ライジング・スター賞

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設立趣旨|Outline

「分子技術」領域において新しい芽を作り、それにより分野全体の発展、一層厚みのある分野とするために、また、10年、20年後の分子技術を担う若手人材の育成のために、新たにライジング・スター賞を設立することとなりました。
「分子技術」領域に所属する若手研究者、又はそれら若手研究者(さきがけ研究者含む)間の協働研究による「分子技術」の新しいシーズの発見・開発のアイディアに対して強力に支援してゆきます。

平成28年度受賞者

井口 弘章 プロフィール写真

井口 弘章(山下 正廣チーム)

東北大学大学院理学研究科化学専攻・錯体化学研究室・助教

研究課題名
多孔性有機伝導体結晶への自在な化学ドーピングの実現

【 概 要 】本研究では、有機伝導体結晶への新しい化学ドーピングの手法を提案する。具体的には、規則的なナノ細孔を有する多孔性配位高分子 (MOF) の手法を有機伝導体の合成に適用する。電気伝導を担うπ共役分子にピリジル基等の配位性置換基を導入し、中性状態もしくは還元状態として種々の金属イオンと反応させ、π積層構造と規則的なナノ細孔が共存した多孔性有機伝導体結晶を合成する。この結晶中の溶媒分子を酸化還元活性なドーパント分子と置き換えてπ共役分子との間で電荷移動を起こし、浸漬時間やドーパント分子の種類・大きさを変えることで、ドーピング量の連続的制御を試みる。これにより、これまでは不可能であった有機伝導体結晶全体への自在な化学ドーピング技術を確立する。

竹田 浩之 プロフィール写真

竹田 浩之(石谷 治チーム)

東京工業大学・大学院理工学研究科・化学専攻・特任助教

研究課題名
リン光性を有した自己修復型金属錯体ポリマーフィルムの創製

【 概 要 】本研究では、発光性金属錯体を高分子主骨格とすることで、自己修復機能を有した発光フィルムの作成技術創成を目指す。近年、自己修復機能を有する高分子フィルムが注目されている。これは、有機高分子主鎖とこれらをつなぐ”リンカー”の網目状三次元構造により形成され、リンカーが乖離する程のフィルム上の傷が、リンカーの再構成により自律的に修復される機能である。本研究では、”リンカー”として架橋多座配位子を用い、この配位子と中心金属との可逆的な錯形成挙動を制御することで金属錯体の発光特性と、フィルムの自己修復性とを両立する。

山下 智史 プロフィール写真

山下 智史(今野 巧チーム)

大阪大学・大学院理学研究科化学専攻・助教

研究課題名
高電場下における物性評価手法の確立

【 概 要 】複雑な分子により構成された分子錯体などは、結晶構造に由来した興味深い物性が実現する。電場,圧力,磁場といった外場印加状態での物性測定は、準連続的に変化する物性を追跡することが可能であり新規相の開拓には欠かせない。しかし、粉末・薄膜でも多くの情報が得られる鉱物系などとは異なり、微小結晶に電極を取り付けて測定する必要がある分子錯体等の微結晶を対象とした高電場下の物性測定は確立されていない。本研究では、高電場を印加した状態で極微結晶の物性を測定する技術の確立を目指す。研究対象としては、電気的な揺らぎや分子の配向・電荷分布に基づく分子の動的構造が顕著に現れる電荷移動型の錯体など電場によって物性が変化する可能性が高い物質に焦点をあて、高電場下における物性測定の有効性を確認する。

長田 裕也 プロフィール写真

長田 裕也(杉野目 道紀チーム)

京都大学大学院・工学研究科・合成・生物化学専攻・助教

研究課題名
静水圧印加による分子コンフォメーション制御技術の開発

【 概 要 】提案者は最近の研究において、比較的低静水圧(千気圧程度)の印加によって、らせん高分子ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)の主鎖らせんキラリティが反転することを見出した (Chem. Commun., 2015, 51, 11182)。この系では、基本骨格として剛直ならせん高分子を用いることで圧力変化による微小な応答を集積し、主鎖らせん反転という大きなコンフォメーション変化を引き起こすことに成功している。
本提案ではこれまでに得られた知見を活かし、比較的低い静水圧によって機能性分子のコンフォメーションを自在に制御する分子技術の確立を目指し、新たな圧力応答性材料群の創出を行う。また本研究の一環として、静水圧印加状態でのその場測定技術をさらに発展させることにより、圧力応答性材料の開発をさらに加速させることができると考えている。

山添 誠司 プロフィール写真

山添 誠司(中村 栄一チーム)

東京大学・大学院理学系研究科・助教

研究課題名
多元機能を持つ金属-金属酸化物ハイブリッドクラスター触媒の創製

【 概 要 】多段階プロセスで合成される化成品や医薬品をワンポットで合成するには,複数の分子を同時に活性化し,それらを反応させる必要がある.金属クラスターや金属酸化物クラスターは,それぞれ対応するバルク材料とは異なる構造・特性を有しており,バルク材料からは予想できない特異な酸化・還元反応や酸・塩基反応を引き起こすことができる.本研究では,これらを融合させた金属-金属酸化物複合クラスターを新たに創製し,性質の異なる反応を同時に引き起こす多元機能触媒を開発する.

