱輸送の連成現象を対象とする触媒層モデルと、より大きな構造であるマイクロポーラス層(MPL)や拡散層基材を扱う連続体モデルを同時に扱うマルチスケール数値解析を行うこと。」としました。
 これらの測定と数値解析の両面から触媒層付近の相界面に存在する複雑な連成現象を明らかにし、最適界面構造設計につなげることで、未来のエネルギー問題の解決の一助となることを目指しています。

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