さきがけ 研究者

研究課題名

金属-強誘電体界面で実現する新形態触媒デザイン

プロフィール

狩野 旬
狩野 旬
Jun Kano

1975年 愛知県生まれ。1999年 北海道大学理学部数学科 卒業、2004年 同大学院理学研究科物理学専攻 博士課程修了、博士(理学)。2004年 筑波大学大学院数理物質科学研究科 助手。2006年 同助教(任期無)。2010年 岡山大学大学院自然科学研究科 講師(任期有)、2014年 同准教授、現在に至る。
研究分野:物性物理学、触媒化学
趣味:芸術(映画・服飾・漫画)、ダイエット、食事

  • ※プロフィールは、終了時点のものです。

研究内容紹介

私は今まで強誘電体科学の発展を促す主題を追求してきました。強誘電体は、コンデンサーやアクチュエーター、電気光学素子や非線形光学素子に用いられ、現在産業に必須の材料です。これら強誘電体の優れた特性は、空間反転対称性を破るような陽イオンと陰イオンの相対変位により実現することが20世紀に解明されてきました。
 しかし、21世紀より誘電体科学は新しい潮流を迎えつつあるようです。たとえば電気分極形成の起源理解を更に深めた結果、電子波動関数の複素数性に起因するベリー位相解釈が定着し始めています。あるいは、誘電体のバンド構造を考察することから新しい光物性やメモリー素子が提案されてきています。またさらに、電子相関性を起源とした電気分極などが見出されつつあります。私はこれらを俯瞰し、強誘電体科学が新しいパラダイムを迎えたと捉えています。
 このような時代の中で私は、強誘電体の電子論的解釈による触媒設計開発というテーマを、世界の誰よりも先駆けて実現したいと願い研究をすすめています。これは強誘電体の持つ物性をより広げる科学分野であるとともに、誘電体科学の新パラダイムを支え、同時にエネルギー利用の飛躍的な高効率化が実現できる新テーマになりうるはずです。
 この研究は、旧来の強誘電体のサイズ効果の研究過程において、強誘電体表面に4ナノメートルという極小サイズの卑金属ナノ粒子が酸化せずに界面接合していること、そしてこの金属ナノ粒子には貴金属触媒と同様の炭化水素から水素ガス生成を示す触媒効果があることの発見に端を発しています。この研究の推進により、排ガス除去や燃料電池など水素エネルギー利用技術を、非貴金属で実現するものだと期待しています。
 この研究では、金属-強誘電体が界面接合した系において、新形態触媒をデザインする研究を行います。強誘電体は自発分極を有しており、常誘電相に特有な電子状態により、接触するガス等の酸化還元反応を促進させることが可能となります。金属と強誘電体の選択により、期待する触媒作用に最適な電子状態を実現し、適材適所の触媒デザインを目指します。

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