研究代表者・研究課題

HOME 研究代表者・研究課題 平成26年度採択 中尾佳亮

有機合成の常識を覆す新しい触媒反応を開発します | 中尾佳亮 | 京都大学 大学院 工学研究科 教授 | 専門:有機合成化学、有機金属化学

課題名|Research Theme

多元素協働触媒による分子変換手法の創出

概要|Outline

多元素協働触媒創出の概念図

複数の元素が同時に関与して、これまで困難であった化学結合の切断・形成を可能にする「多元素協働触媒」を創出します。この触媒によって有機化合物の合成手法が革新的に進展し、医薬や農薬、プラスチック原料、液晶、有機太陽電池などの有用物質の製造工程を、従来に比べ各段に省ステップ化・省エネルギー化します。化石資源やバイオマスを高効率に有用物質に変換する化学プロセスを提供して、持続可能社会の確立に貢献します。

特色|Feature

  • 「二重活性化型」と「シナジー型」、これらの融合など,多彩な「多元素協働触媒系」による多彩な分子活性化・変換手法の創出
  • 錯体化学と計算化学が先導する「ハイブリッド型多元素協働分子触媒」の創出と、これによる触媒活性と反応位置の精密制御
  • 従来の触媒では、反応点になり得なかった結合を、そのまま変換できる「真の新反応」の開発
  • 有機合成への貢献に加え、有機「分解」化学にも資する反応開発

研究代表者

中尾 佳亮
京都大学
大学院工学研究科
教授 研究室HP

主たる共同研究者

山下 誠
名古屋大学
大学院工学研究科
教授
榊 茂好
京都大学
福井謙一記念研究センター
リサーチリーダー
 
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5年度の成果|Results Y2018

図1: Ir/Al協働触媒による含窒素飽和複素環のサイトおよびエナンチオ選択的ホウ素化反応

図2:Rh/Alハイブリッド型協働分子触媒によるピジリンの2位選択的シリル化

これまでの研究成果(インパクト)

医薬・材料の機能の中枢を担う多置換芳香族,含窒素化合物を迅速かつ選択的に合成するための新触媒反応の創出を目指している。

  • Ir/Al協働触媒による含窒素飽和複素環のサイトおよびエナンチオ選択的ホウ素化反応の開発
     ピロリジンなどの含窒素飽和複素環のサイト選択的ホウ素化反応を開発した(図1)。イリジウム触媒と嵩高いアルミニウムルイス酸触媒の協働触媒によって,複素環の環員数に関わらず,窒素のβ位が選択的にホウ素化されることを見出した。さらにこの反応において,嵩高い光学活性アルミニウムルイス酸を用いると,5員環基質の反応がβ位かつエナンチオ選択的に進行することを見出した。従来の不斉反応と異なり,遷移金属上の光学活性配位子ではなく,光学活性アルミニウムルイス酸によって反応サイトとエナンチオ選択性を制御することに成功した。
  • Rh/Alハイブリッド型協働分子触媒によるピリジンの2位選択的シリル化反応の開発
     Al–Rh結合を有するハイブリッド型協働分子触媒によるピリジンの2位選択的シリル化反応を実現した(図2)。従来法では,2位選択性を制御することはできなかった。C–H活性化における両金属の役割分担を含む反応機構の詳細も明らかにした。

今後の進め方

  • サイト選択的C(sp3)–H官能基化における多元素協働触媒による制御手法の確立
  • C–OおよびC–N結合官能基化のための多元素協働触媒系の確立
  • 金属ー金属結合含有錯体のさらなる創出と触媒的σ結合活性化・官能基化への展開
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4年度の成果|Results Y2017

図1:Ni/Al協働触媒によるアニリドのメタおよび
パラ位選択的C–Hアルキル化

図2:Rh/Alハイブリッド型協働分子触媒による
ピリジンの2位選択的アルキル化

図3:Ir/Alハイブリッド型協働分子触媒による
アミンのα位選択的ホウ素化

これまでの研究成果(インパクト)

医薬・材料の機能の中枢を担う多置換芳香族,含窒素化合物を迅速かつ選択的に合成するための新触媒反応の創出を目指している。

  • Ni/Al協働触媒によるアニリドのサイト選択的アルキル化反応の開発
    アニリドのメタ位およびパラ位選択的アルキル化反応を開発した(図1)。ニッケルとアルミニウムルイス酸による二重活性化型協働触媒において,配位子とアニリド基質の置換基によって反応サイトを制御することに成功した。
  • Rh/Alハイブリッド型協働分子触媒によるピリジンの2位選択的アルキル化反応の開発
    Al–Rh結合を有するハイブリッド型協働分子触媒によるピリジンの2位選択的アルキル化反応を実現した(図2)。従来法では,基質適用範囲やジアルキル化などの副反応の問題があった。C–H活性化における両金属の役割分担を含む反応機構の詳細も明らかにした。
  • Ir/Alハイブリッド型協働分子触媒によるアミンのα位選択的ホウ素化反応の開発
    アルミナベンゼンを配位子として有するハイブリッド型協働分子触媒によるアミンのα位C(sp3)–H結合ホウ素化を実現した(図3)。 β位選択性を示す従来法では合成困難な多官能性アミンの合成手法として有用である。サイト選択性にAlのルイス酸性と相関があることを認めている。

