156.日本の強みは

多くの場面で自信を失いつつあるように見えるが、日本の強みは、何といっても科学技術において世界で最高水準の教育を受けた労働力を(人口減の問題は別途解決すべきである)有していることと、モデルがあればそれを日本流に改善していくチーム推進力を持っているといったことであろう。

 

 モデルがあれば真似てみて、今の時代に通用しないならそこから改善を加えていくやり方は長い間先人がなしてきたことであって、グローバルに、シームレスにイノベーションが競われる時代であっても日本人の標準的な行動パターンとしてよいのではなかろうか?

 確かにマクロにみると、日本の優位がIT革命で足元をすくわれ、ソフト、バイオ、などでなかなか追いつけずにいる。

 

 21世紀の最初の大きなイノベーションがライフサイエンスとの見方を受け入れるとすると、日本は正にアメリカが2004年に出したパルミザーノレポート「Innovate America」の、人材、投資、インフラの3つのカテゴリーで政策提言がなされて動いている勢いからすると迫力不足の感が否めない。

 一方、米国の流儀も大きな破綻が報じられる日々が続いている。あと1カ月ほどでバラク・オバマ大統領が大国のかじを取る。就任演説でどのような変革ビジョンを打ち出すのかは注目である。

 

 病んでいたアメリカが手術台に上がるとすれば、日本は日本の強みをもう一度磨きあげ、若い力が未来に希望を持って活躍できる社会に早く仕立て上げなければならない。先頭を走るモデルは若い力なしには創造出来ない。

 何かうまくいかないと「政治が悪い」と言ってそこから逃げると言うつもりではないが、省庁間の壁があい路(環境やエネルギーなどをナノテクで解決していこうといったアプローチがすぐ突き当たる)になっている課題だけでも本気で連携し突破する流れをベテランたちは実質において示さなければならない。

 

 日本も歴史的な成長(データ上はそうであっても、実感が国民にないといった不思議な)も一気にマイナス成長に転じ、売上でなく営業利益が2兆円を超えたトヨタが一転赤字にといった衝撃的なニュースを始め暗いニュースばかりの中で2008年もカウントダウンを迎える。基礎研究の成果を社会にまで届けようとするにも「耐える」ことが大事。「耐える」ことはイノベーションにとってもベースとなる心である。

 


                                   篠原 紘一(2008.12.24

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