2018年7月
(ワークショップ報告書)俯瞰ワークショップ報告書 フューチャーグリーン ~持続可能な農林地利活用を目指して~/CRDS-FY2018-WR-03
エグゼクティブサマリー

本報告書は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が、平成30年3月19日に開催した俯瞰ワークショップ「フューチャーグリーン ~持続可能な農林地利活用を目指して~」の結果を記述するものである。

気候変動や少子高齢化等の社会変化が我が国の農林地およびそれらを取り巻く環境に対してどのような影響を与えるのか、またそれによって生じる変化に対してどのような対応方策が可能であるのかについての科学的根拠に基づく検討は未だ十分でない。そこで、CRDSでは、農林地内の植物資源およびそれらを取り巻く環境の維持・発展を実現するために必要な科学技術的課題の検討を、「フューチャーグリーン」と称し、2016年度から実施している。 今回実施のワークショップでは、2016年度に実施のワークショップ「フューチャーグリーン2050」の検討結果を踏まえ、(1)農林地内の植物資源とそれを取り巻く環境の将来的な変化予測、(2)予測結果を踏まえた対策の立案や実施検討のための問題解決シナリオの策定、に係る科学技術的課題の検討を目的とした。なお将来的な変化予測に係る技術の開発は、資源循環利用研究と生態系サービス研究の二つの研究分野の推進によって得られる科学的知見や実地データに基づくことを仮説とし議論することとした。
本ワークショップで得られた主な意見や提案等は以下のとおりである。

話題提供では、主につぎのような内容の発表があった。

  • 米の価格低迷や生産調整拡大により、米以外の収益性の高い作物生産を志向した水田の畑地転換が進むが、水田に比べ畑地では水環境が不安定化する。しかし畑地の中での水の流れ、肥料に含まれる物質の流出経路などについての定量的な予測技術は未確立である。
  • 豪雨が降ると畑地が侵食される。その際の土砂の流亡や土砂と共に排出される窒素・リン等の栄養分は、周辺の生態系に影響を与えるため、その正しい予測と対策の構築、それに基づく地域のデザインを考える必要がある。
  • 短時間豪雨の頻発と森林の高齢級化が重なることで、森林災害の発生形態が近年変化している。こうした新たな複合型森林災害発生メカニズムを解明し、それに基づき予測手法を高度化させることが課題である。
  • 広葉樹、針葉樹、落葉樹、水田などの土地区分を集水域内のどこにどれくらい配置するかに応じて、農産物の収量がどうなるか、水質が良好に保たれるか、生物多様性はどうか、産業はどうか、住む人にとっての健全性はどうかなどを予測する土地利用や生物多様性のもつ便益を内包したシミュレーションツールの開発は、政策決定者や市民など、その地域のステークホルダーにも有用と思われる。
  • 農業従事者減少により農林地での地域管理が困難化してきている。しかし定量的な将来予測ができていないため、地域管理に必要な対策技術の導入や開発を進めるための地元の合意が得られない。問題を事前に予測することができれば、対策コストは安価で済むと期待される。地域の持続可能性を考える際にも、現状の地域の状態を「診断」しそれに基づき「処方」を進めるようなアプローチが重要。

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