155.商品化までの長い道のり

 

  産学官連携ジャーナル(2008年、9月号)に「独創技術を商品化するまでの長い道のり」といった10の事例をもとに新技術協会の行った調査研究の概要の報告がある。

 その報告で調査委員会の委員長である飯沼光夫千葉商科大学名誉教授は成功要因に7項目の共通要因があったと述べている。(http://sangakukan.jp/journal/)

 

1) 理念の共有化、2)目標に集結、3)長年の地道な技術蓄績、4)異なる環境の関係者の信頼関係、5)強力な開発リーダーの存在、6)効果的な支援確保、7)知財権の活用の7項目である。

10の事例は、商品化まで7年から19年の期間を要している。

筆者もプロジェクトスタートから本格的な事業化までおよそ19年あまりを要した蒸着磁気テープの商品化に携わった経験を持つ。そこで7項目について検証してみた(以下の番号は、共通要因として取り上げられた項目の番号に対応している)。

1)蒸着テープは開発スタートの3ヶ月後に、10月から社名をパナソニックに変えた松下電器創業者の松下幸之助の目にとまり、強力な要請を受けることとなった。松下の独創技術を早期に商品化するようにとの要請の背景にある創業者の理念は、波乱万丈の開発事業化プロジェクトのチームの支えであった。

2)目標が商品化をクリアに打ち出せない時期もあったが、最後は究極のテープの実用化(幸之助の要請でもあり、チームの願いでもあった)を成し遂げた。特に耐える時期には何を目指すかを繰り返し確かめた。

3)大型の実験機で開発を持続させたことが何より大きいのと、他社も含めて機器開発側と積極的に交流を絶やさなかったことも大きかった。

4)フィルムメーカーと蒸着材料メーカーには本当に助けられた。きれいにまとめれば、「技術屋としての夢を共有化」して歯をくいしばって連携を続けてくれたことが高収益新規事業につながったといえる。

5)リーダーとしてどうであったか?メンバーに聞けばいろんな評価があるであろうが、自己評価をすれば、筆者は逆境に強く、順境に弱いタイプであったのが止めずに続けられた大事な要素であったと感じている。

6)とにかく続けられる最低限の原資の確保に明け暮れた時期が長かったが、事業化サイドが本気になれる、高品質、高性能なテープを数作れることを実証することで応援団が増えていった。

7)知財は、量産機に近い規模(開発費がかさむので「やめろコール」にいくたびかさらされもしたが)で開発したことで重要な特許を多く所有できたのが大きい。

 

ほかにも成功要因を挙げることもできようが、7項目は筆者の経験に照らしても、納得のいく要素である。

 


                                   篠原 紘一(2008.11.13

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