さきがけ 研究者

研究課題名

リチウムイオン電池電極材料のセラミックス二相境界における物質移動の動力学

プロフィール

中山 将伸
中山 将伸
Masanobu Nakayama

1975年 東京都生まれ。2004年 東京工業大学大学院 博士課程修了、博士(工学)、2004年 東京工業大学 助教を経て、2009年5月より名古屋工業大学 准教授、現在に至る。その間、1997年 信越化学工業(株)勤務、2004年 米国マサチューセッツ工科大学 客員研究員。
研究分野:無機固体化学、電気化学、計算材料科学
趣味:読書、海外旅行

  • ※プロフィールは、終了時点のものです。

研究内容紹介

リチウムイオン電池は1991年に日本で初めて商品化された充電池で、重量当たりのエネルギー容量が大きいという特徴があります。その結果、携帯電話やモバイル機器の電源として広く普及し、私たちの生活スタイルを大きく変化するに至りました。現在ではエネルギー・環境問題の切り札となる電気自動車の電源として、更なる高性能化が望まれています。
 特に、電池の電極や電解質材料としてセラミックス(酸化物)材料開発が次世代電池のカギとして注目されています。セラミックス材料は不燃性であることから安全性の観点で圧倒的に優位な一方、その「静かな固体」としてのイメージから、材料内でのリチウムイオン輸送能に乏しいと考えられます。しかし、材料中におけるリチウムイオン輸送能は、電池の高出力化と高効率エネルギー変換には必須の特性であるため、この分野のブレイクスルーが期待されています。
 本研究では、高速反応として注目される二相共存系のリチウムイオン電池電極反応をモデル反応として着目し、その反応機構を様々なサイズの視点から解明することを目指しています。二相共存反応においては、高速反応が可能であるという応用的・工学的興味がある一方、従来のイオンの輸送を記述する拡散方程式をそのまま適用することができないという基礎研究面での課題もあります。また、材料内部のイオンの輸送だけではなく、電極と電解質などの2つの異なるセラミックス相界面におけるイオン輸送についても本質的に機構解明しなければなりません。
 このような課題を解決するために、計算と実験の二つのアプローチから研究を展開します。具体的には、量子力学に基づく第一原理計算をマルチスケール化する計算技術によって、二相界面構造を再現し、界面におけるリチウムイオンの化学ポテンシャル変化を可視化します。また電気化学測定による界面移動速度の実験的定量化を経て、界面の移動現象を電子・格子スケールから粒子スケールの視点までシームレスにつなぐ反応動力学の体系を構築することを展望しています。

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