2019年3月
(ワークショップ報告書)科学技術未来戦略ワークショップ報告書 相互進化的社会システムデザイン/CRDS-FY2018-WR-10
エグゼクティブサマリー

モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)といった先端技術が社会に広まり、社会そのものが変化するなかで、教育や医療、金融、交通などの社会システムが必ずしも社会の現状に適していない状況がある。社会システムを社会に適合させ、経済発展と社会課題の解決を図るには、先端技術の適用という、技術だけのアプローチでは不十分であり、法制度や慣習なども含めた統合的に社会システムを設計するフレームワークが必要である。この観点から社会システムデザインのあるべき姿、その進め方などについて議論を進め、社会システムに関わる科学技術の強化に有効な研究開発戦略策定の一環として、ワークショップを開催した内容を報告する。

ワークショップでは、上記問題意識、研究開発課題、研究開発を行う意義などを共有した上で、目指すべき方向性や具体的な取り組み事例を発表者にご紹介いただき、コメンテータのコメントを伺った上で、全体討議を行った。発表は以下のとおりである。

1. 「参加型社会システムデザインのためのデータ利活用基盤とデータコミュニティ」
経済性や効率以外の尺度として、レジリエンシーを高めることができる自律分散型の社会システム実現していくには、データを積極的に利用するためのデータ基盤の整備と、データを利用する人、データを提供する人、データアプリケーションを開発する人、データ基盤を運営する人などから構成される、データコミュニティの確立が必要。

2.「地域公共プロジェクトの社会実装における課題」
地域社会でのバス交通システムの社会実験について、実験における技術パートナー、事業パートナー、自治体パートナーを見つけ出し、実験に参加してもらうまでの苦労。研究者同士をつなぐネットワーク、研究者と行政をつなぐネットワーク、研究者と事業者をつなぐネットワーク、プロジェクト参加者全員をつなぐネットワークが必要。

3.「ICTとビッグデータ活用による都市エリアマネジメントの今後の方向性」
都市エリアマネジメントについてさまざまな実例を交えながら、都市が生み出すさまざまなデータをマッシュアップしていくことで新しい価値を創出できることを紹介。

4.「社会システムを理解・制御・デザインするための方法論」
社会が複雑系であることを前提に、ボトムアップとトップダウンの両方向からの取り組みが必要で、現場を理解し、問題を明確化して、解決すべき研究開発について理解できる現場と研究開発をつなぐコーディネータが必要。

5.「価値と社会のダイナミズム」
社会は価値多様体(態)であり、多様であることで無駄も発生するが、ロバスト性を担保しているので、技術がこの多様性を保ちながら、継続的な社会的合意形成をすることが必要。また、社会実験がはらむリスクを管理することが重要。

コメンテータからは、ご自身の経験に基づいた、幅広い視点でのコメント・議論をいただき、参加者からは、研究と実証実験の現場をつなぐコーディネータについて、さまざまな意見をいただいた。また、価値多様性や実証実験のリスク管理の話は示唆に富むものであり、社会システムデザインにおける文理融合の重要性を再認識した。

※本文記載のURLは2018年11月1日時点のものです。

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