さきがけ 研究者

研究課題名

ナノ構造界面を利用した環境親和型熱電半導体の創成

プロフィール

塩見 淳一郎
塩見 淳一郎
Junichiro Shiomi

2004年 スウェーデン王立工科大、PhD(in Mechanics)。2004年~2007年 日本学術振興会 特別研究員。2007年 東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻 助教、2008年 同講師、2010年~現在 同准教授。2010年~2011年 マサチューセッツ工科大学 客員研究員。
研究テーマ:熱電変換材料のフォノン・電子輸送、液滴の動的濡れ現象、ナノ空間内の低次元流れ、炭素ナノ材料の熱物性、表面張力流の不安定性
専門分野:分子熱工学、界面流体力学、非線形力学
趣味:水泳、現代アート
URL:http://www.phonon.t.u-tokyo.ac.jp/

  • ※プロフィールは、終了時点のものです。

研究内容紹介

塩見 淳一郎

天然資源より得られるエネルギーの大半は排熱として無駄になっており、持続的社会の実現に向けては、熱エネルギーの再利用が大きな課題です。日本が技術を誇る熱電変換材料はその解決に貢献し得ますが、エネルギー変換効率と費用対効果が低いことが問題となっています。そこで本研究では、スケールアップ性及び合成の簡易性を念頭に、ナノ結晶構造がランダムに分布・配向したナノ構造化熱電変換素子の開発を行います。これによって、ナノ構造化材料内に豊富に存在する原子スケール界面でのフォノンや電子の選択的界散乱・透過を利用して、熱電変換効率の大幅な向上を目指します。また、モジュール化に向けて、材料のメタライゼーションによって生じる界面熱抵抗などの集積環境における抵抗の低減も図ります。なお、材料開発においては、産業への展開を念頭に、埋蔵量が多く、安全で、費用対効果の高いバルク材料の開発に主眼を置きます。
 これらの実現に向けて、原子レベルの物理から素子性能までを統一的に取り扱う熱電変換材料の性能予測ツールを構築し、原理原則に基づいた材料設計を行います。具体的には、これまでに開発してきた任意の単結晶材料のフォノン輸送特性を第一原理に基づいて計算する手法を発展させて、界面におけるフォノン輸送も取り扱えるようにします。さらに、それらを入力として、フォノンのボルツマン輸送方程式に展開することで、電子→原子→粒子モデル→連続体をシームレスに連成したマルチスケール解析を実現し、ナノ構造化材料内の多岐に渡るスケールの輸送特性を評価します。計算方法が第一原理に基づくことで、電子状態計算より得られる電気伝導率や熱起電力と一貫性のある解析が可能となります。
 以上のように、従来の経験的な開発手法に代わって、原理原則に基づく開発手法の有用性を示すことで、材料の探索範囲を広げ、新規熱電材料の創成を狙います。

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