2007年12月
(ワークショップ報告書)「心の豊かさ」とは-「心の豊かさ」の実現を支援する新産業・技術の創出-/CRDS-FY2007-WR-09
エグゼクティブサマリー

 成熟経済社会において「心の豊かさ」というニーズを充足できる新産業・技術の創出のために、「心の豊かさ」の概念を個人の要求が見えるレベルまで展開し、「心の豊かさ」の基本要素と、それらに対応する産業・製品・サービスを描写した結果について、関連する基礎科学・基盤技術を報告する。
 本報告内容は、分野融合フォーラム「豊かな文化・生活を実現するイノベーション-成熟社会の新産業創出のための人間の機能・感性の研究-」における議論を中心に、有識者のご意見に基づき当センターで検討してまとめたものである。 物質的豊かさがある程度実現された現代の成熟経済社会においては、人々は「心の豊かさ」を強く求めている。このような社会ニーズに対応した製品・サービスを提供できる新産業の創出が期待される。
 成熟経済社会における新産業の創出と、「心の豊かさ」の概念をリンクさせるためには、その概念に応じた産業・製品・サービスを具体的に示す必要がある。そのためには「心の豊かさ」の概念を、個人の行動・活動が見える領域まで可視化しなくてはならない。このような視点で「心の豊かさ」の概念を展開し、以下の基本7要素を抽出した。
 (1)「自己向上・増強(学習)」、(2)「自己理解・受容」、(3)「安穏的感性(休息、快適、美的感覚)の獲得」、(4)「高揚的感性(興奮、感動、達成感)の獲得」、(5)「自己表出・評価獲得」、(6)「協働(共通目的の達成)」、(7)「共感・共鳴(協力)」。 基本7 要素の主な実現手段は、コミュニケーションツール、「感性もの、コンテンツ、感性空間」および学習ツールである。このような実現手段が使用される空間の広がりと、それを形成する人間の集団規模に基づき、ミクロスコピック、メゾスコピックおよびマクロスコピックの3 領域を設定した。ミクロスコピック領域は自己と親近者(1 人から数人程度)、メゾスコピック領域は一定の共通項で結ばれたコミュニティ(数人から百人程度)、マクロスコピック領域は不特定多数の人々で形成されるものである。
 「心の豊かさ」の実現手段に関連する基礎科学・基盤技術は、工学(現実感・没入感提示装置、五感情報センシング、マルチモーダル情報技術、ロボティクス、人間行動のシミュレーションなど)と人間学(好悪・情動の科学、記憶・履歴の科学、個性・多様性の科学、コミュニケーションの科学、プライバシーの科学)である。 本報告書では、「心の豊かさ」の基本7 要素ごとに、実現手法、アプリケーション・コンセプトおよび産業・製品・サービスの事例、また、基本7 要素すべてにまたがる実現手段であるコミュニケーションツールのコンセプトおよびコミュニケーションツールの事例を示した。
 「心の豊かさ」の実現を支援する新産業の創出のために、上記の事例を現実のものにできるよう、感性の科学的解明に基づく「心の豊かさ」の実現を支援するコミュニケーションツールの研究開発が求められる。そのために、人間学と工学における双方向の基礎科学・基盤技術のさらなる確立と、それと並行して社会へのアプリケーションを実証・実験できるプラットフォームの設置を提言する。

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