平成27年度受賞者

吉成 信人 プロフィール写真

吉成 信人(今野 巧チーム)※写真右

大阪大学・大学院理学研究科・助教

協働研究者:原野 幸治(中村チーム) 研究課題名
光メタマテリアルを指向した
金属クラスターのオリゴマー化技術開発

【 概 要 】本提案では、金属クラスターを直線的に相互連結した「金属クラスターオリゴマー」を合理的に構築する方法を新たに導出し、可視光に応答できるメタマテリアル材料(光メタマテリアル材料)を実現可能にする革新的なナノ金属材料分子技術を創成する。これらのオリゴマーは単独で数nm以上のサイズをもち、その自己集合から得られる次元性集積体は光ナノマテリアル材料のサイズ要件を満たすことが期待される。本研究では、独自に開発する「欠損部位をもつ金属クラスター」を素材として用いて金属クラスターオリゴマーを合成し、これらの溶液中ないし界面での自己集合挙動を調査する。

伊藤 幸裕 プロフィール写真

伊藤 幸裕(鈴木 孝禎チーム)

京都府立医科大学・大学院医学研究科・医薬品化学・学内講師

研究課題名
人工ユビキチン化合物の創製
~ユビキチノーム解析系構築を志向した分子技術~

【 概 要 】本研究では、細胞膜透過性を有した人工ユビキチン化合物(AUB)の創製を目指す。AUBは、ユビキチン化タンパク質の網羅的解析(ユビキチノーム解析)法の構築に繋がる基盤分子としての可能性があり、ユビキチン分野の研究発展に直結する分子技術としての応用が期待される。
近年ではユビキチン化(Ub化)異常が神経変性疾患やがんなどの病態に関与するとされ、医薬をはじめとする関連分野で興味深い研究対象となっている。しかし、どのタンパク質が、いつ、細胞内のどこで、どの程度Ub化を受けるかは不明であり、Ub化と生理作用・疾患との関係に関して未解明な点も多い。したがって、タンパク質のUb化を正確かつ網羅的に解析すること(ユビキチノーム解析)が必要不可欠である。そこで、提案者はユビキチノーム解析の実現を将来的な目標とし、有機化学的にUbとして振る舞うAUBの創出を行う。

赤石 暁 プロフィール写真

赤石 暁(齋藤 永宏/中村グループ)

電気通信大学・大学院情報理工学研究科・先進理工学専攻・特任助教

研究課題名
グラフェン・ドープグラフェン表面上に
おける水のナノ特性

【 概 要 】グラフェンなどの炭素材料の表面での濡れ特性を知ることにより、所望の濡れ特性を持つ炭素材料の開発への基礎理論を構築する。濡れ性は物質表面の流体抵抗・摩擦と深く関わっており、工業的にも表面材料による濡れ性の制御は非常に重要な役割を果たす。
本研究では、コンピュータシミュレーションを用いて、グラフェン表面上における水の層構造を解析し、グラフェン・ドープグラフェンの濡れ性の理論を構築することを目的とする。厳密に水分子とグラフェンとの評価する第一原理計算、室温における動力学特性を解析する分子動力学を相補的に駆使して、グラフェン表面上の水分子の運動特性と濡れ性との関係を探る。また、構造異常やドープによる水分子層への影響や、グラフェンエッジの親水性・疎水性を調べることにより、実験では制御が難しい非均一グラフェン表面での濡れ特性を予測するための理論を構築する。

平成26年度受賞者

仁科 勇太 プロフィール写真

仁科 勇太(さきがけ研究者)※写真右

岡山大学・異分野融合先端研究コア・助教

協働研究者:上野 智永(齋藤チーム)

名古屋大学・グリーンモビリティ連携研究センター・助教

研究課題名
ソリューションプラズマを用いる
ヘテロ元素ドープグラフェンの合成

【 概 要 】ヘテロ元素ドープグラフェンは、リチウムイオン電池における高速充放電が可能な負極材やスーパーキャパシタにおける高容量電極材などにおいて、純粋なグラフェンを凌駕する特性が期待されている。本研究では、ナノ材料を実用化可能な規模で生産するための「ナノからバルクへ」という概念に基づき,ヘテロ元素ドープグラフェンを大量に合成する技術を創成し,その用途を開拓する。ソリューションプラズマが発生する条件下、前駆体としての酸化グラフェンとヘテロ元素を含有する低分子有機化合物と溶液中で均一に混合させ、ワンポットでヘテロ元素ドープグラフェンを合成する。

