2010年3月
(ワークショップ報告書)医療の俯瞰報告書~認知症(特にアルツハイマー型認知症)について~/CRDS-FY2009-WR-09
エグゼクティブサマリー

 わが国は超高齢社会を迎え、高齢者の健康をどう守るかが大きな課題となりつつある。独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター 臨床医学ユニットは2007(平成19)年以降「医療の俯瞰」を進めてきたが、こうした超高齢社会に対応するため、いくつかの疾患を取り上げ俯瞰的な調査を行い、研究開発戦略の提言を行ってきている。今回は高齢社会において増加しつつあり、かつ本人のみでなく家族や社会にとっても大きな負担となる認知症についての調査結果を報告し、今後推進すべき研究開発の方向を提言する。
 これまでの調査結果から、今後推進すべき研究課題はアルツハイマー型認知症の遺伝素因と発症にかかわる因子を解明し、正確な発症前診断法を確立することである。すなわちprecise medicine(精密医療)の確立を目指した研究の展開が必要となる。さらに脳病変の改善を目指した治療法を確立し、発症前の症例に対して介入治療を行うpreemptive medicine(先制医療)が必要となる。こうした目標を達成するためなすべき研究課題は多いが、代表的なものは、(1)疫学的なデータの収集、(2)遺伝素因、すなわちゲノム、エピゲノム研究に基づく発症機構の研究、(3)発症前診断を可能にするバイオマーカー、画像診断法の確立、(4)脳病変を改善する治療法の開発と効率的な臨床研究、Integrative Celerity Research(統合的迅速臨床研究)3の実施、(5)研究支援センターの設置と診断・治療法の普及、などである。
 この調査を通して明らかにされたことは、高齢者が人間としての尊厳を維持しながら人生の終焉を迎えるためには、認知症への対策は国家として極めて重要な課題であること、またそれは将来の医学である「未病の医療」ともいうべきpreemptive medicineを実現する格好の課題であるということである。

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