2007年11月
(ワークショップ報告書)「階層的自己組織化のバイオナノテク」-出口から見た新機能創製への諸課題- 報告書/CRDS-FY2007-WR-08
エグゼクティブサマリー

●ボトムアップのナノテクノロジー技術、つまり原子・分子から出発して材料やデバイスを逐次積み上げていくことを想定した場合、「自己組織化」はスループット(全プロセス時間)の視点からは欠かすことのできない概念である。一方、生体は分子→蛋白質→細胞→組織→個体へと自律的かつ階層的に構造形成が進む点で、「階層的自己組織化」の典型である。このプロセスの理解と応用がナノテクノロジーにおけるボトムアップアプローチの究極の目的である。
● 2000 年以降、世界各国でナノテクノロジー国家プロジェクトが立ち上がり、また同時にバイオナノテクノロジーへの投資も急増する中で、必然的にナノとバイオの融合研究がかなり進み、自己組織化についても多様な成果が公表されている。生体内における階層的自己組織化の学術的な理解ばかりでなく、新しい材料として、デンドリマー、有機ナノチューブなど新しいナノ空間をデザインした超分子材料、CNT(カーボンナノチューブ)ゲル、スライドリングゲル、フォトニックゲルなどの機能性ゲル、またバイオとナノの融合としてもフェリチン(蛋白質)を使った半導体微細加工プロセスへの自己組織化の応用がJST のCREST を中心として発表され、海外ではDNA 折り紙や次世代半導体集積回路用の低誘電率材料の作製が話題になった。しかしながらナノテクノロジーとしてその成果を総体的に見ると、応用への展開は未熟と言わざるを得ない。個々の要素技術に進展はみられるものの、技術のマスとしては社会への出口までまだ大きな距離が残されている。
●技術の成熟にはまだ時間がかかる。しかしイノベーション創出への期待に応えるためには、今後は、技術課題を根元的な基礎的課題とより出口を意識した研究開発課題とに峻別し、メリハリの効いた研究投資が実施されるべきである。自己集合の階層的発展の理論、非平衡開放系における時間・空間上の散逸構造の解明、平衡論と速度論の使い分け、ゆらぎの効果などサイエンスを巻きこんだ基本課題についても、出口からの位置付けが必須である。
●将来のロボットや分子機械、刺激応答のDDS(薬物送達システム)への利用など広い応用分野が開けているが、牽引力のある出口としては、エネルギー・資源・環境分野への応用が期待される。例えば、「エネルギーや物質の発生・搬送・貯蔵・放出を高度に制御し得るナノ空間技術・プロセスを階層的自己組織化により実現し、具体的応用を志向する概念実証プログラム」である。開発目標を明確にし、克服すべき共通の技術課題と優先度を決めることが重要である。またこのプログラムは、製造技術における人、土地、エネルギーの利用を最小限にする「ミニマルマニファクチャリング」の考え方と軌を一にするものである。
●そのためのプロジェクト実施体制として研究開発リーダーのみならず、出口ニーズに詳しい企業経験者の実質的な参加が肝要である。さらに概念実証に成功した技術をどう社会ニーズに結びつけるか、あるいは社会ニーズを充足する新概念・新材料をどう政策的に誘導するかなど、具体的な仕組み作りが喫緊に必要である。
●自己組織化(自己集合、散逸構造)の究極の姿はプログラム化されたシナリオに沿って、最終構造が自律的に形成されるところにあり、その意味では「材料設計」の典型の1 つであり、当研究開発戦略センターのナノテク戦略構成分野における「新材料設計・探索」の考え方に沿って攻略されるべき課題と考えられる。

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