2018年9月
(ワークショップ報告書)科学技術未来戦略ワークショップ報告書 生体との相互作用を自在制御するバイオ材料工学/CRDS-FY2018-WR-04
エグゼクティブサマリー

 本報告書は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が平成30年3月3日に開催した科学技術未来戦略ワークショップ「生体との相互作用を自在制御するバイオ材料工学」に関するものである。

 超高齢社会の到来、医療・健康ニーズの多様化や医療技術・機器の高度化に伴って、医療・ヘルスケアなどに用いられる材料には、生体現象を制御するための多様な機能が求められている。一方、生体組織や体液などの生体を構成する成分に接して利用される材料(バイオ材料)は、機能発現の以前に、生体から異物認識されない生体適合性を有することが不可欠であり、将来の健康・医療ニーズに応えるには所望の機能と生体適合性とを兼ね備えた材料創製が欠かせない。しかし、多様な生体環境に対する適合性の発現メカニズムには未解明部分が多く、これまでバイオ材料の研究・開発には経験的な試行錯誤に依存せざるを得ない面があった。このような状況を打破し、所望の機能と高い生体適合性を併せ持つ新しいバイオ材料を創製するためには、生体と材料の間にはたらく相互作用とそれに起因する現象の本質的理解に基づいて、材料設計・創製をおこなうことが可能な技術的基盤を確立する必要がある。そこで、CRDSでは生体と材料の間にはたらく相互作用メカニズムに立脚して材料設計・創製をおこなうことを「バイオ材料工学」と定義し、その推進方策について検討を進めている。

 本ワークショップでは、バイオ材料工学の技術的基盤構築につながる最近の新しい研究、技術シーズに関する専門家からの話題提供をもとに、バイオ材料工学の推進によってどのような材料を創出し、将来の医療・健康ニーズに応え得るか、現状で不足している技術は何か、研究開発において何に着眼すべきかを議論し、重要な研究課題を浮かび上がらせることを企図した。また、CRDSが事前調査を通じて用意した2つの仮説「1.バイオ材料工学を推進する上で重要なのは、時間変化する多様な生体環境と材料との相互作用に起因して生じる現象を、分子(nm)・細胞(µm)・組織(mm)のスケールで経時的かつ多階層的に理解し制御する技術基盤を構築することである。」および「2.バイオ材料工学を産学官連携および医工連携を通じて中長期的に推進することで、健康・医療におけるアンメットニーズに将来的に応えることが可能になる。」をもとに議論をおこない、バイオ材料工学を推進する上で留意すべき点について検討した。さらに、得られた研究成果を臨床・実用技術につなげるために必要な研究環境・体制、施策についても議論をおこなった。

 本ワークショップでの議論を踏まえてCRDSでは、今後国として重点的に推進すべき研究開発領域、具体的な研究開発課題を検討し、研究開発の推進方法を含めて戦略プロポーザルを作成する。

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