2013年8月
(ワークショップ報告書)データを活用した設計型物質・材料研究(マテリアルズ・インフォマティクス)ワークショップ報告書/CRDS-FY2013-WR-03
エグゼクティブサマリー

現在、我が国の素材・材料分野は、産業の発展に大きく貢献しており、国際的にも優位な位置を堅持している。材料開発にはこれまで経験と勘に裏打ちされた実験的手法が大きく貢献してきたが、新物質の発見から材料としての実用化まで非常に長い時間と費用を要しているのも事実である。今後もグローバルレベルで産業競争力を発揮し続けるためには科学技術を総動員して材料開発に要する時間と費用を短縮すると同時に社会的課題に応える材料を開発することが望まれる。
このような観点から、世界の研究者の関心は、所与の機能を持つ材料を理論的に探索・設計した上で合成・評価するという方向に注目が集まりつつあるが、その方法論は確立していない。一方で、ある物質が優れた特性を持つことがわかっても、その構造と物性の相関、物性を支配する原理(パラメータや関数)が不明なものも多く、これを解明する科学にチャレンジすることには大変意義がある。
このような問題を解決するためには、従来の理論・計算、物質創成、計測・解析という3 本柱の取組みに加えてインフォマティクス(データのマネジメント)の活用に真剣に取り組むことが重要ではないかと考えられる。すなわち、計測機器や計算機の進展にともない、短時間に詳細なデータが大量に得られるようになったものの、そこから意味のある情報を抽出する方法論は未だ確立されておらず、大量のデータを統合的に活用する枠組み、使用目的に合わせた材料開発に活かす枠組みを構築することが望まれる。大量のデータをマネジメント(蓄積・共有・循環)し、インフォマティクスを活用することで、高効率な材料探索等が可能となる。さらに、大量データから導き出される物理的・化学的法則の発見という基礎科学的な可能性も期待され、データ作成・蓄積・活用における物質科学者による挑戦に期待が寄せられている。
これらの課題に挑戦する際には、専門性の深化に伴う異分野研究者間のコミュニケーション不足をどう解消し、基礎サイドと応用サイドの認識のギャップをどう補っていくかが肝要となる。
従って、JST 研究開発戦略センター(CRDS)のワークショップにおいては、(1)データを活用した設計型物質・材料研究(マテリアルインフォマティクス)に関連する各分野の第一線で活躍されている皆様の意見交換の場、かつ異分野研究者間の相互理解を深める場、(2)今後のマテリアルインフォマティクスにおける研究開発の推進方策を探る場、そして、(3)そのために実験・計測科学者、計算科学者が今後なすべきこと、あるいは成し得ること等について産業界の有識者も参加して考える場、を提供するものとした。具体的には、2 月11 日と6 月1 日の2 回にわたって開催し、1 回目は、物質と材料の両者について実験と計算科学者に登壇いただくとともに、データ科学の現状、企業の現状などについて話題提供頂いた。2 回目は、主にデータ基盤(データベース)の話を話題提供いただいた。本報告書はこれら2 回のワークショップの内容を取りまとめたものである。

PDFダウンロード

関連報告書