131. 2007年夏

 佐賀県立佐賀北高校、第89回全国高校野球選手権大会で奇跡の初優勝

 特待生問題が表面化した今年、皮肉にも(?)公立の普通高校が、開幕試合に甲子園初勝利をあげ、大会15日間にわたって延長15回引き分け再試合を含めて7試合をこなし、4,081校の頂点にたった。昨夏の大会の、早稲田実業、駒大苫小牧の延長15回引き分け再試合の決勝戦のインパクトが大きすぎて、この大会が盛り上がりにかけたような印象を与えるが、まったく予想できなかった劇的な、佐賀県勢として13年ぶりの優勝である。平成6年の優勝校は県立佐賀商業高校であり、ほぼ同じ軌跡をたどっていることが不思議である。佐賀商業も開会式直後の試合に勝利し、決勝まで勝ちあがって、九州勢対決となった相手樟南高校(旧鹿児島商工)をさよなら満塁ホームランで(8-4)降したのである。
今年の決勝は広陵高校が優勢のまま、8回まで0対4と進んでいて、佐賀北の勝利を祈る人はいても、選手を含めそこから起こる逆転劇を信じている人はいたとは思いにくい試合展開であった。それでも、佐賀北は1点をかえし(この押し出しの1点が、主審の判定によるといった声が上がっていて、やや後味が悪いのだが)、直後の満塁ホームランで逆転勝利をつかんだのである。

今年の夏は、観測史上最高の気温を各地で記録、つくばに拠点を移してから甲子園の夏を現場で感じることはなくなってしまったが、決勝戦が終わると、空に浮かぶ雲、赤とんぼ、夕方になるとさわやかで夏の終わりを感じたことを思い起こすが今年は違うのだろうと思える暑さであった。
体力勝負になって、技を磨くより、基礎体力を高めることに軸をおいているという普通高校が力を発揮したのかもしれない(帝京高校の、グラブトスから一塁へ送球という華麗な球捌きに甲子園がどよめいたのも事実だが)。
(この普通高校って何が普通なのかなって思いませんか?ちなみに商業高校や工業高校は専門高校に分類されるのだという。佐賀弁で「がばい」という言葉が佐賀北の快進撃とともに目立った。これは「非常に」という意味合いで、有名になった「佐賀のがばいばあちゃん」のように名詞を直接は修飾しないのだという。この本を書いた、漫才ブームの頂点にいた、B&Bの島田洋七さんが、「がばい(すごく)感動した」とコメントしたといった記事もあるが、朝日新聞は、これを正しく言うなら「がばいすごか感動した」というのだそうだといった記事の構成であった。
言葉は誤って使われても定着してしまうこともある。「がばい」が重箱の隅とは言わないが、「国民に基本は支持された」などと意味不明なことを言っているリーダーの追求も、もう咽元過ぎた感じのようになっているマスコミのほうが問題?)

人心一新(言葉も正しく使われていないというが)かどうか結果で問われる世界に大きな変化の波が迫ってきているのであろうか?

 

欽ちゃんの24時間マラソン

野球大好きな萩本欽一さんが、最高齢(66歳)で、24時間マラソンに挑戦した。早くから練習を積み上げてきていたが、ここでも今年の夏の異様な暑さは想定外であったようだ。
24時間テレビを、こまめにチェックしてきたわけではないが、終了時間が日曜日の9時ということがあって、マラソン走者のゴールを待つ武道館の様子はかなり見てきた。今回は生放送時間内にゴールできないことが明らかになったからか(別の意図があったかはわからないが)欽ちゃんの痛々しい姿がずっと映し出された。その結果、これまですべてとはいえないかもしれないが、計算があって、演出があってつくられた感動の部分(もあったのであろうが)がもろくも崩れた印象を持った。

道端に座ってしまう、アイシングは楽になるからといわれても痛いからいやだとはねつける、痛み止めも拒否、それでもよろめきながらも、沿道の声援に手を上げ、ひたすら武道館に向かう欽ちゃんのリアリテイーに、奥深いメッセージがこめられていたように思う。大スターをマラソンにかり出したことで、舞台裏が表に出てしまった。24時間マラソンの企画はこれで大変難しい課題を負ったのではなかろうか。現場にある感動は意思と意思の激しいぶつかりあいから生まれるのであろう。結果は、結果で感動を思い起こすアドレスになって残るだけのような気がしている。佐賀北の快挙もまさにそうであろう。


                              篠原 紘一(2007.8.31)

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