2009年2月
(ワークショップ報告書)科学技術の未来を展望する戦略ワークショップ 「先制医療基盤を創出する炎症研究」報告書/CRDS-FY2008-WR-11
エグゼクティブサマリー

 JST-CRDSは、重要研究領域「先制医療基盤を創出する炎症研究(Pre-emptiveMedicines Developed by Infl ammation Research)」を、「様々な疾患や組織修復の初期像であり、慢性化によって組織機能不全を起す炎症に着眼して、急性から慢性への進行と、組織を超えて及ぼす生理作用の機構を解明する基礎研究を推進し、病態の進行に先駆けて医療的処置を行い、悪化を抑制する、先制医療の基盤技術を創出する研究開発」と定義した。この研究の推進により、炎症に起因する各種慢性疾患に対する医療基盤が創出されるものと考え、研究開発戦略の策定に着手した。
 本報告書は、「先制医療基盤を創出する炎症研究」の研究開発戦略の策定に資するために平成20年9月に開催された「科学技術の未来を展望する戦略ワークショップ」の内容をとりまとめたものである。ワークショップにおいて「先制医療基盤を創出する炎症研究」の定義、炎症研究の推進でもたらされる科学的、社会的意義を本ワークショップで議論した結果、炎症研究は高齢化社会を迎える我が国において必要とされる医療の基盤を形成する上で重要であり、喫緊に推進すべき課題であることが確認された。一方で、その推進においては研究課題の構造、推進方法などの課題点も明らかになった。
 即ち、高齢化の進行に伴い、即、死に至る疾患から長期間患う疾患へ医療ニーズが展開しつつある状況を鑑み、先制医療を形成していく重要性が確かめられた。一方、昨今の医学研究において、慢性炎症は多くの疾患の病因と認識されるようになり、神経・筋疾患、消化器疾患、精神疾患、代謝性疾患、骨・軟骨疾患、循環器疾患、感覚器疾患、自己免疫疾患、がんなど、高齢化と密接に関連する疾患群との関連が認められつつあることも分かった。炎症に着眼した研究の推進において、炎症が契機となっている疾患は、一般に、炎症が消散せず、慢性化を経て、最終的に疾患発症まで至るには長期的な経過をたどる事実は重要である。その上で、研究開発を進める上で現状では炎症の急性と慢性の分岐点の評価技術が未成熟である点に留意すべきと考えられた。また、炎症の研究は、一部で免疫研究を含むが、組織修復や恒常性維持も含まれる学際的研究であり、新しい科学を創出する意義も理解された。一方で、炎症研究施策の設計に際しては、国際的に創薬が難しい状況下、炎症研究から基盤技術を創出する研究課題の構造が重要であることも認識された。同時に、炎症研究という新しい分野への研究コミュニティーの誘導、ないし、担い手となる研究者層の充実が我が国の課題であると考えられた。
 これらの結果をふまえて、今後、JST-CRDSは、“炎症の慢性化”を主軸に、国外調査等をへて、炎症、また炎症慢性化の定義の検討も含めて、戦略プログラム「炎症の慢性化機構の解明と制御」として研究課題の項目とそれらの構造、そして推進方法を検討していく。

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