154. 異種格闘技

 

 秋風が吹くような季節になると、大みそかに向けK-1 prideといった、いわゆる異種格闘技戦が準々決勝、準決勝と進んでいく。異種格闘技の原点は、1976アントニオ猪木の仕掛けにさかのぼると記憶している。見る側の期待は勝手で、プロレスリング、柔道、空手、ボクシング‥、それぞれ異なるルールで勝負を争ってきた格闘技の中でどれが一番強いかという回答を期待するが、いわゆる合意ルールをすり合わせての戦いであって真剣勝負とは言い難い戦いで、結局は条件付きの強弱であり、絶対的な強さは今でも不明と言わざるをえない。競馬、野球、陸上競技、サッカー、ラグビー、テニス、ゴルフなどなどで、それぞれの歴史上世界最強はといった話も酒の肴にはよいがそれ以上でも以下でもないように感じる。

 

 競争は研究でも、ビジネスでも至るところにあり、ある意味で異種格闘技以上に厳しくて、まさに真剣勝負の世界におかれる時代に入ってしまっている。なぜなら、倫理面の制約はあるがそれ以外にはルールはないと言っていいからである。

 

特にビジネスでは、10年程の間に生活の道具立てが大きくかわったことから、いわゆる異業種格闘技なる世界が出現している。

108日に、早稲田大学の大隈講堂で開催された「グローバルイノベーションフォーラム2008」の基調講演で早稲田大学の内田和成教授が新しい時代の競争戦略として、異業種格闘技について話された。冒頭、異業種格闘技は先生の造語であって、まだ広まっていないということであったが、違和感のない内容の講演であった。

 事例研究として、セブン銀行の例、レコード対CD対音楽配信の例、JTB HIS対楽天トラベルの例が示され、どう備え対応していったらいいかのヒントが示された。

 

インテルが発明し世界に先駆けて生産をしたD-RAMを日本メーカーが駆逐し、日本メーカーは韓国のサムソンに圧倒された。インテルはプロセッサーで他を圧倒するものの、日の丸半導体の復活の道筋は見えてこない。こういった、同一業種内の闘いがもちろん規模からいえばまだ支配的ではあるが、確実に同業他社をウオッチしていれば安泰という時代ではない。

クリステンセンが主張する「イノベーションのジレンマ」で「持続的イノベーション」はまさに上述した半導体業界の闘いに代表される大きな業界内の競争が主であって、思わぬ競争相手や、競争相手と見ずに油断しているうちに痛手を負う「破壊的イノベーション」が関与するのがまさに異業種格闘技のエンジン部分になるのであろう。

そう考えるとやはりいま、グローバルに「イノベーション」を競う時代だという認識は正しいもので、安倍内閣からすでに2回内閣が変わってしまったが、イノベーションマインドを決して弱めるようなことがあってはならない。

 


                                   篠原 紘一(2008.10.24

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