2014年1月
(ワークショップ報告書)科学技術未来戦略ワークショップ「共通利用可能な分野横断リスク関連知識プラットフォームと利用体制」/CRDS-FY2013-WR-10
エグゼクティブサマリー

科学技術振興機構(JST)/ 研究開発戦略センター(CRDS)は、JST の研究開発戦略を立案するとともに、我が国の研究開発の推進に資する基礎データおよび知見の収集とそれに基づく戦略的研究分野の提言を行っている。平成24年度に「社会的潜在リスクの発見」について事前調査を行った中で、検討すべき研究分野として「リスクの相互関係の構造化」が取り上げられ、リスクの構造化チームが発足した。
リスクの概念は一般に、生起する事象の確からしさと、それによって引き起こされる負の結果の組み合わせで定義されるが、社会経済システムに大きな影響を与える「システミック・リスク」は、認知バイアスのために「確からしさ」の正確な測定と「負の結果」に対する公平な評価が困難である。「システミック・リスク」を単独の原理原則で見通すことは不可能であり、分野をまたがる複雑な因果関係を考慮した対策が必要となる。その一方、現状は、環境・医療・金融・IT などさまざまな分野において研究の蓄積があるが、分野ごとに主要概念の意味の違いが存在し、分野横断的な、概念の翻訳やデータ・知識の互換性を保証するシステムは存在しない。
リスクの全体像を効率的かつ的確に把握し、リスクと総体的に向き合う対策を確立するためには、様々なリスクを分野横断的な共通フォーマット、共通モデル、共通言語で俯瞰、議論できるような、「分野横断リスク関連知識プラットフォーム」の構築が必須である。そして、このプラットフォーム上で、リスク概念を管理し、システミック・リスクに関するシナリオ分析を可能とする運用組織の構築が望まれる。リスクマネジメント関連の研究・報告は世界各国の研究機関や国連の機関などで実施されている。また、リスクマネジメントを主導し、その関連情報を国民に提供する国家組織をもつ国々も多い。しかし、このようなプラットフォーム構築に関する研究開発プロジェクトは存在しない。
リスク構造化チームでは、以上の検討結果に基づいて、平成 25 年 7 月 25 日(木)に「共通利用可能な分野横断リスク関連知識プラットフォームと利用体制」ワークショップを開催し、有識者の意見を伺うこととした。本ワークショップでは、当該研究分野の立ち上げについて、これまでの研究の紹介と考えられる研究課題の検討を行った。また、各専門分野のリスク研究の紹介を目的に金融分野、品質管理分野、環境分野の専門家による講演と、プラットフォーム構築の理論的・方法論的根拠の紹介を目的に、レジリエンス、知識共有の専門家による講演を行った。これは、リスク関連知識の意義を各専門分野から俯瞰するための議論と、それらの知識を分野横断的に纏めるための議論の両方をカバーする目的であった。さらに、縦横2つの軸に関する議論を深めるために、システム科学分野に造詣の深い専門家をコメンテータとして招待した。

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