今後の進め方

  • サイト選択的C(sp3)–H官能基化における多元素協働触媒による制御手法の確立
  • C–OおよびC–N結合官能基化のための多元素協働触媒系の確立
  • 金属ー金属結合含有錯体のさらなる創出と触媒的σ結合活性化・官能基化への展開
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3年度の成果|Results Y2016

図1:Ir/Al協働触媒による安息香酸アミドのメタ位選択的C–Hホウ素化

図2:Ir/B協働触媒によるピリジンの3位選択的C–Hホウ素化

図3:Pd/Cu協働触媒によるアルケンのカルボアリル化

これまでの研究成果(インパクト)

  • 遷移金属/Al協働触媒による芳香環の位置選択的官能基化の開発
    医薬・材料の機能の中枢を担う多置換芳香族化合物を迅速に合成するための触媒反応として,安息香酸アミド(図1)およびピリジン(図2)のメタ位選択的ホウ素化反応を開発した。それぞれ,イリジウム触媒と,ルイス酸性部位を有する配位子からなる二重活性化型多元素協働触媒がメタ位選択性にきわめて有効であることを見出した。
  • Pd/Cu協働触媒によるアルケンのカルボアリル化反応の開発
    複雑な骨格を有する多官能性ビルディングブロックを短工程で構築できる手法として,電子不足アルケンに対する共役付加によって触媒的に生じさせたアルキル求核剤を,辻ートロスト型反応によってアリル化する反応を,パラジウム触媒と銅触媒からなるシナジー型多元素協働触媒によって実現した(図3)。光学活性配位子の利用によって,不斉四級炭素構築への展開にも成功している。
  • PAlPピンサー錯体の創出とσ結合活性化反応への応用
    アルミニウム−ロジウム結合を有するハイブリッド型多元素協働分子触媒による芳香族C–O結合活性化の反応機構を明らかにした。また,ピリジンの2位C–H結合を活性化できることを量論的に見出した。

今後の進め方

  • 位置選択的C(sp3)-H官能基化における二重活性化型多元素協働触媒による制御手法の確立
  • C-OおよびC-N結合官能基化のための二重活性化型多元素協働触媒系の確立
  • C(sp3)-H活性化によって炭素求核種を系内調整するクロスカップリング手法の確立
  • 金属ー金属結合含有錯体の創出とσ結合活性化能の検証
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2年度の成果|Results Y2015

図1:Ni/AlまたはIr/Al協働触媒による置換ベンゼンのパラ位選択的C–H官能基化

図2:Pd/Cu協働触媒による水素を用いたアルキンのヒドロアリール化

図3:PAlPピンサーRh錯体触媒による芳香族C–O結合活性化反応

これまでの研究成果(インパクト)

  • 遷移金属/Al協働触媒による芳香環の位置選択的官能基化の開発
    医薬・材料の機能の中枢を担う置換ベンゼンのパラ位選択的官能基化を可能にする二重活性化型協働触媒を開発した(図1)。
  • Pd/Cu協働触媒によるアルキンのアリールホウ素化反応の開発
    有用物質によく見られる多置換アルケン骨格を1段階で構築できるカップリング反応を,シナジー型協働触媒によって実現した(図2)。
  • PAlPピンサー錯体の創出とσ結合活性化反応への応用
    バイオマスの利活用に必要な芳香族C–O結合活性化に有効なアルミニウム−ロジウム結合含有ハイブリッド型協働分子触媒を開発した(図3)。

今後の進め方

  • 位置選択的C(sp3)-H官能基化における二重活性化型多元素協働触媒による制御手法の確立
  • 置換ベンゼンおよび複素芳香環のメタ位選択的C-H官能基化におけるルイス酸含有配位子による制御手法の確立
  • 不飽和化合物の官能基化によって炭素求核種を系内調整するクロスカップリング手法の確立
  • 金属ー金属結合含有錯体の創出とσ結合活性化能の検証
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初年度の成果|Results Y2014

図1:Ni/Al協働触媒による安息香酸アミドのパラ位アルキル化反応

図2:Ir/Al協働触媒によるピリジンの4位ホウ素化反応

図3:Pd/Cu協働触媒によるアルキンのアリール
ホウ素化反応

これまでの研究成果(インパクト)

  • 遷移金属/Al協働触媒による芳香環の位置選択的官能基化の開発
    医薬・材料の機能の中枢を担う多置換芳香族化合物を迅速に合成するための触媒反応として、芳香族化合物のパラ位選択的C-H官能基化反応(図1および図2)を開発した。二重活性化型多元素協働触媒によって初めてパラ位選択性が制御が可能となり、従来触媒では実現困難な分子変換である。
  • Pd/Cu協働触媒によるアルキンのアリールホウ素化反応の開発
    有用物質によく見られる多置換アルケン骨格を短工程で構築できる手法として、アルキンのアリールホウ素化反応を、パラジウムと銅からなるシナジー型多元素協働触媒によって実現した(図3)。

今後の進め方

  • 置換ベンゼンおよび複素芳香環の位置選択的C-H官能基化における二重活性化型多元素協働触媒による制御手法の創出
  • 不飽和化合物の水素化あるいは官能基化によって炭素求核種を系内調整するシナジー型多元素協働触媒の創出
  • 含13族元素ピンサー構造を有するハイブリッド型多元素協働分子触媒の創出と不活性結合活性化能の検証

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