2008年10月
(ワークショップ報告書)戦略ワークショップ 科学技術の未来を展望する戦略ワークショップ「生命現象の定量的計測・解析のための基礎技術創出と、それに基づく細胞及び細胞集団の機能、構築機構の解明」報告書/CRDS-FY2008-WR-04
エグゼクティブサマリー

「生命現象の定量的計測・解析のための基礎技術創出と、それに基づく細胞及び細胞集団の機能、構築機構の解明」は、生命現象を種々の階層で定量的に測定、表現することにより、新しい原理、法則性を発見することを目標とする研究開発領域である。例えば、受精卵からの胚発生において細胞や細胞集団が移動しながら形を作るような複雑な生命現象を経時的な画像情報として記録する一方で、超高解像のイメージング技術などを用いて細胞内の生体分子の挙動を計測し、これらの総合的な解析から未知の生物法則を導き出す研究が対象となる。これまでの生命科学研究では固定された細胞や組織の切片を電子顕微鏡や光学顕微鏡で観察し、研究者の深い洞察により現象を理解する手法が重要であった。これからも観察の重要性は変わらないが、多くの生物のゲノムが明らかとなったことを背景に、生命現象に関わる遺伝子やタンパク質などを定量的に計測・解析し、その観測結果から数理科学的に表される新しい原理や法則性を導き出す研究の重要性が高まってきている。本研究開発領域では、様々な生命現象の複雑な過程を機械計測し、従来の方法では検出することが困難な事象を検知、解析する技術、装置の開発などの基礎技術の創出も目標となる。
これらの技術は、例えば、再生医療の基礎をなす幹細胞の分化制御やがん臨床の重要な課題であるがん細胞の転移の原因解明などの生物・医学研究にも利用されるものである。また、医師の技能に依存する度合いの高い病理・病態診断を標準的な診断装置に置き換えるなどの、いわゆる医療の工学化における重要な技術基盤ともなるものである。このような研究開発を推進することにより、未知の生物法則の発見が期待され、また、これまで定性的であった生命科学研究をフィジカルサイエンスへと転換することが期待される。さらに、生命科学と物理・化学領域、数理科学領域の融合も進む。
この研究開発領域は研究開発戦略センターが平成 18 年 8 月に実施したライフサイエンス分野の俯瞰ワークショップによって、その重要性が見出された。その後、当該研究開発領域の最先端の研究者が参加する平成 20 年 3 月開催の戦略ワークショップ「生命現象の定量的計測・解析のための基礎技術創出と、それに基づく細胞及び細胞集団の機能、構築機構の解明」において、研究に投資する意義、具体的な研究課題、どのような研究推進方策をとるべきか、などが検討された。
本報告書は上記の戦略ワークショップの検討結果を取りまとめたものである。研究開発戦略センターでは本報告書の内容をもとに海外の研究開発状況との比較を行って、重点的に推進すべき研究開発領域・課題を検討し、その成果を戦略プロポーザルに取りまとめる予定である。

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