23. 心配性の人のナノテク?

 
1) 半導体の小さくなり方は、インテルの創始者の一人のムーアさんの経験則3年で4倍に集積度が上がるというトレンドで先を考えて備えをしているが、加工設備の投資金額も大きくなりすぎて連携や事業の選別などが起こり始めてる。世界の90%のDRAMを生産した日本の半導体はとうとう合体した一社になってしまった。インテルは強気であるがトップダウンはそろそろ限界が見えてくるという意見のほうが優勢だ。単電子デバイスや、自己組織化など研究は盛んだけれど、工業的につなぎがうまくいかないと、例えばパソコンの能力向上が鈍ってしまう。そうなると光で高速ネットを組んでも気軽に動画ユビキタスなんてわけには行かなくなる。どうもソフトはハードにカバーされてるのが実態だと言う話もあるから、ハードの進歩が遅くなったら、ソフトがハードをカバーしてくれて思いがけない世界がのぞけるようにでもなら無い限り、展望がひらけないのかも?

2) 生命科学をナノテクノロジーがしっかり支えていくことで、医療現場に革命が起こるのは歓迎するが、いいことばかりではなくて、生命倫理などの深刻な問題を地球規模のコンセンサスで決着していかないと大変な事態も予想されるのでは。いくつも心配事はあるけど、全員がギネスに載るような超高齢化社会になったときにその時代の社会システムは今よりもっと歪を内包することになるのでは?地球の病気に対してもナノテクノロジーが活躍するようだけど、国家間の格差はあまりにも大きくて、根本的な手を打たないと、限られた不幸を救うだけで、全体の幸福度が高まるのかな。

3) 量子の世界を制御する技術がナノテクノロジーとも言える。量子の世界がナノの寸法を超えて、マクロな世界に現れる、レーザーや、超伝導のような現象もあることや、化学系の研究者からは、昔からナノの世界で仕事をしてきたのに、この騒ぎは何だ!?みたいな発言もあって混乱が起こる。さらに史上最大規模の産業革命に貢献するという話や、何も新しい話は無いという冷たい見方もあって、ナノに期待している人が多いのは間違いないけど、反面わかりにくいのも事実。その代表かもしれないのが量子コンピュータ?
現在のパソコンは0か1の判断を半導体回路が行うことで計算していく、2ビットの世界。ところがキュービットといって、0と1以外に0が30%、1が70%といった類の中間の状態がたくさん作れて、それを利用して並列に同時計算が行えるという優れもので、その計算スピードはスーパーコンピューターの1万倍とか言うレベルではなく、とんでもない速さになる(もちろん、100個のキュービットで計算できるようになる日がいつ来るかは、研究者によっても、見えていないようだけど)のだという。ところがこのコンピュータは今のパソコンの延長上の革命ではないのだという。得て不得手があって今のパソコンで出来ることすべてが出来るわけではないどころか、ほとんど出来ないらしい。パソコンや周辺のビジネスで食べている人たちは、ほっと一安心かもしれないが、因数分解をさせたらパソコンだったら1年かかるような計算を短時間にやってしまう能力には圧倒されるものの、なんとなく話題先行型のテーマのように映るのは勉強不足からかな。



                                                篠原 紘一(2003.2.7)
                                                   
                        HOME 2003年コラム一覧  <<<>>>