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浅井総括写真 あさい しょうじろう
研究総括:浅井 彰二郎 ( → 略歴
株式会社 リガク 取締役副社長

研究総括の発表資料

2013年 7月 H25年第1回領域会議発表資料
2013年 3月 H24年第2回領域会議発表資料
2012年12月 DVLSI国際シンポジウムOpening Remarks発表資料
2012年11月 ATS'12招待講演発表資料
2012年 8月 次世代デバイス領域ニュースコメント
2012年 6月 H24年第1回領域会議発表資料
2012年 5月 総括領域紹介資料
2011年12月 DVLSIワークショップ発表資料
2011年 3月 DVLSIワークショップ発表資料
2009年12月 DVLSIワークショップ発表資料
2008年12月 DVLSIワークショップ発表資料

研究領域の概要

 本研究領域は、VLSIシステムの高信頼・高安全性を保証するための基盤技術の研究開発を対象とします。人類の諸活動が情報システムに依存する度合いは増す一方であり、その信頼性・安全性の確保はきわめて重要な社会的課題です。そのエンジンであるVLSIも、それ自身が膨大な数の回路素子を含む巨大システムであり、その信頼性・安全性は情報システムの信頼性・安全性のコアとなるものです。VLSIシステムを、信頼性・安全性に配慮しつつさらに大規模化するため、横たわる多くの課題を解決することが本研究領域の目的です。

 具体的には次のような研究課題が含まれます。まず素子寸法の極限的な微細化にともなう物理的な揺らぎ、一過性雑音事象、使用にともなう劣化などが問題です。こうした不安定要因は、直接誤動作の原因となるのみならず、VLSIの大規模化にとっての阻害要因であり、その影響を緩和する素子レベル、回路レベル、システムレベルの新技術の研究開発が必要です。一方、微細化による大規模化が限界に近づいているため、多数のチップを3次元的に実装することによる大規模化と、それにともなう信頼性・安心性の確保も大きな課題であり、研究開発が必要です。規模の拡大と複雑化にともなう設計上のミスを排除し、設計・検証・製造・検査を容易化する設計の方法も研究開発課題です。信頼性・安全性へのVLSIシステム内外からの脅威を動作中に検出し、封じ込め、緩和するアーキテクチャー、回路の研究開発も必要となります。VLSIシステムへの要求事項は、用いられる情報システムの特性から決まりますが、新しく信頼性・安全性の仕様規定、評価尺度を作り上げて行くことも本研究領域の研究開発課題です。

平成24年度の運営方針

(1)成果の実証
 本CREST研究領域は、2007年のスタート以来、はや5年を経過し、初年度採択チームについては今年度が最終年度となります。この時点に立って、もっとも注力しなければならないのは成果の実証であります。これまでの研究努力の結果、各研究チームの中には、VLSIシステムのディペンダビリティを高めるための回路技術、システム構成、設計・検査ツールの新規概念が生まれています。これらを、具体的な事例に適用し、その効果を実証することです。VLSIのような実践的な分野においては、効果の実証までしてみせて初めて研究を完結できます。さらに、研究室内で定義した課題を解決したと主張するのではなく、実社会で動いているシステムの中に適用した場合にどれだけの効果があるか、従来技術との対比において、明確に示すことが必要です。そのためには、技術の受け手である企業と連携して、互いに納得の行く実証方法を決め、場合によっては開発した技術に一工夫加える必要がある場合も少なくありません。そしてその一工夫こそが、後にもっとも重要な発明になることすらあります。

(2)出口戦略
 本研究領域では、課題を社会の実問題に求め(入口戦略)、時間とお金を投じて研究した成果を、改めて企業のDVLSI設計や利用の現場に持ち込んで、研究成果の実証と、産業への手渡しを促進する(出口戦略)ことを念頭において進めてきました。こうした考えを徹底するため、企業からの研究チームへの参画、企業との共同研究の推進、「発展テーマ」の提案推奨、評価キット製作と供試、組込み総合技術展ET2011への展示、その他を実行してまいりました。このようにして研究領域内外の接触は深まっています。平成24年度はこうした活動をいっそう進め、成果実証と出口戦略が実を結ぶように努力してまいります。

(3)標準化
 ディペンダブルVLSI研究では、研究成果を世界に役立つ国際標準とすることを眼目のひとつにしています。実際、いくつかの研究テーマから、技術標準として提案するに値する概念が生まれています。こうした提案をするには、背景として、充実した学術論文群や特許群がまず必要となることは言うまでもありません。論文発表や発明権利化は領域として推進してまいりましたが、いっそう重厚な活動が必要かと思われます。加えて、標準化に関しては、研究成果とその持つ社会的意義をひろく訴えることのできる、「ホワイト・ペーパ」が大切であると考えています。2012年2月には梶原チームが、機能安全基準SIL4採用に向け提案考慮中の研究成果の紹介をホワイト・ペーパとして作成し、DVLSIのウェブサイトにも掲載しました。ホワイト・ペーパは、はじめはやや粗い記述から出発することも可能ですが、研究進展とともに、技術の実装方法や適用事例を含め、標準化活動の実態や標準化の市民生活、経済活動への影響までも論じた、総合的な文書として仕上げていくのがよいと考えています。

(4)ディペンダビリティ指標
 今年は、本研究領域全体にとり、当初からの懸案である、「ディペンダビリティ」という概念を定量的に指標化できるか、何がそうして指標でありうるか」、という設問に答えることを試みたいと思います。2011年12月2日の研究領域会議、ならびに同3日のワークショップで以下のような議論をいたしました。VLSIに組み込んだ、ディペンダビリティ技術の強度水準を横軸に、縦軸には実施したテストの強度水準をとって、この2次元表現を、ディペンダビリティの指標にしようというものです。ディペンダビリティという明らかに多次元の指標を、何とかして総合的、半定量的にとらえようとする試みです。客観的指標と呼ぶには粗いですが、少なくともディペンダビリティについての思考ツールにはなると思います。VLSI適用目的に応じて考慮する脅威構成要素やテスト構成要素を選択してもよい、設計製造の説明責任とみなすこともできる、新規に発見された脅威やテスト法を取り入れる可能性を残しているといった利点もあります。各チームにおかれても、取り上げた研究、成果となる技術に関係付けてVLSIシステムのディペンダビリティ指標を定義し、研究がそれにどのような改善をもたらすか定量的に実証する努力をお願いしたいと思います。

(5)領域内外のいっそうの連携を
 CREST/DVLSIは、VLSIという一側面からのアプローチではありますが、安全・安心、ディペンダビリティについての、総合的な取り組みとして画期的なものです。この組織的な研究活動によって、一般市民の生活にも関係するシステムのディペンダビリティを向上し、ひいては産業力を強化する技術を生むことができると考えられます。  後半の研究において効果を挙げるには、領域内の努力が大切であることはもちろんですが、領域外、とりわけ企業から、成果を活用する姿勢での関心、協力を寄せてもらえるよう、領域内外の連携活動をいっそう活発にしたいと考えています。また、今年からは、Website、領域会議やワークショップ、技術会議においても、DVLSIの活動の広報、交流活動を、日本語だけでなく英語も用いて、今までに増して活発にしたいと考えており、関係の皆様の協力をお願いする次第です。

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CREST:戦略的創造研究推進事業