影澤 幸一 プロフィール写真

影澤 幸一(山下チーム)

東北大学・大学院理学研究科・助教

研究課題名
バルクとナノ磁性のメゾ領域における
新規磁気物性の開拓

【 概 要 】医療分野における核磁気共鳴画像法、高容量記憶媒体のハードディスク、自動車のモーターなど、現代社会には磁性体は欠かせない存在となっている。一般的なバルク磁性体である強磁性体は微粒子のサイズがドメイン以下のサイズになると自発磁化が消失し、磁石としての性質を示さなくなる。一方、単分子磁石(SMM)と呼ばれるナノ磁性体は、分子内の一軸性の磁気異方性により1つ1つの分子が量子磁石として振る舞うことができる。バルク磁性体とナノ磁性体は磁石としての発現機構が全く異なるため、これらを融合させることで新規磁気物性の発現が期待される。そこで柔軟な分子設計が可能である金属錯体を用いた希釈磁性体を作成し、バルク・ナノ磁性の融合を目指す。

中西 亮 プロフィール写真

中西 亮(山下チーム)

東北大学・大学院理学研究科・助教

研究課題名
多孔質物質を用いたフラーレンの
選択的分離法の開発

【 概 要 】最もベーシックなフラーレンC60にカリウムをドープした際、超伝導特性が発現する。このような、電子ドープを施したフラーレンは新奇物性の発現が強く期待され、その意味で金属イオンを内包した金属内包フラーレンは非常に興味深い物質群である。しかし、特定の金属内包フラーレンを得るためには高速液体クロマトグラフィーによる分離が必要であり、特殊なカラムや多量の溶媒、および長時間のリサイクルなど、多大なコスト・労力がかかった。そこで本研究では、フラーレンの持つ昇華性に着目し、カーボンナノチューブや金属有機構造体などの多孔質物質のもつナノスケールの内部空間に昇華させて捕集することで、金属内包フラーレンを簡便かつ選択的に分離する技術の開発を目指す。

平成25年度受賞者

加藤 敬行 プロフィール写真

加藤 敬行(菅チーム)

東京大学 理学系研究科 化学専攻 助教

研究課題名
鏡像タンパク質の翻訳合成分子技術の創出

【 概 要 】本研究では、翻訳系を構成する必須因子であるリボソームやtRNA、翻訳因子等を造り変えることによって、天然の翻訳系では不可能であったD-アミノ酸のみから成されるタンパク質(=鏡像タンパク質)の合成を可能にする全く新しい翻訳系の開発を行うことを目指す。現状ではこのような鏡像タンパク質を合成する手法としては化学合成によって短鎖のペプチド断片をまず合成し、これらをケミカルライゲーションによって順次連結してゆく方法しかないが、本研究により翻訳合成によって作り出すことが可能となれば、鋳型mRNAの配列を変えるだけで自由自在に、なおかつ短時間で多種類のタンパク質を一度に作り出すことが可能になる。究極的には、鏡像タンパク質のみから構成される鏡像生命体ワールドの構築へと発展させてゆきたいと考えている。

上野 智永 プロフィール写真

上野 智永(齋藤チーム)

名古屋大学 グリーンモビリティ連携研究センター 助教

研究課題名
カーボン材料による超軽量材料の創成

【 概 要 】『カーボン材料の合成技術およびカーボン材料の自己組織化技術を確立し、空気と同等あるいはそれを凌駕する超軽量材料に関する分子技術』を構築する。液中のグロー放電(ソリューションプラズマ)を用いた中空の超軽量カーボン合成技術、中空繊維を空間的に疎に均一に配置するための自己組織化技術を開発し、機械的特性を有する超軽量カーボン材料を作製する。

アンヤラット ワッタナパニット プロフィール写真

アンヤラット ワッタナパニット(齋藤チーム)

名古屋大学 グリーンモビリティ連携研究センター 特任助教

研究課題名
Cellulose conversion over supported metal catalyst via solution plasma process to sugar alcohols

【 概 要 】セルロースを水中で分解し、ソルビトールのような糖アルコールに変換する方法として、ソリューションプラズマ法を開発する。従来の加水分解による水素化は、高圧の水素や高温の条件が必要であったが、ソリューションプラズマを用いることによって、水素ガスを導入することなく常圧で反応を進行させる。ソリューションプラズマの反応場に触媒を加えることで、収率と選択性に優れた合成プロセスを開発する。

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