2014年6月
(その他報告書)社会的期待に応える研究開発戦略の立案 ―未来創発型アプローチの試行―/CRDS-FY2014-XR-03
エグゼクティブサマリー

 科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)は、「社会が何を求めているか(社会的期待)」に応えることを研究開発戦略の立案にあたっての基本方針としている。この基本方針の下、CRDS では、上述の科学技術イノベーション政策の方針を具体化すべく、これまで次の2つの異なるアプローチにより研究開発戦略の立案方法を検討してきた。
・課題解決型アプローチ(平成 24 年度)
・未来創発型アプローチ(平成 25 年度)
 平成 24 年度に検討した課題解決型アプローチは、従来から実施されている分野別の研究開発動向からのアプローチと比較すると、研究開発分野/領域の視点や枠組みにとらわれずに社会的課題を把握、認識することができ、また課題解決に寄与しうる研究開発領域/課題を複数の異なる分野から見出すことができる等の点において改善が見られた。しかし、一方で、以下のような点を補完する方法が必要であるとの認識に至った。
◇ 解決が求められる課題への対処を起点として検討を進めるため、描かれる将来の社会像は、問題が解決された状態のものに留まる傾向にある。そのため、新しい科学技術によって実現しうる、未来志向で新規性のある社会像が描出されにくい。
◇ 課題解決に寄与しうる科学技術という視点からでは、先駆的、先端的な研究開発領域/課題が見出されにくい。
 未来創発型アプローチは、これらの点を改善することを目的として、平成 25 年度に検討を試みた方法である。このアプローチでは、未来志向で新規性のある社会像を、先端的な研究領域から得られつつある科学的知見や萌芽的技術等を踏まえて描くことから検討を開始した。その一連の検討の流れは以下のとおりである。
1) 未来の社会像とその根拠となる科学技術のロングリストの作成
2) 1)の検討範囲を絞るための視点の抽出
3) 視点毎に関連する社会像と科学技術を把握
4) 3)を踏まえ、駆動力を持つ科学技術を特定し、実現されうる社会像の正負両面を把握
5) 再び視点の単位で駆動力を持つ科学技術、関連する社会像、必要となる制度等を把握
 これらの検討を経て得られた戦略スコープ案のタイトル、それぞれが含む駆動力を持つ科学技術は以下の通りである。戦略スコープ案とは、CRDS において具体的に研究開発戦略を検討していく候補である。
 未来創発型アプローチでは、課題解決型アプローチでは見出せなかった、未来志向で新規性のある社会像を得ることができた。また、課題解決型アプローチで不十分であった、先駆的、先端的な研究開発領域/課題を見出すという点については、駆動力を持つ科学技術を特定することによって対応できたと言える。
 しかし、未来創発型アプローチを研究開発戦略の立案方法として改善していくためには、さらに次の点について検討する必要があると考えられる。
(1)ロングリスト作成時の典拠情報の拡大
(2)検討プロセスへの参加者のあり方
(3)社会像の検討方法の詳細化
 以上のように社会的期待に応える研究開発戦略の立案方法として、課題解決型アプローチと未来創発型アプローチを構築、試行してきた。研究開発戦略の立案方法は、これらに限ることなく、研究開発を実施する目的に応じて多様なものが検討されることが望ましいが、CRSD では、両者の特徴を生かした改善と実際の立案プロセスへの適用を継続的に実施することを通じて、戦略策定の方法論を確立していく予定である。

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