2011年3月
(ワークショップ報告書)「2010年ライフサイエンス分野俯瞰ワークショップ」報告書/CRDS-FY2010-WR-10
エグゼクティブサマリー

 国が政策として推進する研究領域の選択には、研究者コミュニティを含む社会全体に対して説明責任が求められる。それは、誰にも分かりやすい必要があり、この意味で俯瞰という全体像の説明からの選択手法は有効な一方法である。俯瞰を用いた絞り込みは、研究分野の全体像や現在の社会ニーズを隈無く見渡し、研究の歴史性、現在活発な研究領域、研究助成の消長、国ごとの重点領域の異同、などの比較検討からの重点領域が選定される。このプロセスは透明性が高く、社会からの理解も得られやすい。
 CRDS ライフサイエンスユニットでは上記のような観点から、平成 15 年度より、これまで 4 回の俯瞰ワークショップを開催している。平成 22 年度に開催した第 5 回のワークショップでは、研究成果の社会実装をこれまで以上に意識し、研究分野の俯瞰と社会ニーズの詳細な把握から、今後国として重点化すべき重要領域の選定を試みた。
 最終的に選定された重要領域は以下の通りである。1.物理、化学、工学等との融合研究によるヒトの「心」の解明:社会関係性にもとづく行動メカニズムの理解と活用、2.医療・健康産業を推進する基盤研究及び次世代治療技術、創薬の開発、3.幹細胞機能の制御技術の創出、4.ヒト免疫機能の個体差、地域差、その拡大を考慮した感染制御、5.疾患の個性と個体の特性とを踏まえた複合的な個体差研究、6.細胞社会構築の統合的解明による疾患制御、7.臓器レベルでの障害メカニズム解明への統合的アプローチ、8.次世代技術の活用による「ネオケミカルバイオ」の推進、9.光合成生物の生理機能と統合制御、10.生物多様性の理解と活用に関する基盤技術の創出、11.グリーン・バイオ分野におけるトランスレーショナル・リサーチの推進以上に示した 11 の研究領域は、「生物個体の統御システムの機構解明」という基礎研究の潮流と持続社会の形成(健康持続および環境持続)といった社会ニーズとの邂逅(接合)を念頭に置き、テーマの新規性、研究コミュニティのポテンシャル、国際競争力等を考慮し抽出された。CRDS では、これらの領域を中心に、今後、推進すべき課題解決型研究として、あるいは目標達成型研究としての妥当性について、ライフサイエンス以外の分野からの意見も踏まえ継続して検討を行っていく。また、他の施策との関係性等を明らかにした上で、具体的な研究開発領域の提案(プロポーザル)作成に繋がるテーマについては、各種手続き等を経て文部科学省等、関連府省に対して発信される。

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